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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
一章 帝国の勇者と魔女の勇者
33/60

29話 ディラー平原の戦い その6

30話まで目前です!

この調子で頑張ります。

 なんとかギリギリ間に合った。俺は心でそう思っていた。だけど何も間に合ってなんていなかった。ゼイド教官にエイナさんは血を流して倒れていて、ルリナは今にも斬り殺されかけていた。


 今の俺は銀の魔薬を二本飲んだ状態になっていた。一度に二本だ。これは初めての試みだ。だが気分が少し悪い程度でこれといった異常は今はない。


「お前ッ…、ケイタはどうした?」


 剣に力を入れて押し込むショウキの顔は怒りに染まっていた。


「あいつなら今も気持ちよく伸びてるよ」


俺がそう言うとショウキは下唇を噛み締めて、


「…どうせ卑怯な手でも使ったんだろ!」


 ショウキを中心にして衝撃波が生じる。


「くッ!」


 俺とルリナは吹き飛ばされて地面を転がる。


「ルリナッ!お前は今すぐエイナさんとゼイド教官をティナの所へ連れて行け!」


 二人にまだ息があればティナの治癒魔法で助かるかもしれない。二人がやられてから時間もそんなに経ってないし、可能性は十分にある。


「じゃ、じゃああんたは…」


「あの時言っただろ。()()()くらいは出来る。俺が時間を稼ぐから急げ!」


 ルリナは戸惑うが「わかった…」と言って承諾した。


 まずは二人を連れて行くための隙を作る必要がある。ショウキが斬りかかってくれるのが一番ありがたいが…


聖光の一線(ホーリーライン)!」


 そんなことにはならず、あいつから極太の光線が飛んで来た。ていうかあいつ魔法も習得したのかよ。この威力、まともに食らえば致命傷だ。


 しかし俺の後ろにはルリナがいた。避けるという選択肢はない。

 今も俺の生命力という餌を食いまくっている妖刀"絶咸淙(たつみなそう)

 そいつに与えていた生命力を魔力に変換し、俺の適性属性である闇の魔力を展開する。


 相性は最悪だが、これしか手がない。


 俺は刀を構えてその光線を縦に斬るようにして振り下ろす。


「ブラックホール!」


 魔力を持つものを吸い込む闇属性中級防御魔法だ。

 王宮にいた時は技名だとか厨二臭くて恥ずかしいと思っていたのにな。なんて少し昔のことが頭を一瞬よぎり、光線と俺の妖刀が衝突する。

 光線は刀に吸い込まれるのを無視して真っ直ぐ突っ切って来る。


 馬鹿みたいな威力だ。魔薬を二本同時に飲んだ状態の俺がジリジリと後ろへ押されていた。

 背後に視線をやるとそこにルリナはもういなかった。光線の射線上からは外れていた。


 俺そこで安心してしまい、光線の力に押し負けた。腹を貫いて、光線は彼方へと消えて行く。


 しかし数秒で俺の腹に空いた穴は塞がった。おそらく強化状態にあるからだろう。


「やっぱり普通の魔法じゃダメか」


 ショウキは再生した俺を見てそう呟き、聖剣を構える。


「覚悟はいいか、カナタ?俺はお前が勝手にやったことを許さない!」


 純粋な怒りを露わにしたショウキの矛先が俺に向けられる。

 ルリナはまだ二人を回収できていない。ここで俺は時間を稼ぐことにした。


「なぁショウキ。何でそうも俺を許さないんだ?団体行動なんて誰が決めた?」


 挑発気味に俺はショウキへ疑問をぶつける。


「お前が…、王宮から出て行った後、その日に戦争があることも知らされたのも知ってるだろ?それもあって数人クラスからお前のように王宮から出て行こうとした奴がいた。そんな奴を見て恐怖に震える女子もいた。きっかけは全部お前だッ!」


 俺が逃げた後のクラスは少々荒れていた様子だったらしい。だが今重要なことではない。


「じゃあ、俺がサンドバッグにされたことについてはどうなんだ?」


「そ、それは…」


 ショウキは言い(よど)み弱気を見せる。


「お前はそこまでクラスのことを考える奴じゃない。良くて体育祭とかでクラスをまとめて、終われば放置って感じだったろ」


 そう、日本にいた時のショウキはクラスのことを第一にって感じの奴じゃない。大事ではあるが、優先ではないと考える奴だ。


「…体育祭なんかと比べられる事態じゃないだろ」


「そうだな…。ここじゃ自分達の行動ひとつひとつに責任が付いて回る。今のお前みたいにな」


「ッ⁈」


 図星を突かれたようにたじろぐショウキ。俺は憶測も混ぜてこいつの中にある俺への怒りの根底へ潜る。


「皇帝の話を承諾したお前は俺が逃げ出した日から責任感や罪悪感を感じていたんだろ?」


「黙れよ…」


「見知らぬ場所でも上手くいっていたはずの時間にひびが入り始めて怖かったんだろ?俺のサンドバッグだって強くなるためっていうのは口実で俺に当たって不安を紛らわせてただけで……」


