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貪食の魔族と、運命を穿つ極光

暗殺組織『黒の月』、その最深部たる広大な地下神殿。

重い扉を蹴り開けたジンたちの前に、豪華な玉座でふんぞり返る中年の男――暗殺組織のボスがいた。そしてその後ろには、ローブを深く被った、異様に体格の良い巨漢が静かに控えている。


「よくぞここまで来たな、小童ども。だが、貴様らの旅もここまでだ」

ボスはニヤリと下劣な笑みを浮かべた。

「その首に光る3つのオーブ、私が頂こう。我が組織の最高傑作である『最凶の護衛』の力でな! さあ、やれ! 奴らを皆殺しにしろ!!」


ボスの命令が響き渡る。

しかし、巨漢の護衛はジンたちに向かうのではなく――ゆっくりと、ボスの背後へと振り返った。


「え……?」

ボスが間抜けな声を漏らした、次の瞬間。


メシャァァァァッ!!!!!


巨漢のローブが弾け飛び、中から現れた異形の『魔族』が、巨大なあぎとでボスの頭から上半身を、一息に丸呑みにして噛み砕いたのだ。


「なっ……!?」

突然の共食い、いや、圧倒的な捕食劇に、シルバたちも思わず息を呑む。

ボスの血肉を啜り、魔族の肉体がボコボコと音を立ててさらに強靭に、禍々しく肥大化していく。


「あぁ……やはり、強欲な人間の肉は極上のスパイスだな」

魔族は血まみれの口元を拭い、嗤った。

「なぜ私ほどの魔族が、ただの人間に仕えていたか分かるか? 人間という生き物は便利でな。権力と金を与えてやれば、こうして私のために『上質な餌(人間)』を効率よくかき集めてくれるのだからな」


魔族の言葉に、ジンはギリッと奥歯を噛み締めた。

組織が繰り返してきた暗殺も、誘拐も、すべてはこの化け物が強くなるための『食事』だったのだ。


「だが、それも今日で終わりだ。自ら3つのオーブを持ってきてくれた貴様らという特上の餌を喰らい、私の力を何百倍にも引き上げれば……あの忌々しい魔王すらも、私の餌となる!!」


ズズンッ!!

魔族が咆哮を上げると同時に、神殿の空気がビリビリと震える。喰らってきた無数の命を圧縮した、圧倒的で暴力的な魔力。

普通の人間なら、そのプレッシャーだけで気を失うほどの絶望的な力の差だった。


だが。

「ジン様! 0.5秒後、足元から地刺しの魔法陣! そのまま前へ踏み込んで!!」

背中に張り付くアイリスの、冷たくも正確な予知の声が響く。


「よっしゃ、行くぞお前ら!! 『極・士気高揚』――限界突破オーバーブースト!!」


ジンの規格外のバフが、四人の乙女たちとアイリスを黄金の光で包み込む。

アイリスの予知通り、魔族が床から無数の棘を発生させるが、ジンたちはすでにその一歩先へ踏み込んでいた。


「バカな!? 私の無詠唱魔法を完全に読んだだと!?」

「銀髪の犬、敵の右腕のガードが1秒だけ下がります。切り落としなさい!」

「誰が犬だ! だが……その目は本物だな!!」


アイリスの暴言混じりの指示に、シルバが超低空のステップで魔族の懐に潜り込み、白銀の斬撃で分厚い魔族の右腕の装甲を切り裂く。


「金髪、左の死角から火球を3発。チョンマゲとチャイナはその後ろから突撃」

「わたくしは金髪のコウモリから昇格したんですの!? 『紅蓮の爆炎陣』!!」

「いくでござる!!」

「アイヤ、ジン様のためなら頑張るアルよ!」


ルナの爆炎が魔族の視界を奪い、その炎の裏からサクラのオーラ刃とリンの超速の回し蹴りが、魔族の急所を的確に打ち据える。


「グガァァァァッ!! 貴様ら、ちょこまかと……ッ!!」


怒り狂う魔族が、全魔力を込めた広範囲の破壊光線を放とうとする。

直撃すれば神殿ごと消し飛ぶ、回避不能の絶対的暴力。


しかし、アイリスはジンの背中で、虚ろな、けれど愛に満ちた瞳で嗤っていた。

「ジン様。敵の胸のど真ん中、魔力のコアが3秒だけ剥き出しになります。……私の愛しい神様、あんな醜いゴミ、跡形もなく消し飛ばしてください」


「おう、任せろ!!」


アイリスの絶対予知が作り出した、たった一つの『確定した勝利の未来』。

ジンは空中に巨大な『光の大剣』を召喚し、全身のバフをその一撃に集中させる。


「俺たちの運命は、俺たちで決める!! ぶっ飛べェェェェッ!!」


魔族が光線を放つよりわずかに早く。

ジンの渾身の振り下ろしが、魔族の胸のコアを完璧に貫き、両断した。


「ば、馬鹿な……次代の魔王となる、この私が……ただの人間どもに……っ!!」


断末魔の叫びと共に、魔族の巨体が内側からまばゆい光を放ち、跡形もなく崩れ去っていく。

そして、光の粒子の中からコロンと転がり落ちたのは、暗殺組織のボスが隠し持っていた――最後の、4つ目の『オーブ』だった。


「……終わった、な」

ジンが肩で息をしながら大剣を消滅させると、アイリスがすぐに後ろからギュッと抱きついてきた。


「はぁ……っ、ジン様、最高にカッコよかったです……! 私が視たどんな未来よりも、今のジン様が一番輝いていました……♡」

「アイリスの指示のおかげだ。サンキュな」


ジンが頭を撫でると、アイリスは幸せそうにとろけた顔を見せる。

その様子を見ていたシルバたち四人も、武器を収めてジンの元へと集まってきた。


「まったく、あの紫髪の指示で動かされるのは腹が立つが……今回は認めてやろう」

「ええ、わたくしたちの完璧な連携の勝利ですわね!」


四つの光るオーブが、ジンの手の中で共鳴するように温かく輝いている。

ゴブリンの森から始まった、過酷で、騒がしくて、愛に溢れた長い旅。


「……よし。これで全部揃ったな」

ジンはオーブを見つめ、そして、自分を囲む五人の最強のヒロインたちを優しく見回した。

シルバ、ルナ、サクラ、リン、アイリス。

彼女たちと共に、この世界で生きていくための、最後の戦い。


「行くぞ、お前ら。この奇跡の力で、魔王をぶっ飛ばす!!」

「「「「「はいっ(ですわ/でござる/ネ/ジン様)!!」」」」」


乙女たちの声が、地下神殿に力強く響き渡る。

運命を打ち砕き、絶対の絆を手に入れたバッファーと五人のヒロインたちの刃は、いよいよ世界を覆う最大の闇――『魔王』へと向けられるのだった。

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