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『二つの世界、一人の魔王』~東京2080からエヴァの大地へ~  作者: 黒猫
第十章:魔神帝国の統治
111/112

第111話:覚醒

第1話から最新話までの内容をしっかり見直して、誤字脱字や細かいミスを綺麗に修正しようと真剣に考えています……! ちゃんと直しますね(日本人ではないので許してくださいwwww)。


「だが、何が起きたんだ?」


デイランドの問いが、広間に響いた。


彼の隣で、ケンもまた、今起きたばかりの出来事を理解できていなかった。


わずか数瞬前まで、誰もが吉田の死を確信していた。倒れゆく彼を目撃し、ローズはその指先から消えゆく脈を感じ取り、そして数時間にわたり、怒りと悲しみに満ちた都市で戦い抜いてきたのだ。


だが今、彼はここにいる。


生きている。


ただし、何かがおかしい。違和感が空気を凍らせていた。


デルガドと共にこの場所へ同行していたエリカ中尉は、玉座に埋め込まれた奇妙な宝石を破壊した後、集団から離れていた。


彼女の表情が変わっていたのだ。


吉田が数週間前に見つけた、あの病弱で内気な少女の面影はない。そこには、以前には存在しなかった決意が宿っていた。


一方、ローズはまだ吉田に抱きついたままだった。周囲の視線に気づいてようやく、彼女の頬がうっすらと赤らむ。


「あ、その……」


ローズは慌てて彼から離れた。


「ごめんなさい」


抱擁に加わっていたシェイリーとエレノアも、ほぼ同時に身を引く。


数秒間、誰も口を開かなかった。


吉田はきょろきょろと周囲を見回し、困惑する。


「なんで、みんなそんな顔で俺を見てるんだ?」


その時、異変が起きた。


脚が、動かない。


「……え?」


吉田の体から力が抜けていく。


「吉田!」


ローズが即座に反応し、彼を支えようとする。


しかし、直立を保つことはできなかった。吉田はそのままローズの腕の中に崩れ落ちる。


「陛下!」


ローズは彼の体を抱きかかえる。


「どうしたの!?」


吉田は脚を動かそうとする。反応なし。腕を上げようとするが、それすらままならない。彼の表情が険しくなる。


「悪い、ローズ……」


彼は唾を呑み込んだ。


「動けないんだ」


ローズの体が凍りついた。


嘘でしょう、と彼女は目を丸くした。数々の出来事を経て、あの悪夢が再び彼女を襲おうとしている。吉田は生還した。だが今度は、動くことすらできないというのか。


エレノアが素早く歩み寄る。


「ねえ、赤毛はどこ? あいつなら何か知ってるはずでしょ」


彼女は入口の方を見回した。


誰も答えなかった。


ケンはエリカを見つめ、シェイリーも同様だ。ローズも顔を上げる。


若き士官は数メートル離れた場所に立っていた。その顔は真剣そのものだ。


「エリカ……」


エレノアが眉をひそめる。


少女は深く息を吐き、歩み寄った。


「陛下……」


吉田が顔を上げる。


「デルガドはどこだ?」


エリカは数秒間沈黙し、言葉を発する勇気が出せずにいた。やがて、彼女は頭を垂れる。


「デルガド殿下は……亡くなりました」


広間が完全に凍りついた。


「……何?」


吉田が絞り出すように問う。


ローズは彼をより強く抱きしめた。


「何て言ったの?」


エリカは唇を噛み締める。


「デルガド殿下は、お亡くなりになりました」


その言葉は、耐え難い重みを持って全員にのしかかった。ケンはわずかに目を見開き、シェイリーは胸に手を当て、エレノアは笑みを消し、そしてデイランドは何も理解できぬまま眉をしかめた。


