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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
一章 帝国の勇者と魔女の勇者
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27話 ディラー平原の戦い その4

誤字脱字があれば教えていただけると嬉しいです

 女王はディラー平原のある丘の上で戦場を見渡していた。横には彼女を守る近衛騎士隊長のラグルドがいる。

 そこへ一人の伝令兵がやって来る。

 伝令兵は女王の前で跪き報告をした。


「報告しますッ!現在西方にて銀の魔女軍と勇者一名を入れた敵部隊が激突。こちらが優勢にあります!続いて東方で敵の精鋭部隊と鮮血の魔女軍が戦闘をしていますが勝利は確実かと」


「そうか。報告ご苦労」


 伝令兵が下がると、女王は次の流れに思考する。


「そろそろ…来る頃合いだろう」


 ここまではほぼ読み通りの展開になっている。女王の中で帝国の次なる一手がはっきりしていた。それを証明するかのように魔の樹海から赤い信号弾が打ち上げられた。


 ―――――――――――――――――――――


 魔の樹海にて、爆弾による撹乱と魔獣の操作による後方からの奇襲。帝国の作戦、その肝になる斥候部隊は現在、壊滅寸前まで追い詰められていた。


「もう残ってるのはあなた達三人だけね。このまま捕まってくれないかしら?」


 そこにいるのは帝国の勇者であるスキル"爆弾魔"を持つガロウとスキル"傀儡士"を持つアカリ、スキル"模倣士"を持つユキナだ。

 そして彼らを取り囲むように多くの魔女が包囲していた。斥候部隊の他のメンバーは皆彼女たちにやられた。作戦に移ろうとしたところで奇襲を受けるという完全な待ち伏せだ。

 この場にいる魔女達は皆、冒険者などの稼業を主にしている魔女で、そして地の利はこちらにある場所で戦うなど朝飯前といったところだろう。


「悪いが捕虜になる気はないな」


 不敵に笑い、言い返すガロウ。

 しかしそれが虚勢だというのはこの場の全員が分かっている。勇者といえど、彼らはこの戦争が初陣だ。そして平和な世の中からやってきたとなれば肩書きと力を持ったただの子供というだけなのだ。


「二人とも、俺が囮になるから…」


 ガロウの肩に手を乗せて言葉を遮ったのはユキナだった。


「いい、私が残る。だから二人は行って…」


一拍の間を置いたあと、


「…何言ってんだよ!ここで俺が囮になるのが最善だ!お前は"模倣(コピー)"して魔獣を操らなくちゃいけないだろ!」


 ガロウはユキナの提案を跳ね除ける。こんな絶望的な状況でしかも女の子を残していくなんてできるはずがなかった。


「アカリが居れば大丈夫。数は減るけど、私達の目的はあくまでも()()でしょ?」


 優しく微笑を浮かべて、ユキナはガロウとアカリを安心させようとする。そして彼女の言葉は二人もすぐに理解できた。


「いやよ、ユキナ…」


 アカリの瞳が段々と潤んでいく。彼女にとってユキナは親友といっていいほど仲が良い。


「ごめんね、アカリ…。今生きてここから逃げる為に、だから…」


「それならわ、私も…」


 アカリが何かを言いかけた時、赤い軌跡を上へと残していきながら上空で光る玉が打ち上がった。


「信号弾も打ったし、そろそろ良いかしら、勇者様?」


 一人の杖を持った魔女が魔法を発動しようとする。


「行ってッ!! 二人ともッ!」


 声を張り上げて、ユキナは魔女が魔法を発動する前に二人が逃げる時間を稼ぐ。


煙幕弾(スモークボム)!!」


 ユキナはポーチから回復ポーションを地面へ叩きつけてスキルを発動した。

 この技はスキル"爆弾魔"が使える煙幕を張る技だ。目眩しには最適の技で、ポーションを煙幕弾に変えた。ユキナのスキル"模倣士"はコピーしたいスキルや技、魔法を持つ人物に触れることで、一定時間だけコピー出来る。

