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戦乙女イェルメイド  作者: 丸ごと湿気る
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六百六章 懐かしきリーン

六百六章 懐かしきリーン


 ヴィオレッタの一行は日が暮れた頃にリーン族長区に入り、夜になって、やっとセコイアの懐の村に到着した。

 ホイットニー家ではちょうど夕食を終え、ガレルは右腕の義手のアタッチメントの手入れをしていて、ダスティンはナイフを研いでいた。そしてナンシーは夕食の片付けでお皿を洗っていた。

 夕食を終えたシーラはルルブがスタリーのオムツを取り替えているのを見ていた。

「臭ちゃい臭ちゃい、スタリー臭ちゃい…。」

 その時シーラは坂道を登ってくる馬の蹄と馬車の轍の音を聞いた。

「あっ!誰か来たぁ〜〜っ‼︎」

 時期が時期だけに、シーラの言葉を聞いたみんなは燭台を持って急いで家の外に出た。果たして、それはヴィオレッタたちの幌馬車だった。

 ガレル、ダスティン、ナンシー、ルルブは片膝を折ってヴィオレッタを出迎えた。

「セレスティシア様、よくぞご無事でっ…!」

「無事のご帰還、おめでとうございますっ‼︎」

「セレチチア様ぁ〜〜、お土産はぁ〜〜?」

 ヴィオレッタは幌馬車から降りて、みんなを労った。

「みなさん、立って立って。久しぶりですね、お変わりはありませんか…シーラが変わりないのは見たら分かりました。おや、スタリーは?」

 母のルルブが言った。

「オムツの取り替え中でして…家の中でジタバタしております…。」

「あはははは、ちょっと顔を見て行こ。」

 シーラがヴィオレッタにくっ付いた。

「お土産は?お土産は?」

「馬車にお魚がいっぱい積んであるよ。」

「わぁ〜〜い、オッサカナ、オッサカナッ…♪」

 荷馬車にしがみつくシーラをレンドが抱え上げた。馬から降りたエビータたちはガレルたちと再会して…ティモシーを除いたホイットニー一族が久しぶりに一堂に会した。

 家の中に入ったヴィオレッタはテーブルの上でジタバタしているスタリーを見た。

「まぁ、可愛いねぇ…。」

 ヴィオレッタがスタリーを抱き上げようとすると、ルルブが…

「ああ、セレスティシア様、お召し物が汚れてしまいます…」

「構いませんよ。汚れたら、洗濯すればいいじゃん。」

 そう言って、ヴィオレッタはスタリーを両手で抱き上げた。ヴィオレッタはよしよしをしていたが…スタリーがすぐにぐずり始めたので、ルルブに交代した。

 ナンシーが言った。

「セレスティシア様、牛乳がありますよ。どうぞ、一杯お飲みになってくださいまし。」

「ええっ⁉︎…牛乳があるの、どうして?」

「今、うちに牛がおりまして…」

「ど…どうしてっ⁉︎」

「…エヴェレット様のご指示で、うちのガレルがピックさんやレンドさん、それとヨワヒムさんとライバックさんでステメント村から買ってきたのです…」

 ナンシーはチラリとエヴェレットの顔を見た。エヴェレットはしたり顔で、クイックイッとわずかに顎を動かしていた。

(ナンシー…もっと言って、もっと言ってっ!)

 ナンシーは続けた。

「これも…大好きな牛乳をどうしてもセレスティシア様に飲んでいただきたいというエヴェレット様のお心遣いです。」

(…よしっ‼︎)

 ヴィオレッタは感動して…ナンシーから渡された牛乳の入ったコップを手に、エヴェレットに礼を言った。

「エヴェレットさん、ありがとうございます!…ゴクッゴクッゴク…」

「…いえいえ、うふふふふ。」

 牛乳はとても美味しかった。

「美味しい。牛の乳も美味しいけれど、牛の肉も美味しい…と、ガレルさんが言ってました。リーンでも本格的に牛の飼育をしてみましょうか。…今よりもっと数を増やせますか、ガレルさん?」

「大丈夫だ、任せてくれっ!」

「それではエドナさんに連絡して、正式にステメント村から牛を購入しましょう。」

 ヴィオレッタは実は脂っこい牛肉は好きではない。しかし、牛は大型の家畜でいざという時のタンパク源として重宝する。ヤクもいるが、高地に適したヤクは繁殖しにくく、また、ヒツジやヤギでは小さすぎる。

 ヴィオレッタは牛乳をコップに三杯飲んでホイットニーの家を出た。そして、セコイアの懐に続く小径をエヴェレット、スクル、ティルムと共に歩いて登った。

 ランタンを灯して歩く夜道だったのでその風景は闇の中に溶け込んではいたが、ヴィオレッタの足の裏は確かに故郷を感じていた。

(ふふふふ、もうちょっと歩いたら、大きな石の出っ張りがある…ほらっ‼︎)

 リーン会堂が見えてきた。すると、リーン街道の扉が開いて、タイレルとベクメルが出てきた。

「セレスティシア様、お帰りなさいませっ!」

「ただいま、タイレルさん、ベクメルさんっ!」

 この後、スクルとティルムは少し事務作業をすると言って、タイレル、ベクレルと共にリーン会堂に入って行こうとした。そこでヴィオレッタはスクルに言った。

「良い事を思いつきました。明日、朝イチで大工さんを呼んでください。」

「ん…それは?」

「…ふふふ、サプライズですよ。」

 ヴィオレッタはエヴェレットとさらに歩いて、ついに懐かしのセコイアの懐に到着した。巨大なセコイアの御神木が見えてきて…その枝に果実のようにぶら下がる幾つもの円形家屋を見つけると、ヴィオレッタの足は早まった。

「帰ってきた…やっと帰ってきたっ!私の居場所、私のルーツ…リーンッ‼︎」

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