第111話:覚醒
第1話から最新話までの内容をしっかり見直して、誤字脱字や細かいミスを綺麗に修正しようと真剣に考えています……! ちゃんと直しますね(日本人ではないので許してくださいwwww)。
「だが、何が起きたんだ?」
デイランドの問いが、広間に響いた。
彼の隣で、ケンもまた、今起きたばかりの出来事を理解できていなかった。
わずか数瞬前まで、誰もが吉田の死を確信していた。倒れゆく彼を目撃し、ローズはその指先から消えゆく脈を感じ取り、そして数時間にわたり、怒りと悲しみに満ちた都市で戦い抜いてきたのだ。
だが今、彼はここにいる。
生きている。
ただし、何かがおかしい。違和感が空気を凍らせていた。
デルガドと共にこの場所へ同行していたエリカ中尉は、玉座に埋め込まれた奇妙な宝石を破壊した後、集団から離れていた。
彼女の表情が変わっていたのだ。
吉田が数週間前に見つけた、あの病弱で内気な少女の面影はない。そこには、以前には存在しなかった決意が宿っていた。
一方、ローズはまだ吉田に抱きついたままだった。周囲の視線に気づいてようやく、彼女の頬がうっすらと赤らむ。
「あ、その……」
ローズは慌てて彼から離れた。
「ごめんなさい」
抱擁に加わっていたシェイリーとエレノアも、ほぼ同時に身を引く。
数秒間、誰も口を開かなかった。
吉田はきょろきょろと周囲を見回し、困惑する。
「なんで、みんなそんな顔で俺を見てるんだ?」
その時、異変が起きた。
脚が、動かない。
「……え?」
吉田の体から力が抜けていく。
「吉田!」
ローズが即座に反応し、彼を支えようとする。
しかし、直立を保つことはできなかった。吉田はそのままローズの腕の中に崩れ落ちる。
「陛下!」
ローズは彼の体を抱きかかえる。
「どうしたの!?」
吉田は脚を動かそうとする。反応なし。腕を上げようとするが、それすらままならない。彼の表情が険しくなる。
「悪い、ローズ……」
彼は唾を呑み込んだ。
「動けないんだ」
ローズの体が凍りついた。
嘘でしょう、と彼女は目を丸くした。数々の出来事を経て、あの悪夢が再び彼女を襲おうとしている。吉田は生還した。だが今度は、動くことすらできないというのか。
エレノアが素早く歩み寄る。
「ねえ、赤毛はどこ? あいつなら何か知ってるはずでしょ」
彼女は入口の方を見回した。
誰も答えなかった。
ケンはエリカを見つめ、シェイリーも同様だ。ローズも顔を上げる。
若き士官は数メートル離れた場所に立っていた。その顔は真剣そのものだ。
「エリカ……」
エレノアが眉をひそめる。
少女は深く息を吐き、歩み寄った。
「陛下……」
吉田が顔を上げる。
「デルガドはどこだ?」
エリカは数秒間沈黙し、言葉を発する勇気が出せずにいた。やがて、彼女は頭を垂れる。
「デルガド殿下は……亡くなりました」
広間が完全に凍りついた。
「……何?」
吉田が絞り出すように問う。
ローズは彼をより強く抱きしめた。
「何て言ったの?」
エリカは唇を噛み締める。
「デルガド殿下は、お亡くなりになりました」
その言葉は、耐え難い重みを持って全員にのしかかった。ケンはわずかに目を見開き、シェイリーは胸に手を当て、エレノアは笑みを消し、そしてデイランドは何も理解できぬまま眉をしかめた。
吉田には、その現実がすぐには信じられなかった。
「デルガドが……死んだだと?」
「ええ、陛下」
エリカは声を震わせながら頷いた。
「お命を犠牲にして、陛下を生き返らせる儀式を執り行われたのです」
数秒間、その場にはただ人々の呼吸音だけが響いていた。
エリカは続ける。
「ですが、どうかご心配なく、陛下」
吉田はゆっくりと頭を上げる。
「心配するなだと?」
「その麻痺は、儀式の副作用に過ぎません」
ローズが目を丸くする。
「副作用?」
「ええ」
エリカは吉田の前に膝をつく。
「お体はまだ完全には回復されていません。儀式は陛下を生き返らせるために莫大なエネルギーを消費しました……そして、魂がまだ安定していないのです」