「黙れッ―!!」


 ショウキの聖剣が光を纏い刀身が伸びて幅も広がり、巨大な大剣になる。そしてそれを難なく振り下ろした。


 だが大きな攻撃だったため強化状態の俺なら余裕で回避ができた。


「図星だろ?ショウキ、勇者組のリーダーさんよ…。俺はお前が感じるそんな責任感や罪悪感に含まれてるのか?」


「もう喋るな!カナタッ…、俺はお前を殺せる。どうせ髪の色が変わった程度の強さだろ?お前じゃ俺を殺せない」


 怒り心頭のショウキは自分の醜い部分を引き出されかけて、冷静とはいえないほどの状態だった。


「悪いけど死なないのが俺のアイデンティティなんだ。来いよ勇者様、俺を本当に()れるか見てやるよ」


 時間は稼ぐことができ、ルリナはほうきに乗って二人を連れてここから離れて行く。

 空中でルリナは振り返って一つの魔法を放った。


銀の斬撃(シルバースラッシュ)!」


 銀色の大きな斬撃が飛んで来る。斬撃はショウキに向かって行くがショウキは聖剣を振ってその斬撃を打ち落とす。


 きっとあれは援護というより激励に近いものだったと俺は感じた。そしてルリナはもう一度前を向いてここから立ち去った。


「魔女を逃がすのは惜しいが、お前が先だ!」


「来いッ」


 俺は溢れ出る魔力を体に纏い、妖刀"絶咸淙(たつみなそう)を構える。そしてショウキも聖剣アスカロンを構えた。


 ショウキが突っ込みと同時に俺も突っ込む。互いの剣がぶつかり火花が散る。俺はそこから一旦一歩下がるとショウキは間合いを詰めてきた。横からの一閃を俺は刀を刃先が地面に向くよう縦に真っ直ぐ構えて防ぐ。


 受け止めた剣を押し返して俺も上段から斬りかかる。しかしすぐさまショウキは剣を頭上で水平に構えて俺の一撃を受け止める。


 そこからいくつもの剣戟が平原に響いた。


 ショウキの剣の腕は確かで俺の体には治らない傷が増えていく。聖剣アスカロンの力によって俺の再生能力はほぼない状態だった。


 だが俺も強化状態にある。ショウキの頰や腕なんかには俺がつけた傷があった。


「ここまでやるとは思わなかったよ。どうやってそこまで強くなったんだ?」


「別に、ただのドーピングだよ」


「薬頼りか…。やっぱり足手まといは変わらないんだな」


「ほっとけッ」


 ショウキは魔力を練り上げ始める。

 それは大きな攻撃の予兆を表していた。


 それに対抗して俺も刀に魔力を注ぐ。生命力を変換した魔力も合わさって相当な量の魔力となった時、刀身が銀色に輝いていた。

 それを見て俺はおかしいと感じた。この感覚は闇のような黒い影が刀身から出てくるような感じなのになぜか刀身が光っている。闇属性…のはずだがどう見てもそうとは思えなかった。


(もしかして、これは…)


 そして俺は一つの仮説を立てた。


「カナタ、本気でいくぞ」


 考えていた間に聖剣アスカロンが光り輝く。単に眩しいものではなく、澄んだ白く清らかな光だ。すると光に包まれた聖剣は神秘的な雰囲気を纏った。


聖光の嵐(ホーリーバアル)!」


 荒れ狂った光が竜巻のようになり、神々しい聖なる一撃が俺を飲み込もうとしていた。


 それに対して俺はその場から動かない。一つの仮説を確かめるため、そして俺自身がもう逃げないために。


 先ほど見た魔法をイメージしながらその場で俺は上から下へ縦に空を斬る。


銀の斬撃(シルバースラッシュ)


 俺の仮説、それは俺の生命力を吸収した絶咸淙(たつみなそう)は銀の魔薬で増幅した分も吸収している。刀は俺を通して銀の魔薬を吸収したことになる。それはインヴィディア家が持つ銀の魔力を俺は擬似的に持っている状態といってもいい。

 強化状態中の俺は適性属性が変わり、闇から銀になっている。つまり銀の魔法を使うことが出来ると考えた。


 俺の仮説を証明するようにさっきルリナがショウキに使った銀色の大きな斬撃が光の嵐と真っ向からぶつかる。





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