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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
二章 英雄の国と水神獣
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36話 鮮血の魔女

更新が遅れてしまい大変申し訳ありません。

 外出許可の降りた今日。俺はオーガムさんのいる店に来ていた。


「おう!生きてたか坊主!」


 この人俺のこと死んだと思ってたのだろうか…


「オーガムさんがくれたこの刀のおかげでなんとか…」


 俺がそう言うとオーガムさんは「そうかそうか」と頷いて心底嬉しそうだった。


「他に客は来てないんですね」


 店内には俺以外の客はいないため、物静かな空気が詰まっている。


「ああ、今頃戦争に参加した奴らは酒場か家で寝腐ってるかのどっちかだろうな」


 今回の戦争で女王は結構な額の報奨金を与えた。今まで戦争には無関心を通してた国だが、それも今後は出来なくなってしまった。おそらくこれからの戦争に備えて参加した冒険者や傭兵団を捕まえておくつもりだとオーガムさんは推測した。


「気前の良い国は傭兵団から気に入られるからな。それで今日はどうした?」

 

 世間話を軽くしたあと俺は今日来た本題を切り出す。


「実は…、刀の修復をお願いしたくて」


 俺の持つ妖刀"絶咸淙(たつみなそう)"は激しいショウキとの戦いで刃こぼれをしていた。


「こりゃまた随分と荒く使ったみてぇだな」


 手袋をはめて刀身を見ると呆れた声を出す。


「まあ聖剣と打ち合ったので」


 確かアスカロンといったショウキの剣。きっと普通の剣だったらすぐに折れていたと思うほどあの剣からは凄みを感じた。


「は?聖剣…だと⁈」


 驚愕一色に染まったオーガムさんはその後前のめりの姿勢で詰め寄ってきた。


「あの聖剣と打ち合ったのか⁈どうだった坊主!この刀は聖剣と打ち合ったのはどうだったんだ⁈」


 鬼気迫る迫力で俺の感想を聞いてくる。普通に怖い。


「え、えっと…。結構斬り合いましたけどそれなりにやり合えてましたよ」


 俺がそう伝えると、ぷるぷると震えて「そうか、そうか」と感極まったといった感じでさっきよりも嬉しそうだった。


  ――――――――――――――――――――――


 刀は後日受け取りに来るということになり、それから三日が経った。


「ほらよ坊主。前よりも強度は高くなってる。上質な魔鉱石が手に入ったからな。大事に使ってくれよ」


「ありがとうございます」


 刀を受け取って鞘から刀身を晒すと見事に復元されており、きらきらと輝いていた。

 この刀にも愛着が湧いたのか、その様を見て俺も嬉しさが込み上げてくる。


「それにしても開店と同時に来るとはな。この後何かあるのか?」


 時刻はまだ早朝。朝日が昇ってまだ間もない時間だ。


「ええ、実は今日会談があるんですよ」


 サルナ王国との会談。七紋家の銀の魔女としてエイナさんとルリナが出席するので俺はその護衛として同行する。


「そうか。まっ、頑張りな」


 オーガムさんはそう言って俺を軽く送り出した。




 屋敷に戻ってからまだ惰眠を貪ろうとしたルリナを叩き起こし、馬車に乗って俺たち三人は王宮にやって来た。御者をしていたベンさんは王宮の前で待機するらしい。


「お待ちしておりました。銀の魔女様と御息女様。どうぞ中へ、他の方々は先ほど集まりました」


 王宮の執事が流れるように頭を下げてから俺たちを案内する。俺はあくまで護衛としてここに居るので執事からは名前を呼ばれない。俺に上等な身分なんてないからな。やはり異世界というか、改めて日本とは違うと思った。身分なんて気にしたことないしな。


