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第17話:空から落ちた少年


【吉田視点】


強く目を閉じる。

衝撃を待つ。

風が顔を叩く。

落下。

空虚に呑み込まれていく。


……怖くない。

恐怖は、落ちる前に消えていた。


残っているのは――

疲労。

身体よりも古い、深い疲れ。


(もう……いい)


辿り着いた答えは一つ。

逃げ場は――

死。


もう、生きたくない。

失った後では。


兄貴――リュウジン。

この世界で、唯一の支え。


思考が沈んでいく、その時――

何かに包まれた。


目を開く。

……ローズ。


強く抱きしめられていた。

一緒に落ちている。

風に髪が乱れ、瞳には――

恐怖と、決意。


「吉田!」


叫びが、空を裂く。

頭が真っ白になる。


「何をしているんだ!?」


思わず叫ぶ。

さらに強く、しがみつかれる。

背中に食い込む指。


まるで――

引き裂かれるのを拒むみたいに。


耳元で、囁く。


不思議なほど、静かに。


「落ちるのなら……一人ではありません」


……わけがわからない。

どうして、こんなことを。

巻き込むつもりなんて、なかったのに。


くそ……


視線を上げる。

太陽。


……おかしい。

光が、異様に強い。

まるで、生きているみたいに。


「全部……あたしのせい……」


ローズは告げた。


「関わらなければ……リュウジン先生も……」


光が広がる。

一気に。

視界を埋め尽くす。


――まぶしい。


何も見えない。

世界が、消える。

風も。

落下も。

空も。


一瞬。

すべてが止まった。


――無音。

闇。

完全な、空白。


身体が浮く。

重さがない。

風もない。

落下している感覚もない。


……おかしい。

気づく。

感じない。

いつもあったものが――

何も。


車椅子も。

不自由な身体も。

縛りも。


「……ここ、は……」


声を出す。


だが――

響かない。


(……死んだのか?)


その瞬間――


弾き出された。


自然な落下じゃない。

押し出される。

強制的に。

別の場所へ。


ドサッ――!


衝撃が全身を貫く。

声が漏れる。

熱。

圧力。

重さ。


戻ってくる。

ローズは、まだ離れない。


目を開く。

……落ちている。


でも――

違う。

街がない。

ビルも。

学校も。

アスファルトも。

ない。


あるのは――

砂。

果てしない砂。

金色の海のように、広がっている。


その先。

遠く。

影。

都市。

見知らぬ街。


さらに向こう――

海。


空は――

赤。

夕焼けじゃない。

裂けた傷のように、光を流している。


……なんだよ、これ。

見たことがない。


ここは――

日本じゃない。


「ローズ! おい、ローズ!」


呼ぶ。

反応がない。

ぐったりと、寄りかかっている。

力が抜けている。


まるで――

終わりを受け入れたみたいに。


落下する。

一直線に。

風が叩きつける。

地面が迫る。


どんどん。

近い。

避けられない。


その瞬間――

初めて。

思った。


……死にたくない。


強く、目を閉じる。


そして――

すべてが、黒に沈んだ。



投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。残念ながら、大学の課題に追われていて時間が取れませんでした。

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