闘技大会開幕
「ついに闘技大会の試合の日を迎えたわね。悪いけどここからはみんな単独行動よ」
「え?聞いてないんですけど」
それにまだここに来て一日だけど?パーティで出れるもんじゃないの?
「試合には一人で挑まなければならないの。
ちょうどロアルもレベルが10になったことだし。まだまだ半人前だけどね」
もう余裕で超えているけどね。
「頑張ってね。私は精一杯応援しているよ」
出ない人は気楽でいいね。
「私は……あの女召喚士とぜひ戦いたいわ。そしたら相手の真の実力もわかるはずだし」
なんだかライバル視してますけど。やる気があるのは良いんじゃないでしょうか。
……でもなんかキャラ被ってますよね。
「試合が終わったらまた合流しましょう。みんな無事にここに戻ってくるのよ。
じゃあそういうことだから、解散」
そういう明らかなフラグ立てるのやめてね?
「じゃあ私は観客席に一足早く向かおうっと。ロアル頑張ってね」
アイラは笑顔でロアルに手を振った。
ルビアとアイラはパーティから離脱した。
ここからは一人で行動するのか……。
闘技場に行くしかないよな。町を出たら一人で魔物と戦わないといけないし。
たぶんイベントとかも無いだろうし。
◇
「闘技大会に出場するかい?」
「はい」
「なあに簡単なことだ。試合はトーナメント制で優勝するには勝ち続ければいい」
それが難しいんだよ。
「詳しいルールはわかっているな?では幸運を祈る」
「おーい、出場するものは急いで選手控室に向かってくれ」
「わかりました」
「ああ、でもちょうどもうすぐ第一試合が始まる頃だ。
すぐにでも戦いが始まるぞ。急いで試合の準備をしてくれ」
いや、絶対俺が来たタイミングで始まるやつでしょこれ。
「参加する選手の皆さんは準備を始めてください。
最初の試合はロアルさん対アリスさんです」
おっと、さっそく出番のようだ。参加するといってからのこの早さ。
この流れるようなテンポは、相変わらずうまく出来ているな。
◇
しかしいきなり戦いの舞台、闘技場の開けた場所に放り出されたわけだけど……。
「ウワアアアアアアアアア」
観客たちが歓声を沸かせている。
結構客が入っているみたいだな。
「えーっと、初戦の俺の相手は……」
緑の見習いローブを着たピンク髪の見習い召喚士……。
最初の頃に雷の魔獣を呼び出そうとしていた、ツンデレの人じゃん。
アリスって名前だったんだ。
しかしあの女召喚士とかとじゃなくて良かった。
出るからには、さすがに初戦で負けるわけにはいかないからね。
◇
「初戦の相手はあなたね?」
「どうも」
「あれから少しは成長したのかしら?」
「あれから成長……?」
この人俺の実力知ってたっけ?
「……うだうだうるさいわね、早く答えなさいよ」
「まあ、したかな」
こういう口調のゲームキャラのノリはどうも合わないな。
「そう、それなら少しは楽しめそうね。
見習い召喚士同士でも優劣があることを教えてあげるわ」
「はあ……」
「そう言えばあの後モフモフのペンギン君が、
無事に雷の力を持つネズミのモンスターを育て上げて、村にいる魚の魔物を一網打尽にしたのよ」
「そうなんだ、なら良かった」
なんかそんなこともあったような……。
クエストが有耶無耶に終わってた気がしてたけど?
「だから感謝したいところなんだけど……。でもそれとこれとは話が別よ。
私に絶対勝てることなんてないんだからね」
「ああ……そう」
ということは、俺が絶対勝つわけね。
「ということでそろそろお話は終わりよ、早速始めるわよ。召喚!」
すると魔法陣が現れ、眩い光りを放った。
その光が黄色く変わり、辺りに飛散する。
白いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。
そのモヤが晴れていくとき……。
魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは虚空に去った。
雷の力を持つネズミのモンスターが召喚された。
対象のレベルは6だ。
「また失敗しちゃったか」
なにこの茶番。ちっとも前と変わっていないんじゃ?初戦のウォーミングアップかな。
杖も新たに変えたことだし、できれば大物を召喚したいな。
「よし今度はこちらの番か……」
久々に呼んでみるとするか、あの魔人を。
「炎の魔神を、ここに召喚する」
すると魔法陣が現れ、周辺に光りを放った。
ひと際大きな魔方陣が俺の前に現れた。
その光が赤黒く変わり、上空にすーっと伸びる。
間違いない。これは炎の魔神イフリートの魔法陣の光だ。
赤黒いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。
これはまさか。まさか……?
周囲では緊迫した空気が漂う。
そのモヤが晴れていくとき……。
魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは空に去っていった。
そして、そこには一人の人間が召喚されていた。
……えーっと、また出てきましたね。
「パワー、パワーが大事なんですよ!」
筋肉もりもりの屈強なアスリートが召喚された。
対象のレベルは3だ。
どよめく人々。いろいろな声が観客席に飛び交う。
「あれは……まさか」
「そうそう、またアスリートがね……ってあれ?」
やけに観客の顔色が違うな。
「すごい!あれこそ炎の上級召喚術の一つイフリートだ!」
「僕、初めて見たあ」
「すごいぞ少年、わしゃあ感動したわい」
「あいつ、まだ見習いの癖に本物のイフリートを召喚しやがった!」
「ワアアアアアアアアア」
観客席の声援が会場を包みこんだ。
ってあれ?また勘違い召喚みたいだけど?
「や、や、やるわね。い、イフリートを召喚するなんて……。とても私には勝ち目がないようだわ」
うん。間違いない。これはみんなの目にはアスリートがイフリートに見えちゃってるね。
目線がかなり上のほうを向いてるし。
「あ、アスリートの異世界人のようだけど?」
アスリートの方は、元気に準備運動をしていた。
なんかすいません。
「何を言っているの?それはまごうことなきイフリートよ?」
このどう見ても、筋肉もりもりの屈強な炎のように熱い魔人のような男が?
「……そりゃあどうも」
「このままじゃ私の負けね。素直に降参するわ。
このレベル差じゃ、とても戦えないもの。どうやらあなたの実力を認めざるを得ないわね」
ええ?ああ、そう……?
「対戦相手の降参により、勝者、見習い召喚士ロアル!」
「ワアアアアアアアアアアア」
観客席の声援はさらに大きくなり、会場全体に響き渡った。
◇
「ええと……あの、名前は……」
「ロアルですよ」
「ロアルくん、よろしく。
……あのね?今度私の村に来てもいいよ?」
「ん?」
「歓迎してあげる」
ツンなのかデレなのかコロコロ変わる人だな。
もうなんか相手にするの面倒になってきた。
「ところで私の名前は知っている?」
「さあ……」
「なんだと思う?」
「そこに書いてあるんだが……」
「なんて……?」
「アリス?」
「もう……。人の名前を気安く呼ばないでよね」
やっぱ俺この人苦手。
……その後もロアルは順調?に勝ち進んでいった。




