40話 英雄の国と夜
誤字脱字があれば教えてもらえると助かります
サルナ王国の騎士たちと出発してから三日が経った。禁忌指定区域”魔の樹海”の中を突っ切って進んだので大分時間を短縮出来たらしい。
なんでも強力な魔除けの魔道具のおかげらしく、女王は友好を結んだ国には支給しているんだとか。
整備のされていない凹凸の道を移動する大集団。すれ違う行商人たちは目を丸くしてびびっていた。そりゃあ怖いだろうな。
王国の騎士たちはその行商人にディラー平原での戦いを軽く説明していた。特に帝国の兵器を正面から防いで撤退していった様をやけに強調していた。こういった話はすぐに広まるらしく、王国陣営が優勢だと触れ込みたいらしい。
魔除けの魔道具のおかげで道中に魔物が出ることはなかった。効果が強力な分持続期間は短いが俺たちは問題なくサルナ王国についた。
外壁に囲まれた都市、大きな門を馬車ごとくぐると目に飛び込んできた光景は眩しいほどの活気に包まれた町だ。道は滑らかに整えられており、石造りの町の姿は清潔さを漂わす。そこに多くの人々が行き交っていた。
「すっげー…」
思わずそう口にしてしまうほど圧巻の国だ。
しばらくして馬車の揺れが止まる。御者が扉を開けてくれ外へ足を出すと目の前にはこの世界で三度目になる王宮が大きく高く厳かに立っていた。帝国に魔女の国と王宮を見たがここが一番大きい。
「大きいわね…」
馬車から降りたルリナも俺と同じで圧倒されていた。
「どうだ?ここの城は大きいだろ?」
こちらにやって来たエイジが自慢げに言ってきたが不思議と不愉快な気分にはならなかった。
「如何にも大国って感じですね」
「先代の王様が増築させたらしくてな。国の威信のためらしいが出来上がったのに十二年は費やしたらしい。ほんとは三年で完成する予定がその王様が何回も設計図を書き直したとか…」
「十二年って…」
どんだけ力いれてんだよ。
「ひとまず行こうか。この国の王がお待ちだ」
そのまま使者の俺たちはエイジさんの先導の下、この国の王サルナ国王が待つ謁見の間まで向かった。
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国王との謁見は淀みなく終わり、サルナ王国に着いてから初めての夜が訪れた。
俺は護衛で大した身分でもないので外で待機していたため謁見の内容は聞いていない。
サルナ王国から俺は七紋家の護衛ということで王宮内の一つの客室を貸してもらっている。
高級ホテルのようなこの部屋は庶民高校生にとって中々落ち着けない部屋だ。しかし俺は動じない。少しそわそわしてしまったが…。俺は客室に取り付けられた窓を開けて夜の空を見上げて、
「月が、綺麗だな…」
「曇って隠れてるけどね」
「ッ⁈」
首がもげると思うほどの速さで振り返ると寝巻姿のルリナがいた。寝巻だからラフな格好なんだが、仮にも国を代表する使者なんだから寝巻姿で王宮内をうろつくのはどうなんだろうか。
そう思うも窓を見て黄昏てた俺は今羞恥に悶えていた。
昔母親にエロ本を見つけられた気持ちに似てる。逃げたい…
「…いつ来た?」
「ついさっき」
「ノックぐらいしろよ…」
「従者で男のあんたに必要?」
「…マナーとか、あるだろ」
「しょうもないわね」
ルリナは部屋に入り、ベッドの上に座る。
「今日はあんたに話があるの」
何だ?いつもと雰囲気が違うように感じた。
「どうしたんだよ?急に改まって」
「あんた…、今のままでいいの?」
「…え?」
唐突に投げられた質問。俺は一瞬硬直し、そしてすぐに何を意味しているのか察した。
けど俺が口にするより先にルリナが言った。
「戦争の時、私は…、もっとやれると思ってた。でもそれは思い上がりだってすぐに気付かされて…。かあ様が重傷を負った。私は…弱い」
「そんなことはない」とは言えなかった。重い空気を込めて言ったその言葉に、そして事実でもあることが更に重しとなって俺は慰めの一言も言えない。
「だから私は修行をすることにしたの。まだ未熟の銀の魔法をマスターする。あんたから貰った魔道書もあるしね。もう弱いのは嫌だから…。あんたはどうするの?本当に、今のままでいいの?」
ルリナはベットから立って窓に立つ俺の所へ来て顔を覗き込むようにして尋ねる。
「俺は……」
戦争の時、俺はショウキに勝てなかった。エイジさんが来なければ死んでいた。俺はどこかで自分のスキルを過信していたのだろう。
クラスメイトを殺すのを人任せにした。いや、あの時あれが最善の判断だと思っている。だけど今後はどうだ? 帝国との戦争はこれから先も続くし激しさも増す。それに帝国だけじゃなくそれに組する他国もある。もう甘えは許されない。
俺は銀の魔女に仕える家臣でルリナの護衛。
性格は良いとはいえないが命の恩人だ。弱くて護衛が務まるわけがない。それでもしルリナが死ぬようなことがあれば…。
このままでいいわけがないッ!
「俺は…、やるよ。勇者達は俺を殺そうとする奴もいた。俺はあいつらとは縁を切った。なら俺自身みすみす黙ってやられるわけにはいかないッ!今のままじゃ…、ダメだッ」
「そう…、あんたも少しは男になったんじゃない?」
妖しく微笑むルリナは雲に隠れていたはずの月が顔を出し、照らされる月光がより一層彼女の美貌に拍車をかける。
この時、俺は月明かりの下で輝く銀の髪のルリナがとても綺麗に思えた。
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