 このスキルが使えるのもさっきガロウに触れたからだ。


「お願いッ!早くッ!!」


 彼女の懇願にガロウは応えてしまう。


「ちくしょッ!!」


 ガロウはアカリを肩に担ぎ、樹海を抜けるため駆け出した。


「離してッ!ユキナがッ!」


「すまねぇ…、ホントに、すまねぇ…」


 唇を噛み締め、その力に血が流れる。

 ユキナがあの提案をしてきた時、ガロウは内心ではホッとした瞬間があった。時間稼ぎを申し出てくれたことに安堵したのだ。自分ではなく、他の誰かがやってくれると…。


「何が…、囮になるだよ…。俺は勇者って言われて、酔ってたんだ…。結局…、自分が一番かわいいんだ…」


 人は窮地に追い込まれると自分可愛さに平気で人を売る。そんな話をよく耳にしたことがあるガロウは、そのことの意味を初めて理解した。


 後方ではユキナが手当たり次第に爆弾を爆発させていた。

 その爆音は二人が樹海を抜ける寸前で、途絶え、決死の覚悟をした少女の音が耳に入ってくることはなくなった。


  ――――――――――――――――――――――


 やけに鳴り響いた爆音で目を覚ました男が起き上がる。

 男はボロボロで胸に斬りつけられた傷は血が止まっているだけで治ってはいなかった。


「クソッ…、一体どれくらい経った?」


 頭を左右に振り、意識をしっかりと覚醒させる。空を見上げて眩しく照らす太陽を見る。太陽の位置から考えて今は正午を過ぎていた。


「とにかく、急がねえと」


 ショウキに一度敗れ、ケイタとはほぼ引き分けたカナタは西に向かって走り出す。彼の主人のもとへ…



  ―――――――――――――――――――――


 女王のいる本部から西方面にて、銀の魔女率いる軍隊は帝国第一部隊と交戦していた。


「くたばれ帝国兵ッ!!」


「魔女の騎士風情がッ!!」


 激戦の中、銀の魔女軍が優勢に傾いていた。


 インヴィディア家現当主、エイナとその娘ルリナ。そしてカナタの教官ことゼイドを隊長として率いる魔女軍第二部隊がいるからだ。


 帝国第一部隊は細剣(レイピア)を扱う勇者アイが救援へ駆けつけるも、状況が好転することはなく防戦を強いられていた。


 エイナは魔法陣を展開し、攻撃を仕掛ける。

 その魔法は両軍が衝突した開戦と同時に放たれた魔法だった。


 それを見た帝国第一部隊隊長ニギルは部隊に大きな声で命令した。


「全員、盾を構えろーッ!!」


 そしてエイナが魔法を発動した。


銀の屑(シルバーダスト)


 広範囲に渡って銀色の雨が降る。いや、雨のように銀で出来た鉄屑が空から降り注がれる。それは重力に従い真っ直ぐ降る。銀の鉄屑は地面を抉るように穿つ。


 一度目はこれに多くの兵が散っていった。その兵の多くは盾を持っていない魔導士たちだった。彼らの魔法障壁を紙切れのように破った高威力の広範囲魔法。


 流石は七紋家の一角というべき力だった。


 盾を構えるがそれでも防ぎきれるか分からない。激しい無数の鉄屑に、苦悶の表情を見せていた帝国兵たち。


 しかし、しばらく降った鉄屑は突然弾け散っていった。


 誰もが困惑した。当然これはエイナの仕業ではない。明らかに何者かによる妨害だった。


 その何者かは東から悠々と歩いてきた。その男は銀色に輝く鎧にその片手には誰もが知る剣を握っていた。


「ニギルさん!大丈夫ですか?」


 援軍に駆けつけたのはたった一人。しかしそれは一騎当千と謳われる力を持った男。


 聖剣アスカロンを持ったショウキだった。



読んでいただきありがとうございます!

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