吉田には、その現実がすぐには信じられなかった。


「デルガドが……死んだだと?」


「ええ、陛下」


エリカは声を震わせながら頷いた。


「お命を犠牲にして、陛下を生き返らせる儀式を執り行われたのです」


数秒間、その場にはただ人々の呼吸音だけが響いていた。


エリカは続ける。


「ですが、どうかご心配なく、陛下」


吉田はゆっくりと頭を上げる。


「心配するなだと?」


「その麻痺は、儀式の副作用に過ぎません」


ローズが目を丸くする。


「副作用?」


「ええ」


エリカは吉田の前に膝をつく。


「お体はまだ完全には回復されていません。儀式は陛下を生き返らせるために莫大なエネルギーを消費しました……そして、魂がまだ安定していないのです」


吉田は眉をひそめた。


「そして、俺はまた歩けるようになるのか?」


「はい」


答えは即座に返ってきた。ローズは安堵のため息を漏らす。


「どうやって?」


ローズが尋ねる。


「特別な薬草と、神聖な癒やしの魔法が必要です」


「どんな薬草だ?」


エリカは彼女に顔を向ける。


「それは、ベイカー家の領地に自生しています」


ローズは口に手を当てた。吉田の麻痺を知ってから初めて、彼女の表情がわずかに緩んだ。


「青のラベンダー……」


ローズが囁く。


「ええ」


エリカは頷く。


「これほどの規模の儀式の後、体を安定化させることができる唯一の植物です」


吉田はゆっくりと呼吸を整えた。


「なら、それを手に入れるだけだ」


エリカは首を横に振る。


「それだけでは不十分です」


全員が再び彼女に視線を向ける。


「薬草は体を修復できますが、陛下の魂を完全に修復するための呪文を唱えられるのは、セレーヌ様お一人だけです」


エレノアとケンは顔を見合わせ、シェイリーは眉をひそめ、ローズは思案に沈む。


「彼女は誰なんだ?」


吉田が問う。


エリカは神妙な面持ちで答えた。


「軍神の妃です」


広間に再び静寂が訪れる。吉田は頭の中で情報を整理しようとしていた。


「……」


エレノアは腕を組み、ケンを見た。


「まあ……それは重要そうな話ね」


ケンはゆっくりと頷く。


「間違いなく」


その後数分、彼らは可能性について議論を始めた。ワーウィック、ミルバー、ベイカー家、セレーヌ、軍神。すべては二つの目的地へと繋がっていくようだった。


やがて、ローズが立ち上がる。


「決まったわ」


全員が彼女を見る。


「まずワーウィックへ行き、薬草を入手する」


彼女の瞳が鋭さを増す。


「その後、ミルバーへ向かう」


吉田はゆっくりと頷いた。


「賛成だ」


離れて立っていたデイランドが、手を上げて口を出す。


「よし、なら俺はこれで十分だろ」


彼は自分自身を指差した。


「俺の出る幕じゃないし、そろそろ失礼するぜ、狂人ども。面白かったよ」


「そうはいかないわ」


エリカの声が彼を止めた。


デイランドが凍りつく。ゆっくりと振り返る。


「は?」


エリカは彼が担ぐ盾を指差した。


「一つ確認させていただけますか。お持ちのそれは……『太陽の盾』では?」


デイランドは盾をわずかに持ち上げた。


「ああ、そうだよ」


「なら、あなたも『聖者』ね」


エリカは頷く。


デイランドは眉をひそめた。


「だから何?」


「あなたにも関係のある話よ」


「知ったこっちゃねえよ」


デイランドはいつも以上に深刻な面持ちで答えた。


「俺はすでに大騒ぎを起こした。その代償も払った。これ以上、糞ったれの悪魔どもに関わり合いにはなりてえもんか」


ケンは彼を横目で見やったが、エリカは退かない。


「魔王を襲った者は、あなただけを追っているのではありません。『聖者』をも狙っているのです」


空気が一変した。ローズが顔を上げ、ケンは顎を締め、シェイリーは弓を強く握りしめ、デイランドはその軽薄な表情を失った。


その時、エレノアが両腕を突き上げて叫んだ。


「イエーイ!」


全員が彼女を見る。


「何よ」


エレノアは胸に手を当てて笑った。


「ってことは、私までは追われてないってことでしょ! あはは! ラッキー!」


ケンは完全な軽蔑の眼差しで彼女を見た。


「お前は本当にすごいな」


「何よ?」


エレノアは気まずそうに笑う。


「久しぶりに、問題の主人公が私じゃないことを祝ってるだけよ」


誰も答えなかった。


吉田はローズに支えられながら、腰を下ろしたままだった。デルガドの死は、依然として彼に重くのしかかっていた。


