42話 運のない男
誤字脱字あれば教えてもらえると嬉しいです。
42話のタイトルを変えました
冒険者になった俺だが改めて冒険者とはどういったものか説明しよう。
冒険者は冒険者ギルドという世界的機関の管轄の下、様々な依頼を受けて報酬を貰う職業だ。
依頼というのも千差万別で採取系や力仕事、魔獣討伐や探索など本当に様々ある。そしてどんな依頼にもギルドが査定したランク付けがされており、そのランクに満たない冒険者はその依頼を受けることが出来ない。
責任問題とかが発生してしまうとかで色々と面倒ごとになるんだとか。
そして依頼をこなしてギルドに対して貢献すればランクが上がるというシステムだ。高ランクになればなれるほどその分の待遇も良くなる。実力の世界なのだ。
だが実力ということは、例えば魔獣討伐で失敗して死んでしまってもそれは自己責任ということになる。
それは俺も納得出来る。身の丈に合ったことをするのは何も間違っていないし当然のことだ。
そんな俺もランクに見合った仕事をしていた。
サルナ王国の門の外に広がる中規模の森の中で薬草の採取をしていた。
Eランクで報酬は銅貨五枚。まさに下っ端の仕事だ。
「はぁ……、分かってはいたけど地味だよな」
そう、薬草採取って大分地味なのだ。草むしりと何も変わらない。しかも森の中ということは蛇なんかよりも獰猛な魔獣が棲んでいる分日本よりも性質が悪い。
この国には約一ヶ月滞在する予定だ。その間にAランクまで上がらないといけないとなると兎に角依頼をこなしていく必要がある。それも大量にだ。
だから俺はこの薬草採取系の依頼を一気に多く受けた。上手くいけば今日中には上がれるんじゃないだろうか。
「念のため規定数よりも多く取っておくか」
こうして俺の冒険者生活はとてつもなく地味に始まった。
夕暮れ時、王都の門扉をくぐり真っ先にギルドへ向かった。
「カリナさん!依頼完了しました!」
俺はギルドへ入り一目散に彼女へ駆け寄る。
カリナとは俺が冒険者になった時に受付をしてくれた女性だ。栗色の髪と瞳、ショートヘアのカリナさんは若くそして優しい。
うちの主人とは大違いだ。
俺は袋一杯に入れた薬草をカウンターに置いた。
「わあ〜〜、結構取りましたね」
優しさに満ちた笑みが俺を出迎える。
「ええ!なにせ早くランクアップしたくて」
「Dランクへの昇格は一つでも依頼をこなせば上がれますよ」
「…え⁈」
一つでも?
「Eランクの仕事なんてこういった薬草採取くらいですから、一つでもちゃんとこなせばDランクへ上がれます。そこからはちゃんと実績を積み重ねていくんですけど…」
カリナさんはチラリと袋を見たあと、
「で、でも本当に頑張られたんですね!」
その優しさが胸にグサリと刺さった。
薬草を渡し報酬を受け取る。
薬草採取の依頼、銅貨五枚の仕事を俺は三つ受けたため銅貨十五枚、銅貨十枚で銀貨一枚だから俺の手持ちは銀貨一枚と銅貨五枚となった。
そして冒険者カードのランクの欄がEからDへと変わった。
「はい。お返ししますね。これで依頼達成とランクアップが完了しました。これからも頑張ってくださいね」
「ありがとうございます」
余分に張り切ってしまったが何はともあれ今日中にランクアップできたのは喜ばしいことだ。
「これは依頼よりも多くの薬草を採取してきてくれたお礼になります」
そう言ってカリナさんは三本ほどの小瓶を渡してきた。
「これは?」
「回復ポーションです。冒険者さんには必須のアイテムですので」
微笑んで答えてくれるカリナさんは女神にしか思えないようになってきた。
俺このまま冒険者のままでもいんじゃないのか?
「このギルドは酒場と併設されてますので良かったらご利用ください」
そう言われて酒場の席までやって来た。
ギルド内はそれなりに広くテーブル席がちらほらとあり、そこには何人かが固まって騒ぎながら楽しそうに酒を飲んでいた。
この世界では成人扱いの俺も昇格祝いとしてパーッと飲もうと思い、カウンター席に座る。
別にぼっちでも俺は全然平気だ。悲しくなんて…ない。
従業員の女性に注文して軽い料理とキンキンに冷えた酒が来た。シュワシュワと炭酸の音が心地良く耳に届く。それをぐいっと喉に流す。
「美味いッ!」
ほんのりと麦の香りが口に漂い少しの苦味が後味を引く。これが大人の味というやつか。
そうして一人、酒を楽しんでいるとテーブル席の方から荒々しい声が飛び交って来た。
「おいコラてめぇ!もういっぺん言ってみろ!」
後ろを振り返るとスキンヘッドの屈強な男がキザったらしい金髪の男の胸ぐらを掴んでいた。
酒を飲んでいるせいもあると思うが、その表情は鬼の形相といってもいいほど怒っている。
「だから言ってるじゃないですか〜。サーベルバッファローは僕たちが討伐したから報酬とまでは言いませんが素材くらいくれても」
しかし屈強な男の怒りも意に介さずどこ吹く風と言った感じだ。
「てめぇ…!あの時こっちでスムーズに倒せたバッファローに横槍を入れて手間を増やした野郎が!」
「むしろ援護をしたつもりですよ?それを活かしきれずに時間を食ってしまったのはロディさんの方では?」
「どうせまた横取りを狙ってたんだろ!この貴族のボンボンがッ!」
なるほど。大体分かった。きっとあの金髪ボンボンが彼らのパーティーの獲物を横取りしようとしたんだろう。それで今こうして揉めてるってわけか。
俺には関係ないな。再び前を向き運ばれたスープを飲むためスプーンを手に取る。
食欲をそそられる香りを感じスプーンで掬って口に流す。これもまた美味だ。このギルドの料理はとても美味い。
なんて思ってると後ろの騒ぎはより一層盛り上がっていた。
「舐めた口ばっか叩いてっと痛い目に見るぞ」
血管がはち切れそうなくらい赤面し、屈強な男ロディは拳を強く握りしめていた。
いつのまにか解放された金髪男は腰掛けてあった剣を抜き取り、そのまま突き刺すように投げた。
その剣はロディの頰を掠れさせて僅かに血が流れる。
「痛い目に遭わすならこのくらいの度胸はないと」
勝ち誇ったように下卑た笑みを浮かべ、とうとうロディは我慢が出来ず殴りかかろうとしたその時、ギルド内は揉め事とはまた別の騒ぎが起きた。
「おいあんた!大丈夫かッ!…クソッ、おいッ!誰か回復魔法かポーションを持ってこい!このままじゃあ死んじまうぞ!」
「この出血…、それにこれ……、心臓に突き刺さってるんじゃあ…」
多くの人だかりができ揉め事所の騒ぎではなくなっていた。
金髪男の投げた剣が俺の体を貫いていた。血は止まることを知らず、床を赤く染めていく。
「なんて運のねぇ野郎なんだ…」
その言葉はギルド内に居た誰もが納得したものだった。
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