25話 ディラー平原の戦い その2
誤字脱字があれば教えていただけると嬉しいです。
振り向くとそこにいたのは今では懐かしく思えた顔だった。
「ショウキ……」
俺をサンドバッグにした張本人といってもいい。
それは他のクラスメイトもそうだったが…
「その腕章……やっぱりお前は魔女の国に取り入ったんだなッ!」
険しい顔で俺への敵意を剥き出しにする。その視線の先にあるのは俺の腕にあるインヴィディア家の腕章だった。
「そりゃあそうだろ。お前たちから逃げるためだったんだ」
「そのためだけに元の世界の……同じクラスの奴らの情報を売ったんだろッ!」
「ああ、話したよ。それが、俺が魔女側に信用してもらう為の証だったからだ」
「お前はッ…!!」
激しい怒りを露わにしショウキはその手に持つ一級品の剣の切っ先を俺に向けた。
「どこまで自分勝手になれるんだッ!!」
そして俺へと向けて真っ直ぐに突撃する。
ショウキの速さは目で捉えることもままならないほど、訓練では見ることのなかった速度を出していた。
「ぐっ!!」
ショウキの剣が腹筋辺りを突き刺す。刃は貫通して、俺は致命傷を受けてしまった。
そしてショウキは剣が俺に刺さったままの状態から剣を引き抜くと同時に、俺を足で押し出すように後方へ吹き飛ばす。
大きな岩へ衝突し体中の空気が一気に吐き出される。
強い……ショウキは俺が居なくなったあの二週間で一体どこまで……
それにこいつはまだ"英雄化"を使っていない。素のステータスだけで俺を圧倒し過ぎている。俺との模擬戦ではここまで圧倒的なことはなかった。
何より、たったのあの一撃、間合いを詰めて斬る。たったこれだけで俺の心が負けを認めていた。
「どうした? 俺はまだ全く本気を出していないぞ。やっぱりお前は落ちこぼれで、足手まといだったんだ。そんな奴がクラスの輪を乱すなよ……」
こいつ、何言ってんだ? ショウキは周りに対してよく気を配るのは学校で見ていれば分かる。しかしここまで集団意識のある奴じゃない。
「……ショウ、キ。お前っ……」
「俺は、上手くまとめていたはずだ……それなのにッ!!」
ショウキは動けない俺の胸ぐらを掴みボールのように地面へ投げつける。地面にぶつかった衝撃で俺の体で嫌な音が響いた。
よく聞いた骨折の音だ。
それよりも……
(はぁ…はぁ…、何でだ?傷が、治らない)
そう、ショウキに受けた穴が塞がらないのだ。
「不思議そうな顔をしてるなカナタ」
横たわる俺にショウキは自慢げに手に持つ剣を俺に見せつける。太陽の光に反射して刀身は光り輝く。
「これは聖剣"アスカロン"お前を追い詰められる数少ない武器だ」
「せ、聖剣…?」
「ああ、これは聖属性との相性が良くてな。お前の不死性を超える浄化の力がある。それにこれは俺のステータスを上げたり、アスカロンを使って発動する特殊魔法なんかも使える」
それってチート武器じゃねえか!
「…チートにも、限度が…ある、だろ…」
途切れそうになる意識の中、ショウキが俺に歩みよろうとするが…
「待て!ショウキ!」
ショウキの後ろから一人の槍を持った男が駆け寄る。
あいつは確か…多村 圭太か?
ケイタはショウキの肩を掴み、俺への歩みを止めた。
「何だ、ケイタ?俺は今こいつを…」
「カナタのことは俺に任しとけ。ここまでお前が弱めたわけだし、俺でもこいつよりは遥かに強い自信がある。前から余り強さも変わってないみたいだしな」
意識は朦朧としているがちゃんと聞こえた。こいつは絶対一発殴る。
「今も後も変わらないだろ」
ショウキはどうしても自分の手で俺を殺したいのか、ケイタの制止を振り切ろうとする。
「あっちでアイと第一部隊が銀の魔女軍と交戦してるけど、どうも押されてるらしい。俺がこいつを縛っておくからお前は援軍に向かってくれ」
仲間がピンチとあってはショウキが駆けつけない訳にはいかない。ショウキはケイタの話を聞き入れた。
「…分かったッ。あとを頼む、俺は援軍にむかうよ」
「ああ、任しとけ」
そしてショウキは援軍としてルリナのいる方へと向かっていった。
(ま、まずい…!)
銀の魔女軍ってエイナさんやルリナがいる軍勢だ。そこへショウキが向かえば最悪、二人は……
考えたくない予想が頭の中を駆け回る。ショウキは俺のことを相当怒っている。もしかしたら俺があいつらを憎んでいるように、あいつも俺のことを憎んでいるのかもしれない。
もしかしたらショウキは…、ルリナたちを殺すかもしれない!
「じゃあこのまま拘束させてもらうぜカナタ…。お前の受けた仕打ちは同情するけど、それだけだ」
ケイタは小袋から縄を取り出して俺の両手首でぐるぐると巻く。
「よし。これで動けな…」
俺はすぐさま縄を解いて手元に落ちていた"絶咸淙を振り抜く。
しかし流石は勇者前衛組。ケイタはギリギリのところで反応してそれを避ける。しかし太ももが僅かに切られていた。
「どうやって縄を…」
驚くケイタは臨戦態勢に入る。
俺がサンドバックにされて編み出した努力の結晶であるスキル"縄抜け"によって俺は縄を解いたのだ。
そして俺は最悪の事態を防ぐため目の前の旧友の一人と対峙する。
「そこを…通してもらうぞケイタ…」
傷はまだ塞がらない。素のステータスでは俺に勝ち目はない。そう思い、俺は腰に巻いていたポシェットから小瓶を取り出す。
「調子に乗るなよ、カナタ!」
槍を構えてケイタは魔力を練り上げる。
その間に俺も小瓶の蓋を開けて一気に口へ流す。
「ポーションを飲んで回復したところで、俺に勝てるかよッ!!」
ケイタは地面を蹴り、鋭い槍を俺へ向けて突進する。
「食らえッ!"迅雷槍"」
雷を纏った一本の槍が尋常ではない速さで駆け抜ける。
しかしその攻撃は俺の体へは届かなかった。
「なッ⁈」
止められると思ってもみなかったケイタは驚愕の色で顔を塗る。槍は俺の刀で受け止められていた。
俺が飲んだ銀の魔薬による強制強化。俺の体は多大な魔力を纏い、髪は銀色へと変化する。
「何だよそれッ!」
ケイタは一度俺から距離を取る。
絶咸淙は強化状態の俺から通常よりも多くの生命力を奪っていく。まるでこいつから意思のようなものを感じた。だが不思議と脱力感が少なかった。強化状態中は生命力も高まっているのかもしれない。
「時間がないからな。いくぞッ!」
ショウキを追いかけるため、俺はケイタにへとその矛先を向けた。
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