こらしめるの!
「御邪魔するの」
「勝手に入ってきた!?」
食事を終えた頃、沁ちゃんが勝手に部屋に入ってきた。
玄関のドアを閉め忘れてた様だ。
「ジミちゃんやー!」
「おはようなの」
もう夜だけどね!!
「起きたんやね、良かったー!」
「グッスリなの!」
「肩痛くなってへん?」
「背中が痛いの……」
「分かるで! ウチもやった!!」
見た目は若いのに中年の集いの様だった。
「それでどしたんジミちゃん?」
「遊びに来たの」
「そうなん? せや、一緒にファミ〇ンやろー」
「やるの」
「沁ちゃんもゲームするの?」
「ゲームの歴史は三十年ぐらいと浅いから、結構新鮮なの」
「ウチも思ってたー!」
俺からすると子供の頃の遊びだけど。
何百年と生きている二人には最近のことなのだ。
同じ感情を共有できないのは少し寂しかった。
二人がゲームをする姿を見ながら、そんなことを思った。
「ゲームは楽しいな、御兄さん」
不意に不死ちゃんがこっちを見て笑った。
ドキッとしてしまう。
少なくとも、同じ瞬間は共有できている。
その愛しさを無視はできないな。
「ジミちゃんは好きなゲームある?」
「うん。……桃太郎はあるの?」
沁ちゃんが俺に訊ねてくる。
桃太郎と言えば……。
「えっと、どっち?」
ほぼ二択である。
「伝説の方なの」
「流石にあらへんかも」
「確かにな、鉄道の方じゃないもんな。まぁ、あるけど」
「あるんやー!?」
「グッジョブなの」
沁ちゃんはグッと親指を立てた。
カセットを入れ替えて、冒険が始まる。
それから俺達は桃太郎の旅路を見守った。
「すぐ敵が出てくるなー」
「やはり昔のゲームは長く遊ばせる為に」
「レベル上げ楽しいの」
などと言っているうちに、夜は更けて。
ふと思い出した頃に携帯を見ると、深夜一時だった。
……。
は!? もうこんな時間!?
「あのー、もう寝ても良いっすか?」
「ええでー」
「沢山寝たから、目がシャッキリなの!」
「ウチも起きるん遅かったからまだまだイケる!!」
二人はやる気のようだ、冒険の旅は続く。
俺は布団を敷くと、風呂に入ってきた。
「頑張ってくれー。お休みー」
「うん、御休みー」
「御休みなの」
布団の中に潜り込む。
今日はショッピングセンターまで遠出したからちょっと疲れていた。
目を瞑るとすぐに眠りについた。
……。
……。
夜中にトイレがしたくなってきた。
薄目を開いて二人を覗く。
「やっとこらしめたの!」
「凄いでジミちゃん!」
二人が抱き合って感動していた。
どうやらボスをこらしめたらしい。
寝ぼけながら凄い凄いと笑っていたら。
胸元を開いた不死ちゃんがこちらを向く。
「おはよーさん」
そう言って笑みを見せた。
何で胸元を開いているんですかね……。
色々と言いたいことがあったけど、まぁいいか。
「おはようなの」
「トイレしたらもうちょっと寝させてー」
ささっとトイレに向かう。
「は!? ウチ寝るの忘れてた!?」
今更気付いたのか、とトイレで笑った。
居間に戻ると、不死ちゃんがこちらを見ていた。
「ウチ寝ようと思います!」
「どうぞどうぞ」
「アタシも一緒に寝るの」
「あ、じゃあサプリ用意するな」
俺は引き出しからサプリを取り出すと二人に渡す。
「ありがと、御兄さん」
「ありがとなの、御兄ちゃん」
「じゃあ、お休み」
「御休み」
「なの」
二人はサプリを飲むと。
「……すやぁ」
「……スヤァ」
あっさりと眠りに付いていた。
「効き目凄いなぁ……」
そう思って何気なくサプリを見ると。
ブルーベリーと書かれていた。
……。
間違えた。
睡眠用のサプリちゃうやん。
「……ちゃうねん」
「!?」
寝言……?
「……すやすや」
みたいですね。
もしかしたら二人は思い込みが激しいだけなのでは。
などと、笑いながら眠りに付いたのだった。




