イフリートバグ
「うおおおおおおお」
男の猛々しい声が荒野に響き渡った。
変な雄たけびが聞こえた……急にどうした?
「何かが向こうのほうから、聞こえるよ」
「あそこに見習い召喚士が見えるわね」
うーん、どこだろう?ルビアさんよく見えるな?
「どうか我に、力を」
すると魔法陣が現れ、眩い光りを放った。
その光が白く変わり、辺りに飛散する。
白いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。
そのモヤが晴れていくとき……。
魔法陣は再び光り、やがてどんどん黒くなり、その光りは虚空に去った。
異世界のコインが召喚された。対象のレベルは不明だ。
あれは……?
俺もいつかに召喚したことがある、どっかの国のコインじゃん。
「どうやら思いの力が足りなかったようね」
流れが一緒。
◇
「あ、あのどうしても経験値が欲しいんだが?
経験値の召喚を試しているんだが?」
……おかしくない?経験値を召喚って。どういうこと?
「……それは大変なことね。でも実物を召喚するよりも、遥かに良い方法があるわ。
経験値ならエクスゴーンというモンスターからたくさん得られるの。
そいつを召喚して倒すのが効率がいいわよ」
それほとんどさっきと一緒じゃん?で、経験値の実物とは?
「そんな方法があったのか……。教えてくれて感謝なり」
そしてなんかさっきから癖強いな、この男。
「大丈夫よ、下手な召喚はやめて地道に精進することね」
効率とか言ってて地道って?
クエストクリア。
もう終わりか。このパターンはさっき見たよ。
さっきといい、急にクエストの手を抜きすぎじゃ?
俺へアドバイスしてるってのは何となくわかるけども。
◇
「思ったんだけど……。
私たちもそのモンスターを召喚して、お金と経験値を手に入れたらいいんじゃない?」
それは俺も思ってたよ。
「それができれば良いんだけどね……。
そのモンスターたちを倒すことはとんでもなく大変なのよ」
それさっき言っとかないと駄目だったんじゃ?
もうクエストクリアしてますけど?
「まずは装備を装甲を貫くものに変えて、想像以上の攻撃を繰り出さないと倒せないの」
装甲って……。それどんな魔物なんだろう。
……やっぱりそう簡単には無理だよね。RPGではよくあるやつだけど。
「そうなんだ。じゃあ無理だね」
アイラちゃんはレベル30にもなってて知らなかったのか?
「でもね、そんな時でも対処法があってね。……でもそれを今言うわけにはいかないの」
なんだろう、気になるな。
「そうだね、自分の力で見つけないとね。きっとロアルなら見つけられるよね」
その言い方やめて。自分の目で確かめてくれ的な。
「じゃあさ、試しに今ここにその魔物を召喚してみたらどう?」
「……そろそろ一度、町に戻りましょうか」
安定のスルー。
「この荒野は広大だから、ちゃんとついてこないとだめだよ?ロアル?」
さっきからちゃんとついてきているが?これからのことを話してるのかな?
「ならまたあの魔法で町に帰ったらいいんじゃないかな?」
「……そう言えばそうね。ロアルのレベルを上げることをすっかり忘れていたわ」
おっ?いや違うけど。
「じゃあ試しにさっき言っていた魔物を今ここに召喚してみたらどう?」
それ俺がさっき言ったんだよ?
「そうね、二人がそこまで言うなら……。やってみる価値はあるわね。
召喚してみるわ、ロアル準備はいい?」
一歩後に来るんだったか。
「まあ、たぶん大丈夫」
「……じゃあいくわよ」
「がんばってルビア!ほら、ロアルもルビアのこと応援してあげて」
「う、うん?でもなんで応援なんかすんの?召喚の成功率が上がるとかあるの?」
「そんなの、応援したいからに決まってるじゃん」
別に深い意味はないのね。
◇
「いでよ、炎の魔神、イフリート」
えっ?今なんて言った?
すると魔法陣が現れ、周辺に光りを放った。
ひと際大きな魔方陣が俺の前に現れた。
その光が赤黒く変わり、上空にすーっと伸びる。
間違いない。これは炎の魔神イフリートの魔法陣の光だ。
赤黒いモヤが魔方陣から溢れ出てきて、次第にその量を増す。
これはまさか……。ってなんで……?
周囲では緊迫した空気が漂う。
そのモヤが晴れていくとき……。
魔法陣は再び光り、その光りは空に去っていった。
そして、そこには一人の魔人が召喚されていた。
「…………」
炎の魔神イフリートが召喚された。
対象のレベルは50だ。
「わあ、これがさっき言っていた経験値をたくさん得られる魔物、エクスゴーンか」
いや全然違いますけど?一体何が起きてるんです?
「…………」
イフリートは無言でその場に佇んでいる。
普通に炎の魔人出てますけど?体は大きいし、すごい気迫を肌で感じていますけど。
そして熱い、熱気みたいなの纏っていますけど?まさかこれ本物なんじゃないですか?
「じゃあ、早速これを倒してレベルを上げましょう」
明らかに違うもの召喚してる流れだよね?これ。
「倒せるかな~」
倒せるかな~じゃねえのよ。無理でしょ。
相手はあのイフリートですよ?レベル50よ50。
「……仕方ないわね。まずは私が手本を見せてあげましょうね」
ルビアさん、見てるとこイフリートの足ですけど。
明らかにバグってるよね?
「えいっ」
ルビアはイフリートの足に向けて杖を振った。
すると杖から煙がもくもくと溢れてきて、イフリートの体を少しずつ包み込んだ。
「なんなんだ、あの煙は」
「これで少し待てば……」
イフリートの大きな体は、ついに煙で隠されて見えなくなった。
◇
その後、煙が晴れていくとイフリートは消失していた。
「イフリート消えたんだけど、どうなってるのこれ?」
「すごいね、どんな方法で倒したの?私見えなかったよ」
うーん、またバグで消えたとかか?
「それは秘密よ。あなたたちも経験を積めばできるようになるかもしれないわね。
硬い装甲を破るのじゃなく、外から包み込む。それがカギよ」
これやっぱエクスゴーンを倒した流れになってるよ。
「イフリート……」
せっかく拝めたのにすぐに消えてしまった。
でもあの迫力は……すごかったな。
ロアルはレベルが8上がった。
ルビアはレベルが2上がった。
アイラはレベルが4上がった。
……しかし、またとんでもないバグ起きたな。
レベルがすごい上がったから、結果的には良いけど。
これ一時期話題になってた有名なイフリートバグってやつじゃ?