吉田は眉をひそめた。
「そして、俺はまた歩けるようになるのか?」
「はい」
答えは即座に返ってきた。ローズは安堵のため息を漏らす。
「どうやって?」
ローズが尋ねる。
「特別な薬草と、神聖な癒やしの魔法が必要です」
「どんな薬草だ?」
エリカは彼女に顔を向ける。
「それは、ベイカー家の領地に自生しています」
ローズは口に手を当てた。吉田の麻痺を知ってから初めて、彼女の表情がわずかに緩んだ。
「青のラベンダー……」
ローズが囁く。
「ええ」
エリカは頷く。
「これほどの規模の儀式の後、体を安定化させることができる唯一の植物です」
吉田はゆっくりと呼吸を整えた。
「なら、それを手に入れるだけだ」
エリカは首を横に振る。
「それだけでは不十分です」
全員が再び彼女に視線を向ける。
「薬草は体を修復できますが、陛下の魂を完全に修復するための呪文を唱えられるのは、セレーヌ様お一人だけです」
エレノアとケンは顔を見合わせ、シェイリーは眉をひそめ、ローズは思案に沈む。
「彼女は誰なんだ?」
吉田が問う。
エリカは神妙な面持ちで答えた。
「軍神の妃です」
広間に再び静寂が訪れる。吉田は頭の中で情報を整理しようとしていた。
「……」
エレノアは腕を組み、ケンを見た。
「まあ……それは重要そうな話ね」
ケンはゆっくりと頷く。
「間違いなく」
その後数分、彼らは可能性について議論を始めた。ワーウィック、ミルバー、ベイカー家、セレーヌ、軍神。すべては二つの目的地へと繋がっていくようだった。
やがて、ローズが立ち上がる。
「決まったわ」
全員が彼女を見る。
「まずワーウィックへ行き、薬草を入手する」
彼女の瞳が鋭さを増す。
「その後、ミルバーへ向かう」
吉田はゆっくりと頷いた。
「賛成だ」
離れて立っていたデイランドが、手を上げて口を出す。
「よし、なら俺はこれで十分だろ」
彼は自分自身を指差した。
「俺の出る幕じゃないし、そろそろ失礼するぜ、狂人ども。面白かったよ」
「そうはいかないわ」
エリカの声が彼を止めた。
デイランドが凍りつく。ゆっくりと振り返る。
「は?」
エリカは彼が担ぐ盾を指差した。
「一つ確認させていただけますか。お持ちのそれは……『太陽の盾』では?」
デイランドは盾をわずかに持ち上げた。
「ああ、そうだよ」
「なら、あなたも『聖者』ね」
エリカは頷く。
デイランドは眉をひそめた。
「だから何?」
「あなたにも関係のある話よ」
「知ったこっちゃねえよ」
デイランドはいつも以上に深刻な面持ちで答えた。
「俺はすでに大騒ぎを起こした。その代償も払った。これ以上、糞ったれの悪魔どもに関わり合いにはなりてえもんか」
ケンは彼を横目で見やったが、エリカは退かない。
「魔王を襲った者は、あなただけを追っているのではありません。『聖者』をも狙っているのです」
空気が一変した。ローズが顔を上げ、ケンは顎を締め、シェイリーは弓を強く握りしめ、デイランドはその軽薄な表情を失った。
その時、エレノアが両腕を突き上げて叫んだ。
「イエーイ!」
全員が彼女を見る。
「何よ」
エレノアは胸に手を当てて笑った。
「ってことは、私までは追われてないってことでしょ! あはは! ラッキー!」
ケンは完全な軽蔑の眼差しで彼女を見た。
「お前は本当にすごいな」
「何よ?」
エレノアは気まずそうに笑う。
「久しぶりに、問題の主人公が私じゃないことを祝ってるだけよ」
誰も答えなかった。
吉田はローズに支えられながら、腰を下ろしたままだった。デルガドの死は、依然として彼に重くのしかかっていた。
「エリカ」
若き士官が歩み寄る。
「はい、陛下」
「デルガドに、いったい何が起きたんだ?」
エリカは頭を垂れ、彼の前で跪いた。
「殿下は、すべてのマナを使い果たされました」
吉田は唇を噛む。
「すべてを、だと?」
「ええ」
エリカは深く息を吸った。
