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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
二章 英雄の国と水神獣
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35話 復帰

 俺にルリナが飛びついてからしばらくして気まずい雰囲気が漂っている。


 今ルリナは俺の前に立って顔を赤くしながら固まっていた。


「ええっと…、その、さっきのは取り乱しただけだから…」


 目尻は赤く僅かに腫れていて泣いていたのが分かる。俺の寝巻きもかなり湿ってるし。恥ずかしいようだからあまり触れない方がいいかもしれない。


「わ、わかった…」


 もう少し気の利いた返事は出来なかったのかと自分に言いたくなった。女性経験皆無というのが災いして、なんとも淡白な返事だ。


「あんた三日も寝たまんまだったから…」


「え?…三日?」


 俺はようやく今の事態がどうなっているかということに思考した。

 ここはルリナの屋敷で俺が借りている部屋だった。戦争が終結したとしたらどうなったのか、俺はルリナに聞いた。


「ルリナ!戦争はどうなった⁈ ゼイド教官やエイナさんは無事なのか⁈ ショウキは…あの勇者達はどうなったんだ⁈」


 俺は焦って矢継ぎ早に質問を投げた。


「落ち着きなさいよ。まず戦争は私たちの勝ち、帝国は撤退していったわ。かあ様もゼイドも無事よ」


「そうか…」


 その言葉を聞いた俺は安堵の息を吐いた。

 二人とも助かって良かった。見たところルリナも大きな怪我をした様子はないし、戦争に勝ったってことはショウキたちも撤退したんだろうな。ショウキとの戦闘を思い出した俺はもう一つ気になることも思い出したため、ルリナに聞いてみた。


「あのさルリナ。剣を持った男を知らないか?俺その人に助けられたんだ」


 そうだ。俺はショウキと戦って相打ちになった。そして他の勇者が援軍に来てゴロウに殺されかけたところをある男に助けられたんだ。


「その人なら知ってるわ。サルナ王国の五英傑よ」


 急によく分からないことを言ったルリナ。五英傑?魔女の国にそんな存在はいない。いや待てよ、サルナ王国って言ったな。確かサルナ王国といえば帝国とずっと争ってる国のはずだ。


「なんでそんな人が…?」


「女王陛下が前もって同盟を結んでいたみたい」


 いつの間にそんなことになっていたんだ。

 その後もルリナから事のあらましを聞いた。


 エイジという名の五英傑が俺を助け、敵勇者を追い詰めるも鮮血の魔女セリヌと交戦中だった帝国騎士団長ガルダが彼女の猛攻を掻い(くぐ)り勇者達を連れて撤退したらしい。


 そしてその後帝国が有していた”落罪(らくざい)”という兵器が放たれた。大きな隕石のような光の塊が落ちてくるという兵器らしく、全滅は避けられないと兵士達は戦々恐々としていた。

 しかし女王陛下と俺を助けてくれたエイジという男がこれを退けたらしい。

 女王って強かったんだな。聞くところによるとこの国でトップクラスの実力者らしいし。


 その光景を見た帝国軍は撤退を始め、俺たちは何とか彼らの侵攻を阻止したのだ。



「一週間後にサルナ王国も交えた会談を行うらしいわ。今いる七紋家も集めてね。だから護衛としてあんたも行くからちゃんとしなさいよ」


「ああ、わかったよ」



 そしてルリナが部屋を出たのと入れ替わるようにして執事のベンさんがスープを持って俺の部屋へやって来た。

 ベッドの横にあった小さな机の上にスープを置いてくれた。


「あ、ありがとうございます」


 この人とはまだほとんど喋ったことがないから緊張してしまう。長い髪をオールバックで後ろに一つで結び、体型はムキムキな筋骨隆々。見かけからして威圧感が凄いんだよな。


 ベンさんはスープは置いてそのまま扉の方へ行きドアノブに手をかけたところで口を開いた。


「ゆっくり休め坊主。お前には主を助けて貰ったし、これから俺とお前は同僚だ。硬くなる必要はない」


 そう言ってベンさんは部屋を出て行った。


「めっちゃ良い人じゃん」


 一人で思わず口に出してしまった。

 

  ――――――――――――――――――――――


 俺が目を覚ましてから四日が経ち、俺はようやく外出の許可ぎ降りた。

 昨日はエイナさんと会い軽く話をした。


「目が覚めて良かったわ坊や」


「エイナさんも無事で良かったです」


 その時のエイナさんは屋敷の書斎で何やら書類の山と戦っていたが、俺が来ると書斎の机から離れてその部屋に一緒にあった二つの高級感のある椅子に手招きした。そしてお茶を飲みながらルリナと似たような話を聞かされた。


「あの、エイナさんは何代目の銀の魔女なんですか?」


 俺はエイナさんとの話に区切りがついた後、気になっていたことを聞こうと思っていた。


「私は今で四代目になるわ。後継はルリナだけどまだあの子に任せられないわね」


「そうなんですね」


「どうして急に?」


 俺が聞いたことに疑問を感じたのかエイナさんが聞いてきた。


「実は俺が眠ってた時に変な夢みたいなものを見たんですよ」


「夢?」


 エイナさんは俺の話を聞きながら空になったカップにお茶を注ぐ。


「はい。初代銀の魔女って人が俺の前に現れて俺を罰しに来たと…」


「初代…銀の魔女?」


 目を大きく開き体が固まってしまったのか、ポットを傾けたままなのでカップからはお茶が溢れていた。


「あの…エイナさん。カップが溢れてますけど…」


 エイナさんのこんな様子初めて見る。酷く動揺していた。


「…初代様の名前は?」


「アリアと言ってました…」


 エイナさんが纏う雰囲気が表情を変えていた。いつもの優しく妖美なものではなく、何かを見極めようとした険しい雰囲気を感じた。


「坊や…、銀の魔法を使ったのかしら?」


「ええと、はい…。あれを使えばなんとかなると思って」


 俺への尋問は更に続いた。


「ルリナに教えてもらったの?」


「いえ、見よう見まねでやりました」


「っ!?見よう見まねで出来るような魔法ではないのだけれど…」


 訝しむようにして俺を見るエイナさんに俺はあの時の状況を説明した。銀の魔薬を飲んだ時に絶咸淙(たつみなそう)の能力が変わったこと。

 絶咸淙を使って銀の魔法をイメージして発動したら出来たこと。


「はぁ…、そういうことね。じゃあ初代様も出てくるのも納得だわ。見たところ罰が下された様子もないし…、お許しが出たのね」


「まあなんか資格はあるとは言われました」


 エイナさんは納得した様子だったが一応もう一つ補足を入れておく。反応を見たあたり俺は結構まずいことをしてしまったみたいだしな。


「それじゃあ坊やにも今度、銀の魔法を教えましょう。もうこの家の家臣でもあるからね」


 こうして俺は正式に銀の魔法を教えてもらえることになった。


読んでいただきありがとうございます。

感想やレビュー、ポイント評価などぜひぜひお願いします。


次回の更新は明日、もしくは明後日になります。

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