38話 同郷
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サルナ王国との会談から二日後。
明日には使者としてルリナはこの国を離れる。なんだか不思議と寂しさがこみ上げてくる。思えば帝国から抜け出した時からルリナと一緒に行動してきた。
屋敷でせっせと荷物をまとめるルリナに声をかけた。
「まさかこの家が使者として選ばれるなんてな」
「まあ勇者と戦ったのは私たちのところだし、当然ね」
手を動かしながらルリナは俺の話に乗っかてくれる。自然に始まるこういった会話もこの世界で一番長い付き合いになるルリナだからこそだ。
「シエラにトーラ、不安しかないわ。特にシエラ」
「…俺はお前が不安だよ」
「どういう意味よそれ」
作業中の手を止めてむすっとして俺の方へ振り向く。
「その二人の次期当主様に迷惑をかけないかが心配だ」
マイアという知恵の魔女の娘でソフィア家次期当主のトーラという少女。会談の時はいなかったらしく俺は見たことがない。そして鮮血の魔女の娘でイーラ家次期当主のシエラという少女は俺を勧誘していたあのロリッ子だ。流石にびびったな。あの見た目と態度で次期当主とか想像もつかない。
「…言っとくけどあんたもなんかやらかせば私の評判にも関わるんだからね」
俺の言葉に言い返すルリナ。砕けた態度で軽口を言える奴がいなくなるのはやっぱり少し辛い…、そう思うも俺はルリナの言葉に引っ掛かりを覚えた。
「あんたも…?」
「そーよ。明日は出発なんだからあんたもさっさと準備しなさいよ」
俺も準備だと?
「もしかして…、俺も行くのか?」
「当たり前じゃない」
即答で返ってきた。何を言ってるんだ?とでもいいたそうな呆れ混じりな顔をする。
「私の護衛でしょあんた。それとも何?まさか恩を忘れたわけじゃないわよね?」
それを言われると何も言えない。行かないという選択肢はなく、俺もサルナ王国に向かう準備を強いられた。
「あっ、それとかあ様が当分向こうに居座るから臓器をストックさせて欲しいって言ってたわよ」
戦争があったから忘れてたけど、そういえばそんな約束してたな。というかエイナさん俺が行くこと知ってたのか。
準備と臓器のストックという忙しさを味わった。
思えばこのスキルを使えば臓器売買でぼろ儲けできるんじゃないのか?しんどいからやらないが。特に精神的にきつい。
荷物をまとめて臓器を取り出すのが終わり、俺は気分転換に町へ出た。
エイナさんは毎回俺の体を抉る時笑いながら作業する。あれはどうにか出来ないのだろうか。本気でサイコパスにしか見えないから怖い。ホラー映画は好きだがリアル過ぎる。
げっそりした俺は日が沈みかけて紫がかった朱色の空を見上げた。あまり見ない空模様に足を止めると後ろから声を掛けられる。
「よう、カナタじゃないか!」
「ゼイド教官!ちわっす!」
それは私服姿で腕に包帯を巻いたゼイド教官だった。
「なんか酷く弱ってるが…、なんかあったか?」
「いえ、お気になさらず」
どうやら今の俺は人から見ても分かるほどげっそりしているみたいだ。今までの採取していた臓器の倍以上は取ってたからなエイナさん。正直何に使うか気になる。心臓なんて今まで一個だったのが今回は四個と急に増えたしな。
ゼイド教官はそのまま気さくに話しを続ける。
「聞いたぞカナタ。ルリナお嬢様がサルナ王国に向かうらしいじゃないか。お前も付いて行くんだろ?」
「そうですね。俺も行くっていうのは今日初めて知りましたけど」
全く、性質の悪いドッキリだ。
「それでどうだ?このあと飲まないか?奢るぞ」
「行きます!」
奢りと聞き力強く返事をして俺はゼイド教官と酒場で初めて飲み明かした。この世界での成人は15歳らしく、酒を飲むのに問題はなかった。
