30話 ディラー平原の戦い その7
30話突破しました!
誤字脱字があれば教えていただけると嬉しいです。
「聖光の嵐!」
「銀の斬撃!」
二つの技が真っ向からぶつかり砂塵が舞い上がる。力は拮抗し、互いの技が俺とショウキに届くことはなく消滅した。
「う、嘘だ…」
その現実をショウキは信じられないでいた。
「"英雄化"の状態だぞ?生半可な力じゃない。ステータスも跳ね上がってる。なのに…」
俺の仮説は正しかった。そして"英雄化"の状態であるショウキの一撃と互角に渡り合えるほどの魔力。一体どれほどの生命力を俺から持っていったんだろうか。この妖刀には貯蓄機能もあるらしく、きっと俺の今までの生命力を蓄えていたんだろう。
「…随分と魔女に気に入られてるんだな」
ショウキが俺を鋭い視線で睨みつける。
「さっきの魔法、あの銀の魔女と同じだった。俺たち勇者の情報を売って手に入れた力なんだろ?」
こいつはどこまでも俺を悪役にしたいらしい。確かに俺は勇者の情報を売って信用を得た。だがこの力はそれだけのものじゃない。エイナさんやルリナの善意、剣の腕もゼイド教官から貰ったものだ。
「そうじゃない…、なんて言ってもお前は信じないだろ?」
「ああ、そうだろうな…」
無意味なやりとりのあと、ショウキは再び剣を掲げる。
「今ある俺の全力をぶつけるッ」
聖剣アスカロンが煌めき、光の粒子を吸収し眩く美しい刀身が発光した。
「全魔力解放…、火力付加」
ショウキを中心に光の輪が出現し風が円を描くように激しく舞う。
「聖天英断!」
燃え盛る炎のような光が刀身を纏い、その光は刀身の延長線上にまで伸びて擬似的に剣の長さが伸びた。
その清らかな光の剣は恐ろしいほどの火力を俺へ浴びせた。
真っ直ぐ上から振り下ろされた聖剣からは俺を完全にこの世から滅しそうな、そんな圧力を感じた。
宣言通りの全力。"英雄化"の状態に膨大な魔力、きっと避けれたとしても半径十メールくらいのクレーターが出来るだろう。
回避は意味がない。そもそも避けれそうにもないんだけどな。
ショウキの剣が光り出してから俺も魔力を練っていた。
俺が使えそうな銀の魔法はさっき見た斬撃の魔法ともう一つ…。
腰を落とし、刀を肩の位置まで持ってくる。相手を貫く突きの構えだ。
そして俺はルリナと模擬戦した日のことを思い出す。俺へのとどめとして刺したあの魔法、あれはさっきの斬撃なんかよりももっと威力があった。
イメージを頭で起こし、それが具現化するように刀身に銀色の輪っかが三つ出現する。
目前に迫った光の攻撃に向けて俺は刀を前に突き出した。
「銀の破弾!」
振り下ろされた光の剣に俺の刀が触れた瞬間、銀の輪っかに衝撃が生まれて柄の方から切っ先の方に向かって三つの輪っかが重なる。それは途轍もない威力となって光の剣に衝突した。
大爆発が俺とショウキを一瞬で包み込んだ。
「はぁ…はぁ…、クソッ」
ショウキは左肩を押さえて荒い呼吸をしおり、よく見ると肩からは血が流れて片膝を地面に着けていた。
俺の放った魔法は流石のあいつも堪えたようだ。
俺は地面に倒れたいる。ショウキの攻撃は正真正銘の全魔力が込められていたんだろう。銀の魔法を放ったとはいえ、ダメージを殺すなんて出来ない。
もう体も動きそうになかった。
それと慣れ親しんだ感覚がやってきはじめた。
体が焼けるように熱くなる。特にのどは水分が蒸発し、手足は麻痺しはじめた。
(時間切れか…)
ここで俺のタイムリミットがきた。
「…流石に、もう動けないか。なら俺が今からとどめを刺す」
ゆっくりとショウキが立ち上がると、ショウキの背後から淡い青色の光が出現した。
「大丈夫ッ、ショウキくん!」
そこから現れたのは俺のクラスメイトで片隅にいた俺にも声をかけてくれたリカだった。
「リカッ、どうしてここに…?」
「大っきな光が見えて、ショウキが危ないかもしれないと思って…。とにかく治療するね」
少しおどおどしながら彼女はショウキに回復魔法をかける。
「ハイヒール」
上級回復魔法をショウキにかけて、俺がつけた怪我もみるみる治っていく。
そして治療を終えたリカが俺の方を向き、互いに視線が交錯した。
「ありがとうリカ。おかげでなおっ…」
「ねぇ…、あそこにいるのってカナタくん?」
きっとショウキも俺と同じように感じたのだろう。喜んだ笑みが一瞬で曇った。彼女から感じていた優しさのオーラ突然ガラッと変わり、冷たい何かになってた。
「そう、だけど…」
戸惑い感じつつもショウキはリカの疑問に答える。
「なら、カナタくんも連れて行こうよ」
「な、何言ってんだよリカ!」
リカの突然の提案を慌てて否定するショウキ。
