取引をしない?
「もうボッロボロだけど何とか勝てたか……」
いや普通にすごいことだと思うんだけどね。
誇っていいことだと。まあたぶん勝てるように作られてはいるんだろうけどさ。
うまいことギリギリ勝てるように調整されていた。
「ありがとう、レットドラゴン」
でも次の相手はあの人か……。さすがにもう無理じゃん。
「あら、あなたが勝ち進んできたの?あたしてっきり……まあいいわ」
◇
「決勝戦の前に急に呼び出してどういうつもりですか?えーっと……」
「もう私の正体はわかっているでしょう?ミルラよ」
いやー、完全にはわかってなかったけどなあ。
「唐突だけど今回はあなたに勝ちを譲るわ」
「え?」
「あなたの力が覚醒したことにして私は負けましょう。
いや実際覚醒したみたいだし……。私はキリのいいところで途中棄権するわ」
「どういうことですか?」
まったく状況が理解できないのだが?
「その代わり取引をしない?」
「取引?」
「あなたに勝ちを譲る代わりに……」
「代わりに?」
「……この子の面倒を見てくれない?」
は?
「……その連れているケルベロスみたいなの?」
「ケルベロスじゃないわ。ウロボロスよ」
「え?」
「だからケルベロスじゃないわ。ケルベロスのウロボロス」
ややこしいな。
「面倒を見るってどういうことですか?」
「普通に餌をあげてくれればいいの。たまに……そうね、月一程度で呼び出して」
「はあ……。なぜそんなことを俺に頼むんですか?」
「そりゃあバレてしまうじゃない?わたしが伝説の召喚士だって。
でもあなたみたいなみんなが注目していない人なら、優雅にご飯をあげられるでしょ?」
「なるほど?」
最もな理由つけてるけど、自分が身バレしたくないだけか。
「私は一般人として生きることに決めたの」
「そうですか」
わりとどうでもいい。
「獲得した賞金は全額あなたにあげるわ。
あなたはそれ以外に大会優勝の名声も得られることでしょう。悪い話ではないはずよ」
「でも負けてもいいから、戦いたい気もするけどなあ」
「獲得した賞金は全額あなたにあげるわ。
あなたはそれ以外に大会優勝の名声も得られることでしょう。悪い話ではないはずよ」
「いややっぱ戦うべきでは?」
「獲得した賞金は全額あなたにあげるわ。
あなたはそれ以外に大会優勝の名声も得られることでしょう。悪い話ではないはずよ」
まさかこれ強制なの?これが主人公がする選択かよ?
「じゃあ、あんまり気は乗りませんが」
「じゃあそういうことだから、ケルベロスのウロボロスをよろしくね」
「はあ……」
「餌」
「えさ……?」
「当分のウロボロスの餌よ、これで数か月は何とかして。
じゃあ手筈通りに」
そういうとミルラはそそくさと去っていった。
これって強制イベントだよな?
こういうのいいのか?絶対誰かの顰蹙を買いそうだけど。
◇
そして予定通りに事は進み、無事にロアルは優勝を果たした。
うん、まあそこまで嬉しくないよね。もしかしたら実力で勝てたかもしれないのに。
いつか戦えるのかなあ。本気のミルラさんと。
「優勝おめでとう、ロアル」
「ありがとう」




