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神の試練と、不老不死の魔王(前編)

暗殺組織のボスであった魔族を打ち倒し、ついに4つの『オーブ』を手に入れたジンたち。

地下神殿の祭壇に4つの玉を並べると、それらは互いに共鳴するように激しく明滅し、やがてドロリと溶け合って、一つの巨大で神々しい『光の玉』へと姿を変えた。


『――よくぞ集めた、強き魂を持つ者たちよ』


光の玉から、脳に直接響くような荘厳な声が発せられる。

『我は奇跡。お前たちの望む願いを一つ、叶えよう』


ジンは振り返り、リンを見た。

リンは祈るように両手を組み、震える声で紡ぐ。

「ワタシの故郷……華の国を、元通りに復興させてほしいアル。奪われたみんなの笑顔を、取り戻したいネ……っ!」


『……承知した。しかし、奇跡を享受するには、それに見合う器が必要だ』

光の玉は、ジンの持つ大剣と、五人の乙女たちの武器に淡い祝福の光を宿した。

『世界の理を乱す最大の闇――「魔王」を討ち果たせ。その証明をもって、華の国は真の光を取り戻すであろう』


「……上等だ」

ジンは光を帯びた大剣を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

「これで心置きなく、一番のデカブツをぶっ飛ばせるな。……行くぞ、お前ら!」


そして一行は、世界を黒い雲で覆い尽くす魔の領域――魔王城の最上階へとたどり着いた。

そこは、かつて神聖な城だった場所が禍々しく変異した、巨大な玉座の間。


「……来たか、挑戦者たちよ」


玉座に座っていたのは、恐ろしい化け物などではなかった。

美しい金糸の髪と、整った顔立ち。身に纏っているのは、かつて聖なる力で満ちていたであろう、今は黒く染まりきった『勇者の鎧』だった。


「その姿……そして、その手にある聖剣……。お前、まさか……!」

シルバが驚愕に目を見開く。


「いかにも。私は数百年前にこの世界の魔王を討ち果たした、かつての『勇者』だ」

魔王は玉座から立ち上がり、退屈そうに首を鳴らした。


「世界が平和になり、私は絶望したのだよ。もう、私を熱くさせる強敵がどこにもいないことに。……だから私は、強者と永遠に闘い続けるために、自らの魂を魔族へと堕とし、不老不死の『永遠の命』を手に入れた!」


「アイヤ……戦うためだけに魔王になったアルか!? イカれてるネ!」

リンが歯軋りをする。


「さあ、私を楽しませてくれ! 私は何百年でも待てるのだからなァ!!」


ドゴォォォォンッ!!

魔王が床を蹴った瞬間、常識外れの衝撃波が玉座の間を吹き荒れた。


「ジン様! 0.1秒後、上段からの神速の振り下ろし! 回避不可能です、全員で受け止めて!!」

アイリスの悲鳴のような予知が響く。


「『極・士気高揚』――限界突破!!」

ジンが瞬時に最大火力のバフを全員に付与し、シルバの長剣、サクラの木刀、そしてジンの大剣が交差して、魔王の一撃をギリギリで受け止める。


「グッ……重いっ……! なんて力だ……っ!!」

ジンが顔を歪める。バフで限界まで強化された三人の力を合わせても、押し負けそうになるほどの理不尽な筋力。


「いいぞ! その程度で終わるなよ!」

「隙だらけですわ! 『紅蓮の獄炎』!!」

「ハァァァァッ!!」


ルナの最高火力の魔法が魔王の視界を焼き尽くし、その隙を突いてリンの超速の回し蹴りが魔王の側頭部を粉砕する。

さらに、サクラのオーラ刃が魔王の右腕を斬り飛ばし、シルバの銀閃がその心臓を正確に貫いた。


「……やったか!?」


しかし。

「……素晴らしい。良い連携だ」


心臓を貫かれ、右腕を失い、頭部が半分吹き飛んだ状態のまま。

魔王は不気味な笑い声を上げた。


ズチュ……グチャァッ!


瞬きをする間に、斬り飛ばされた右腕が黒い粘液と共に繋がり、心臓の傷が塞がり、頭部が元通りに再生する。


「なっ……!?」

「言っただろう? 私は『永遠』を手に入れたのだ。どれだけ傷をつけようが、塵に帰そうが、私は絶対に死なない」


魔王が軽く剣を一振りすると、それだけで城の壁が吹き飛び、ジンたちは枯れ葉のように壁際まで弾き飛ばされた。


「かはっ……!」

「ジン様!!」

アイリスが這うようにジンに駆け寄る。その紫色の瞳からは、絶望の涙が溢れていた。


「アイリス……予知は、どうなってる……」

血を吐きながら問うジンに、アイリスは首を横に振った。


「ダメです……! 攻撃を当てる未来は視えるのに、あいつが『死ぬ未来』だけが、どこにも存在しないんです……! 倒しても倒しても再生して……いずれジン様の魔力が尽きて、全滅する未来しか……っ!!」


最強の予知眼と、最強のバフ。

それが完璧に機能してなお、絶対に越えられない『不老不死』という概念の壁。


「さあ、立ち上がれ! まだまだ夜は長いぞ!」

魔王が、嬉々として黒い聖剣を振り上げる。


ジンたちは、底なしの絶望の淵に立たされていた。

圧倒的な実力差と、決して殺すことのできない元勇者の前に、反撃の糸口は全く見出せないまま、死闘は絶望の後半戦へと突入していく――。

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