「捕虜として捕らえていた方が色々と都合が良くなると思うの」
「だからって!俺は…、俺は反対だ!こいつが勝手なことをしたんだッ。なら、罪を償う必要があるはずだ!」
リカから冷気を感じるほど冷えた瞳がショウキを射抜く。顔は笑っていた。しかしその笑みから感じられるものは本来のものと真逆の位置してる。
「それならさ、生きたまま罪を償ってもらおうよ。それで解決でしょ?」
執拗なまでに俺を連れて行こうとする彼女に俺は引っかかりを覚えた。クラスを裏切ったような俺に対していくらなんでも拘り過ぎている。リーダーであるショウキと意見がぶつかっている。
「リカ、お前…」
ショウキが何かを言いかけた時、また背後からさっき見た光が現れる。そこから勇者であるクラスメイト達の何人かがやって来た。
弓矢を手に持つゴロウと細剣を持つアイに片手剣を持ったリナだった。彼らは勇者組の前衛部隊にいたメンバーだ。
「大丈夫かショウキッ!」
「リカ!先走りはやめてよね!何かあったらどうするのよッ」
三人は心配そうな面持ちで二人に駆け寄る。
「ご、ごめんね」
「何もないならいいのよ…。ちょっと、あそこに倒れているのってカナタ⁈」
驚愕する三人にショウキは俺と戦ったことを伝えた。
「そうか…、感謝するぜショウキ。これで動けないあいつをよーく狙える」
ゴロウのスキルは"弓の長者"。これは弓矢の達人というスキルだ。あいつは弓を手に持った瞬間、どうすればよく飛ぶのか、力加減に照準、弓矢におけるあらゆる行動が手に取るように分かるらしい。
ゲームでいえば、初めてやったゲームで運営からのボーナスなんかで一気にレベルが1から100まで上がるような現象だ。
ショウキやケイタは地道にコツコツと覚えていく過程をあいつはすっ飛ばしている。ショウキに関していえば剣術スキルすら持っていない様子だしな。
白亜の弓を構えて弦を引っ張り矢を引き絞る。
照準を倒れているカナタに合わせた。
「待ってッ!ゴロウくん、カナタくんは連れて行きましょ!」
ショウキと同じようにリカはゴロウに願うように攻撃をやめさせようとした。
「リカちゃん、会議の時に言ってたあれ…、まだ言ってるのか?」
学校のアイドルだったリカに対してゴロウは呆れた怒りの篭った視線を送った。
それにリカも思わず萎縮してしまう。
「ショウキが言ってただろ?あいつが逃げたせいで段々みんなの中であった不安が爆発した。そのスイッチの引き金になったんだよあいつはッ!この前もさ、サヤカが泣いてただろ?八つ当たりだといわれても…、俺はッ!」
サヤカ、確かゴロウと恋人関係にあった女生徒だ。
弦を引っ張り構える矢が光り出す。
「だから俺は、皇帝からお前を殺せる武器を貰った。聖弓ミストルティン…。不死の化け物すら殺せる弓だ。カナタ、お前には打って付けだろ?」
「待って!」
「聖光の一矢!」
リカの制止の声も届かず、怒りの矢は真っ直ぐに俺へ向かってくる。
俺に避ける力なんてなく、ただ矢を受けるのを無力に待つだけだった。
こいつらと関わっても理不尽なことしかない。サンドバッグにされて、その上それから逃げたことでさえ怒りを向ける。そして同郷の人間にすら殺意の刃を振り下ろす。
環境がゴロッと変わり、分からないことだらけで十代の子供が戦場に放り込まれたら、こうまで変わるものなのだろうか。
最後の最後でつまらない思考をしながら、俺の中に悔しさと申し訳なさが込み上がる。
「クソッ……」
そして遂に放たれた光の矢が届いたその瞬間、俺の目の前に一人の人間が突然現れた。
男だ。二十代くらいの若い男が一本の剣を片手に俺の目の前に立っている。
男は剣を上段から振り下ろし光の矢を地面に叩きつけた。
「大丈夫か?後輩ッ!」
初対面だというのに男の背中はなんとも頼もしく感じられた。爽やかな笑顔が眩しく、暗く沈んだ気持ちが照らされた気がした。
「ッ⁈あんた、誰だよ!」
ゴロウが鋭く睨みつけ怒声で男に問い掛かる。
この場の誰も知らない男は剣を地面に突き刺して声高らかに叫んだ。
「俺はサルナ王国の五英傑が一人ッ!名前はエイジだ!ラーグナー王国と同盟を結び救援に駆けつけたッ!」
フォルネ帝国と長く対立していた大国であるサルナ王国からの救援だと男は言った。
読んでいただきありがとうございます!
気になった方や面白いと思った方は感想やレビュー、ブックマーク登録やポイント評価など下の方にあるのでぜひぜひお願いします。とても大きいのでしていただけると助かります。
作者の励みになります!
次回の更新もなるべく早くにいたします。
応援のほどよろしくお願いします。