「あなたが寝腐ってたから私たちが最後じゃない」


 エイナさんはルリナに向けて呆れの篭った声音で言う。


「き、昨日は研究で忙しかったのよ」


 目を泳がせて小声でルリナは弁解するが、力無い小さな声だ。多分嘘だろうな。



 豪華な意匠や清潔で煌びやかな王宮の中を歩いて一つの両扉の一室に着いた。


「こちらに御座います」


 そして執事が扉を開けると広い部屋の中心に一つの円卓が置かれている。そこに腰を据えるはこの国の重鎮達。七紋家と女王だ。


「来たかエイナ殿。まあ座ってくれ。今サルナ王国の面々を呼びに行ったところだ。会談はもう間もなくに」


「はい。七紋家が一つ、銀の魔女、インヴィディア家当主エイナ・インヴィディア。これより会談に参加致します」


 エイナさんが右手を胸にあててお辞儀をしたのと同時に俺とルリナも頭を下げる。これがここに入ってからの一連の流れだと聞かされた。


 円卓にそれぞれ間隔を空けて椅子が置かれており、俺とルリナに座る席はない。ここに座れるのは七紋家の当主だけだ。

 女王の横には近衛隊長といわれるラグルドという男がいる。そして他の七紋家にも一人、二人の護衛が立っていた。


 俺達の横にはティナのいる慈愛の魔女と赤い瞳を持つ鮮血の魔女というイーラ家が居た。


 その鮮血の魔女の護衛と思しき金髪のちんまい少女が何故かさっきから俺の方をガン見している。

 落ち着かない。ただでさえ男が少ない空間の上、その子との距離が大分近いのだ。


 チラッと一瞬だけ視線をやると少女は俺のことをずっと捉えていたので目と目の視線が重なった。

 すると少女はニヤリと口角を吊り上げて目を惹く八重歯を覗かせた。


「おい、お前が帝国からやって来た勇者だろ?」


 幼い顔に似合わず粗暴な口調で俺に話しかける。


「まあ、そうだけど」


「殺しても死なないというのは本当か?」


「合ってるね」


「銀のところに身を固めたのか?」


「一応そのつもりだけど…」


「…むぅー、なんだかお前素っ気ないな」


 少女は眉をひそめてつまらなそうな顔をした。


 どう見ても年下だから砕けた喋りになっていた。まずかったか?一応護衛という立場だし、無礼は控えた方がいいよな。


「失礼いたしました。不躾な態度を取ってしまい、誠に申し訳ありません」


「よし、決めた!お前私の下につけ!」


 今から会談ということもあって周りが静かだったのが災いして、彼女の声はよく通った。


 この餓鬼は何を言ったのだろうか?

 謝罪した途端にどこか懐かしい台詞を吐いた。ルリナと出会った時もこんな感じだったなと、変な感傷に浸る。


「いや、それは出来ない。お世話になった恩があるんだ」


 当然のようにあしらう。

 見た目は悪くないけど日本の感性で言ってしまえば、手を出そうものなら結構グレーゾーンに入る少女だ。

 女の子からの誘いなんて俺の人生でそうそう起こるものじゃない。

 異世界に来る前ならこういったことも全力で応えただろうな。けど、現実は違う。折角の就職先を手放すわけにはいかない。


「私の誘いを断るのか?男のお前がこの国の魔女の…、それも七紋家に?」


 少女からは圧力をかけられ、情け無く萎縮してしまう。なるほど。七紋家の護衛なだけある。


 俺が対応に困っていると俺の横に居た人物。隣に居た少女に向き合っているため、今俺の背後にいるルリナ。

 そのルリナが悍ましい怒気を孕んだオーラを漏らしていた。


「あんた…、誰のものに手ェ出してんの」


 俺は今までで一番彼女のことが怖いと思う瞬間を見てしまった。


読んでいただきありがとうございます。


8500pv突破しました!1万までもうすぐです。読んでいただき本当にありがとうございます。

今後も頑張るので応援のほどよろしくお願いします。


次回の更新はなるべく早くにいたします。


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