騒ぐ酒場の中で互いに愚痴や戦争での戦いなど語らった。
―――――――――――――――――――――
翌日、日が薄っすらと明るく照らし始めた頃、魔女の国の大きな門扉の前にはサルナ王国に帰還する騎士達が荷馬車に荷物を積んでいた。
彼らの準備が整い次第出発するとのこと。
今日の朝も二度寝をかますルリナを叩き起こして引きずって来た。朝から力仕事とか家臣使いが荒い。
「お前最近何時まで起きてるんだ?朝が弱いわけじゃないだろ?」
そう、最近のルリナはよく夜更かしをしてるらしい。らしいというのは俺はそのことを知らず、エイナさんがそう言ってたのを聞いただけだからだ。
ルリナはまだ完全に上がらない半目の状態で眠たそう訥々と言った。
「ほら…、前にあんたから…、貰った魔道書を…、読んで…いたのよ」
ルリナの言う魔道書は大分前になるが、俺が帝国の王宮から抜け出す時に一緒に持ち出したものだ。
そういえばあれはルリナとの取引に渡したんだっけ。
そして俺とルリナのもとへ一人の男が近寄って来た。
「よぉ後輩!会いたかったぜ!」
そう馴れ馴れしく絡んできたのは会談の時に居たサルナ王国の確か五英傑だったか。
「…えっと…、俺、ですか?」
唐突なことに俺は戸惑い、近づいて来た男に聞き返した。
「君がカナタくんだろ?俺はエイジっていうんだが、覚えてないか」
はにかみながらエイジさんは笑う。
「ほら、追い詰めれたあんたを助けてくれた人よ」
意識がしっかりとし出したルリナが補足してくれる。
そうか。この人が俺を助けてくれた剣の人か。
「あの時は助けてくれてありがとうございます」
俺はきっちり誠意を込めてお礼を言った。ショウキの所にクラスの連中が来た上にゴロウが俺を殺せる武器というのを持っていたし、命の恩人といってもいい。
「気にするな。援軍が今回の任務だったし、それに折角男で同郷の人間が来たんだからな」
同郷?今同郷って言ったのか?
「…あの同郷って?」
「ああそうだ。俺は君と同じで日本からこの異世界に来たんだ」
愉快に笑いを混ぜながら軽くエイジさんはこの世界に来た経緯を説明した。
「大学の敷地内を一人で歩いていたら急に落とし穴にはまった感覚があったんだ。そこからどんどん下に落ちていってその時は何が何だか分からなかったよ。意識が遠のく寸前で床に強く尻餅をついて、周りを見渡すと鎧やら王冠をつけた人達が俺を凝視してた。怖くて仕方なかったよ」
「俺はそこからこの世界情勢を聞いて勇者となって研鑽を積み、帝国と戦ったってのが俺の…、この世界に来てからのやってたことだ。他に何かすることをなかったしね」
「えっと、ずっと一人だったんですか?」
エイジさんの話を聞いた俺は質問をした。
「そうだよって言っても二ヶ月くらい前に王国がまた召喚の儀式をしてね。その時は二人の女の子が呼ばれたよ。それまでは異世界の人間は俺だけだったな」
召喚されて五英傑とまでいわれる…。思わずにはいられない。この世界の主人公はきっとこの人だろうと。これ絶対主人公最強系の歩む道だろ。
「俺のとこは高校でクラスまとめて帝国に召喚されましたね」
「クラスまとめてって…、もしかしてその中にハイスペックイケメン野郎とかいない?」
「いますね」
即答してしまった。
「はぁ……、お約束感がすごいな。」
乾笑いをするエイジさん。なんだろう…、同じ境遇の人ということもあるのか、それとも同じ日本人でその手の小説や漫画を知ってるからなのか、兎に角とても心が穏やかになる会話を俺は楽しんだ。
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