さん、はい
「町に帰ってきたわね」
「そうだね、久しぶりに地道に歩いて良い運動になったよ」
いつもはどう移動してんだろ?
「早速ギルドに行って、クエストの報奨金をもらいましょうね」
「わーい、お金だお金!……ロアルもお給料貰えるの嬉しい?」
「まあね……」
そりゃあ、嬉しいに決まってるよな。
「そうだよね、貰ったら何に使おうか迷っちゃうな」
「何か買いたいものでもあるの?」
「そりゃあたくさんあるよ。まずはペット達の餌でしょ?
それから私の装備品の手入れでしょ?あとは新しいお洋服と美味しい物もたくさん食べて……」
「なるほど、確かにたくさんあるね」
ペット達の餌って……。まあ魔物使いだから当然といえば当然か。
ロアル達は雑談をしながらも、ギルドに向かった。
◇
「あら?あの女召喚士は……」
ロアルたちの目の前には女召喚士と、剣士らしき男がいた。
あれは……洞窟のチート召喚士さんじゃないか。何やら話し始めたようだな。
俺たちが近づいた途端に話し始めるとか……。ご苦労なことです。
「ちょっと失礼。そこにおられるのは召喚士ミルラ殿とお見受けしたが」
「まあ、そうかもしれないわね」
「でしたら、一度手合わせ願いたい。あなたのとっておきの魔獣と一戦交えてみたいのです」
「そんなに私と戦いたいなら……。
今度隣町の闘技場で召喚士だけが出れる闘技大会が開かれるの。
自身が戦っても、召喚した魔物が戦ってもいい、結構何でもありな大会だけど。
そこで勝ち上がってきたら、きっと私と戦えるわよ?」
闘技場イベ来た。でも早くないか?まだ序盤も序盤だよ?
負けイベントかな?
「……そういうことだから、じゃ」
「くう……召喚士になって闘技大会とやらに出るしかないのか……」
剣士らしき男は項垂れた。
俺たちにわざわざ会話を見せつけて去っていくのね。
その時アイラが咄嗟に前に出て、女召喚士に声をかけた。
「あの、もしかして伝説の召喚士ミルラさんですか?」
「あら?あなたたちはいつかの……?」
いやさっき洞窟で会ったけどね。まだ一日も経ってませんが?
「……今の話を聞いていたでしょう?
まあ私と戦いたいなら、あなた達も闘技大会に出てくることね。
私に勝てる力はないだろうけど、運が良ければ準優勝ぐらいまでは行けるんじゃない?」
そう言い残すと、すぐに女召喚士はその場から立ち去っていった。
「……やっぱりなんか鼻につくわね」
「うーん……?伝説の召喚士ミルラさんだったのかなあ」
「いや、どう見てもそんな感じだったけど」
「そんなわけないでしょ?いいから早くギルドに行くわよ」
これやっぱり分岐してるっぽいね。
◇
「ところでさっき言っていた闘技大会……。出場するか迷うわね」
「出なくていいんじゃないですか?」
「私はどっちにしろ出れないな。召喚士になるつもりはないし。ロアルはどう?」
「だから、出なくていいと思うよ」
「でも勝ち進めば賞金も出るし、今の自分の実力も図れる。
私たちの今後の方針を決めていくうえでも出場したほうが……」
あれこれ理由つけてくるなあ。
「でもロアルは出たくないって言っているからね」
あれ……スルーされてない、だと?
「ええ……?そうなの?」
いや、さっきも言ったし、明らかに聞こえてたでしょ?
「ロアルは闘技大会に出場したくない。そうだよね?」
いちいち確認を取らなくてもいいけど。
「はい」
なんか怖い気がしてくる。
「本当に闘技大会に出場したくないの?」
「そうですね」
確認がしつこい。
「わかったわ。ならばそうしましょう」
お?
「ああ、そういうことかあ」
何がどういうこと?
「……そうね。レベルを上げないととても太刀打ちできない。その通りよ。
じゃあロアルのレベルが10になったら出場することにしましょう」
そうね。じゃないんだよ?断ったはずだが?
「それぐらいあれば、ロアルの力でも何とかなるかもね」
これ出たくないけど、やっぱり強制的に出ないといけなそうなやつだね。
少しでも違うルートがあると思った俺がばかだったよ。
どんなに断っても、出るのが強制だったら意味ないからな……。
ここは逆にサクッと終えますか。
「じゃあ、やっぱり闘技大会に出場しようかな」
「そうよね、じゃあ早速今から行きましょう」
「すぐに向かおう」
え?
◇
「でも闘技場は隣町にあるらしいわね」
「どうやって行こうか。ここからは距離があるみたいだけど。ロアル、何かいい方法はある?」
変なことを言ったので、レベル上げをせず大会直行ルートに首を突っ込んでしまった。
「……徒歩で無理なら、乗り物とかはないんですか?」
「乗り物は、ルビアなら召喚できるよね。
こないだはドラゴンに乗ったけど、もっと乗りやすいものとか早いものとかさ」
「おお、それはちょっと乗ってみたいかも」
どんなのかな……?
黄色い鳥かな?それとも空飛ぶ船かな?
「そうだよ、ルビアはなんでも召喚できるんだからすごいよね」
「すごいすごい」
ここは乗っておこう。
「……なんだか期待しているところ悪いけれど、今回は町から町に移動する魔法で行くわ」
「えー?」
えー?
「最近やっと覚えたのよ。まだ長距離は移動できないんだけど使ってみたくって」
ああ、あれね。ぽーんって空中に飛んでワープするやつね?
それとも時空が歪んでゲートが現れて入るやつかな?
「じゃあ早速唱えてみるわね?二人とも準備はいい?」
……ちょっと待て。この流れはまさか……。
また俺一人取り残されるんじゃないの?これは。
「……あの、今回は置いてかないでもらえますか」
「どうしたの?ロアル。そんなに慌てて。
いい?ワープに失敗する可能性はあるけれど、ジャンプのタイミングさえ合えば大丈夫よ」
ん……?ジャンプ?
「あー、あの魔法かあ、失敗は許されないね。タイミングが命だよ」
どの魔法?タイミング……?
「じゃあ早速……」
そして唐突にワープするための、ジャンプのミニゲームが始まった。
「私が呪文を唱えたら、その後私と同じタイミングでジャンプしてね?」
「いいよ。ロアルも遅れちゃだめだよ?」
お、おう。突然のことだけど縄跳びみたいなことだよね?
「さん、はい」
三人が一斉にジャンプすると、着地するころには別の場所にワープしていた。
「はいっ、目的地に着きました」
はや。一瞬で目に見える世界が変わったのだけど。
なんかこれ違うなあと思ってたけど……。
これテレビとかでよく見るやつだよね?
どうしてこの方式なの?まあ取り残されず無事着いたからいいけど。
「どうやら、成功したようね」
「やったね」
ロアルたちは無事に隣町にワープした。