「殿下はご自身の全マナを一滴残らず捧げられました。命そのものを燃料にして、陛下の魂をこの世に引き戻されたのです」
吉田は目を閉じた。
デルガド。治世の最初から彼の傍らにいた男。軍を組織し、彼の考えに耳を傾け、すべての苦悩を支えてくれた男が……彼のために命を投げ出したというのか。
吉田は悔しさと悲しみで唇を噛みちぎりそうになり、そしてデイランドへ視線を投げた。
「お前……」
デイランドが身を硬直させる。
「何だ」
吉田は怒りに満ちた眼差しで彼を見た。
「お前が……」
「あいつには関係ない」
ケンの声が割って入り、一歩前に出る。
「デイランドはデルガドを狙っていただけだ。そして偶然、お前と遭遇した。そうだろう?」
デイランドは数秒間黙っていた。やがて、彼はため息をつき、視線を落とす。
「ああ……俺はただ、デルガドに復讐したかっただけだ」
彼は盾を握りしめた。
「だが、お前が現れた。魔王そのものがな。復讐のチャンスだと思った。だがその時……あの声が聞こえたんだ。くそっ……全部、複雑すぎんだよ」
吉田は黙っていた。やがて、彼は顔を伏せる。
「なら、俺を殺すつもりはなかったのか」
「知らねえよ」
デイランドは首を振った。
「わかった」
吉田はそれ以上何も言わなかった。
ローズに支えられ、吉田は玉座へと戻った。若き魔王は苦労しながら腰を下ろす。
エリカは、完全に真剣な表情で彼の前に立っていた。
「陛下」
「何だ?」
「亡くなられる前、デルガド殿下より、私が厳守せねばならぬ指令を預かっております」
吉田が視線を上げる。
「指令?」
エリカは跪いた。
「私が殿下の片腕として、その座を引き継ぐこと」
吉田は黙り、数秒間エリカを見つめた。
「お前も、見たのか」
エリカが顔を起こす。
「ええ、陛下」
周囲の者たちが顔を見合わせる。二人が何を話しているのか、誰にも理解できなかった。
「何を見たの?」
ローズが眉をひそめる。
吉田は答えなかった。ただエリカだけを見つめている。
「デルガドは、俺に何かを隠していた。彼が俺のために働く動機となっていた何かを」
「ええ」
エリカは頷く。
「そして、お前は中身を知っている」
「はい、陛下」
吉田は数秒間彼女を観察し、やがてため息をついた。
「なら、俺は反対しない」
エリカは目を閉じ、胸の前で手を合わせた。そしてゆっくりとそれを離す。
奇妙な赤いエネルギーが、彼女の掌の間に集まり始めた。広間の空気が振動する。
「何……?」
ローズが目を見開く。
エネルギーは増大し、より濃密で強烈なものとなり、やがて彼女の手の中で輪郭を形成し始めた。まず巨大な刃が、次に柄が、そして最後に——
空間を裂くような鋭い金属音とともに、実体を成した。
完成したのは、巨大な赤い鎌だった。エリカはそれを片手で軽々と掴む。刃は広間の光を浴びて、血のように赤く輝いた。
デイランドは眉を上げた。
「へえ……」
ケンは注意深くその武器を観察し、シェイリーは何も語らなかった。
エレノアは笑みを浮かべる。
「それはさすがに予想外だわ」
エリカは鎌を下ろし、玉座の前で跪いた。
「お誓いします、陛下。私はあなたをお裏切りません……殿下のことも」
吉田は数秒間彼女を見つめ、やがて頷いた。
「よし」
彼の表情は決意に満ちていた。
「なら、決定だ」
ローズが彼の隣に立ち、ケンが槍を構え、シェイリーが弓を取り、エレノアが拳銃を回し、デイランドは諦め顔でため息をつき、そしてエリカは新たな鎌をしっかりと握りしめた。
吉田は広間の巨大な扉の方角を見た。
「まずワーウィック王国へ行く。そしてその後は……ミルバー共和国だ」
一同は静まり返った。
彼らの前に広がる道は、今まさに変わった。もはやそれは、吉田の歩行能力を取り戻すだけの問題ではない。デルガドの死の裏にある真実を暴き、セレーヌを見つけ、青のラベンダーを入手しなければならない。
そして、いつか——アクセルを見つけるために。
探索は、今始まったばかりだ。