「エリカ」


若き士官が歩み寄る。


「はい、陛下」


「デルガドに、いったい何が起きたんだ?」


エリカは頭を垂れ、彼の前で跪いた。


「殿下は、すべてのマナを使い果たされました」


吉田は唇を噛む。


「すべてを、だと?」


「ええ」


エリカは深く息を吸った。


「殿下はご自身の全マナを一滴残らず捧げられました。命そのものを燃料にして、陛下の魂をこの世に引き戻されたのです」


吉田は目を閉じた。


デルガド。治世の最初から彼の傍らにいた男。軍を組織し、彼の考えに耳を傾け、すべての苦悩を支えてくれた男が……彼のために命を投げ出したというのか。


吉田は悔しさと悲しみで唇を噛みちぎりそうになり、そしてデイランドへ視線を投げた。


「お前……」


デイランドが身を硬直させる。


「何だ」


吉田は怒りに満ちた眼差しで彼を見た。


「お前が……」


「あいつには関係ない」


ケンの声が割って入り、一歩前に出る。


「デイランドはデルガドを狙っていただけだ。そして偶然、お前と遭遇した。そうだろう?」


デイランドは数秒間黙っていた。やがて、彼はため息をつき、視線を落とす。


「ああ……俺はただ、デルガドに復讐したかっただけだ」


彼は盾を握りしめた。


「だが、お前が現れた。魔王そのものがな。復讐のチャンスだと思った。だがその時……あの声が聞こえたんだ。くそっ……全部、複雑すぎんだよ」


吉田は黙っていた。やがて、彼は顔を伏せる。


「なら、俺を殺すつもりはなかったのか」


「知らねえよ」


デイランドは首を振った。


「わかった」


吉田はそれ以上何も言わなかった。


ローズに支えられ、吉田は玉座へと戻った。若き魔王は苦労しながら腰を下ろす。


エリカは、完全に真剣な表情で彼の前に立っていた。


「陛下」


「何だ?」


「亡くなられる前、デルガド殿下より、私が厳守せねばならぬ指令を預かっております」


吉田が視線を上げる。


「指令?」


エリカは跪いた。


「私が殿下の片腕として、その座を引き継ぐこと」


吉田は黙り、数秒間エリカを見つめた。


「お前も、見たのか」


エリカが顔を起こす。


「ええ、陛下」


周囲の者たちが顔を見合わせる。二人が何を話しているのか、誰にも理解できなかった。


「何を見たの?」


ローズが眉をひそめる。


吉田は答えなかった。ただエリカだけを見つめている。


「デルガドは、俺に何かを隠していた。彼が俺のために働く動機となっていた何かを」


「ええ」


エリカは頷く。


「そして、お前は中身を知っている」


「はい、陛下」


吉田は数秒間彼女を観察し、やがてため息をついた。


「なら、俺は反対しない」


エリカは目を閉じ、胸の前で手を合わせた。そしてゆっくりとそれを離す。


奇妙な赤いエネルギーが、彼女の掌の間に集まり始めた。広間の空気が振動する。


「何……?」


ローズが目を見開く。


エネルギーは増大し、より濃密で強烈なものとなり、やがて彼女の手の中で輪郭を形成し始めた。まず巨大な刃が、次に柄が、そして最後に——


空間を裂くような鋭い金属音とともに、実体を成した。


完成したのは、巨大な赤い鎌だった。エリカはそれを片手で軽々と掴む。刃は広間の光を浴びて、血のように赤く輝いた。


デイランドは眉を上げた。


「へえ……」


ケンは注意深くその武器を観察し、シェイリーは何も語らなかった。


エレノアは笑みを浮かべる。


「それはさすがに予想外だわ」


エリカは鎌を下ろし、玉座の前で跪いた。


「お誓いします、陛下。私はあなたをお裏切りません……殿下のことも」


吉田は数秒間彼女を見つめ、やがて頷いた。


「よし」


彼の表情は決意に満ちていた。


「なら、決定だ」


ローズが彼の隣に立ち、ケンが槍を構え、シェイリーが弓を取り、エレノアが拳銃を回し、デイランドは諦め顔でため息をつき、そしてエリカは新たな鎌をしっかりと握りしめた。


吉田は広間の巨大な扉の方角を見た。


「まずワーウィック王国へ行く。そしてその後は……ミルバー共和国だ」


一同は静まり返った。


彼らの前に広がる道は、今まさに変わった。もはやそれは、吉田の歩行能力を取り戻すだけの問題ではない。デルガドの死の裏にある真実を暴き、セレーヌを見つけ、青のラベンダーを入手しなければならない。


そして、いつか——アクセルを見つけるために。


探索は、今始まったばかりだ。

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