ニッコリニコニコ!
「不死ちゃんは馬鹿なの」
「ジミちゃんごめんやで」
沁ちゃんに、不死ちゃんが説教されていた。
「前もそうだったの、あっちの桟橋は狙われてるって教えたの」
「せやった、大砲で吹き飛ばされたもんな」
いつの時代の何処の話だろうか。
しかし、さっきはやってしまったな。
不死ちゃんを抱きしめて俺は変な事を言ってしまった。
は、恥ずかしい。
恥ずかしくて死にたくない、何なら生きたい!
死にたいを生きたいに言い換える事を得意技にしていた。
ファッション死にたい改め、ファッション生きたいである。
「それ実は死にたい人みたいだぞ……」
思わず口をついて出てしまった。
「ん-? どしたんー?」
「いや、独り言」
「あかんよー。ボソッと呟いて反応が悪かったら独り言にするやつやろー」
「何故それを知っている!?」
俺の奥義だった。
わざと小声でその人が興味ありそうな事を言う。
そして反応したら何事も無かったみたいに会話を続けるのだ。
「ウチも昔してたんよ」
不死ちゃんにも覚えがあるらしい。
長い人生だ、そういう事もあるのだろう。
「でも今はウチが居るんやから、何でも言うてやー」
不死ちゃんは嬉しそうに笑ってそんな事を言う。
「あ、あぁ。分かったよ」
何だよ、可愛いじゃないか。
「よし、晩御飯は豪勢に行こう!」
「大丈夫なん?」
「独身貴族様を舐めんなよ!」
薄給でも貴族である!
使い道が少ない分、多少は金が貯まるのだ!
「バーグだ。ハンバーグの出番だ!」
「ハンバーグやて!?」
流石の不死ちゃんも喰いついた。
ハンバーグは全てを超越する!
「沁ちゃんも食べていくだろ?」
「良いの?」
「オッケオッケー、ハンバーグは全てを超越する!!」
目を輝かせる二人、俺は更に確信を深めた。
「旗を立てるの!」
「それや! ハンバーグを占領やー」
お子様ランチかな?
「じゃあ買い物行くぞー!」
「ほいさー」
「はいなの」
俺達は買い物に出かける事にした。
その時、玄関から声が聞こえた。
「私の分は?」
「玄関に誰かいる!?」
玄関のドアから目だけがこちらを見ていた。
心底怖かった。
「対馬の人やー」
「だから退魔だって言ってんでしょ!?」
「な、何の用でしょうか?」
俺は恐る恐る怨霊に問いかけた。
「ジミ子の御飯は用意するのに私の分は無いんだ?」
「いや、えっと。それぐらい自分で、ねぇ?」
同じく一人暮らしで働いていた身としては、無銭飲食を是とする理由が欲しい所だ。
「ケチくせぇなぁー」
「たかる気の人に其処まで気を使いたくないんですけどね!?」
独身貴族でも、薄給なのだ!
後半の方が重要だった。
「何だよ、何かして欲しいのか?」
「そういうのでも無いけど」
誠意が見たいというか。
せめて気持ちよく奢らせて欲しかった。
「なぁなぁ御姉さん、アレ見せてー」
「アレ?」
不死ちゃんが口を開くと、世界ちゃんが首を傾げた。
「ニッコリニコニコ退魔の戦士ーゆうて踊ってたやろ?」
「なっ!?」
世界ちゃんは驚いた顔を見せる。
「え、何それ気になる気になる!」
過去一で気になる!
「ウチなー、夜の暇な時に壁に耳を当ててたんよー」
「そんな悲しい事をしていたの!?」
「そしたらなー、御姉さんの部屋から聞こえてん」
「ニッコリニコニコなの」
「ぐはっ!?」
世界ちゃんがダメージを受けている。
間違いない、ニコニコ退魔の戦士は実在する!
「それは是非見たい、見せてくれ!!」
「ぜ、絶対やだ!?」
「ハンバーグ作ってあげるから」
「ぐっ……」
あ、悩んでる。
意外と低いラインで悩んでいた。
悩んだ末に世界ちゃんは覚悟を決めた。
一度しかしないからなっと前置きを呟くと、目を見開く!!
「ニッコリニコニコ退魔の戦士ー」
アイドルの様に腕を振ると。
「アナタを救うよ三千世界ー!」
そう言って決めポーズを取った。
いい歳の女性が。
笑うな、笑うんじゃない。
え、でもこれ無理じゃね????
「く、くくっ。い、良いと、思うよ?」
笑うの我慢しながら声を出すと、凄い震えていた。
実質笑っているのと同じの様な。
「あわわわ!?」
世界ちゃんが動転している。
「ええなー。ウチもこういうの欲しいなー」
「いいの」
二人は素直に感動している。
しかし世界ちゃんは顔を真っ赤にしている。
「にゃー!? 忘れろー!?」
「うわっ、何故俺に!?」
「アンタが一番ムカつくからだぁ!」
「そんな理不尽な!?」
「理不尽は慣れておくもんなんだよー!!」
それが一番理不尽だった。




