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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
一章 帝国の勇者と魔女の勇者
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24話 ディラー平原の戦い その1

誤字脱字があるかもしれません。

 一陣の風が吹き、紋様の刺繍が入った旗が少し激しくなびく。


 俺の周りは鎧に身を包んだ屈強な男達ともうすっかり見慣れた服装をした女性達が集まっていた。

 俺が今いるのはディラー平原と呼ばれる魔の樹海から少し離れた位置にある何も無いただ広いだけの平原だ。

 その平原にある一つの丘に俺は今いる。辺りは白いテントがいくつも設営されており、頻繁に人が出入りしていた。

 そこで俺を見つけたルリナが近付いてくる。


「あら、意外に落ち着いているのね」


「俺の手、触ってみるか?」


 ルリナは俺が差し出した手を何となく俺の手を触ったあと、


「…最低」


 そう言ってどこかへ行ってしまった。


 顔こそ普段通りにしているが俺は今緊張という緊張で心臓が爆発しそうだった。女王と会った時より以上だ。

 そのせいで俺の手は今びっくりするぐらいベトベトの汗をかいていた。そんな手で女の子であるルリナに触ればあの反応は当然だろう。ちょっと緊張をほぐすために意地悪をしてしまった。


「あらあら、随分と落ち着いているのね坊や」


 今度はエイナさんがやって来た。娘と同じこと言ってる辺りほんとそっくりだな。

 そう思ってしまい、ついつい俺はルリナにやったことをエイナさんにやろうとした。普段は絶対考えないのに緊張のし過ぎでおかしくなっていたんだろう。


「じゃあ俺の手、触ってみます?」


「ふふ、いいわよ」


 エイナさんの手に触れた瞬間感じたのは暖かさだった。そして手を離したあと俺の手は妙にキラキラしていた。汗によるてかりとかではなく結晶のようなものだ。


「なんかキラキラしてませんか?」


「私に悪戯しようとしたお仕置きよ」


 ふふっと笑ってエイナさんはそこから立ち去った。


 気になってもう片方の手でキラキラした手に触れる。


「冷たッ!」


 エイナさんは魔法で俺の手を握る直前、俺の手を凍らせたのだ。

 うん、今後あの人に何かするのは…やめよう。

 俺はそう心に固く誓った。


「ちゅうもーくッ!!」


 そんなやり取りの後、大きな図太い声が丘に響く。

 周り向ける視線の方を俺も向くと、鮮やかな鎧を着た金髪に紺碧の瞳、女王陛下がいた。


 場が静寂に包まれると女王陛下は大きな声で口を開いた。


「いいか!此度の戦、勇者を手に入れたと舞い上がり帝国は愚かにも我らに牙を向けた!悲しいことにあやつらは我ら魔女の力を見くびっている!示そうッ!勇者など恐るるに足らず!我らにも一人の勇者が付いている!皆ももう知っているであろう迫る兵から逃げた不死の勇者だ!帝国は人っ子一人捕まえることもできないッ!」


「これだけでも帝国の脆弱さがよく分かる!何も怖がるものなどない!ラーグナー王家、その紋章に誓って我らが勝利をもたらそうッ!!」


「「「「おおおおーッ!!!」」」」


 そしてさっきまでの静寂が嘘のように吹き飛び、喝采が溢れる。あれが女王、本物のカリスマというやつなんだろう。

 その言葉に俺の心臓の鼓動は鳴り止み、湧き上がる闘志と熱が俺を包んでいた。


 俺はインヴィディア家の紋章が入った旗の立つテントまで行く。すると丁度ルリナがテントから出てきた。


「もう行けるか?」


「もちろんよ。あんたみたいに汗をかくほど緊張なんてしないし」


 まだ怒ってるのか?いや、思い返してみればあれはひどいことをしたしな。

 俺はバツが悪いといった感じで頭をかいた。


「ちょっと腕貸しなさい」


 ルリナは俺の腕を強引に引っ張ると黒地に銀色の紋章が刺繍された腕章を付けた。


「これ今後はずっと付けてなさい」


「何だこれは?」


「それは自分がどこの所属か分かるようにする証みたいなものよ。手柄とか立てたときに便利でしょ?」


 何でも七紋家はそれぞれ私兵団を持っていたりするらしく、それぞれの家紋を入れた腕章を私兵に取り付けさせて自分の家の手柄だぞと言えるようにするためだそうだ。


「確かに。分かった、大事にするよ」


 部活動なんかでもある学校の看板を背負って戦うということだろう。これを付けるということは恥になるようなことはしてはいけない。

 俺がエイナさんに言った"あいつらの足止め"。それをきっちりとこなさなければならない。


 俺は心をより強く固めた。


 そして帝国の兵が目視で確認できる距離まで進んできた。


  ―――――――――――――――――――


「魔女軍の兵を確認!こちらへ進行しています!旗は慈愛!鮮血!銀の旗です!」


 帝国の物見の兵が指揮官の男に報告をあげる。


「七つの内の三つだけか…。残りは自国の防衛とにらんだ方がよさそうだな。ガルダ騎士団長率いる中央部隊は鮮血を受け持つとのことだ!我ら第一部隊は銀の軍を相手にする!勇者組の諸君ッ!戦果を期待してるぞッ!!」


「「「はいッ!!」」」


 勇者組― ショウキ、ダイキ、ケイタ、ゴロウ、アイ、リナ― 六人構成の前衛部隊だ。



 ついに両軍が衝突した。


  ―――――――――――――――――――


 俺は今、帝国兵の一人と戦っていた。


「貴様はッ!裏切りの勇者ッ!」


 剣を手に鎧の騎士が俺に斬りかかる。

 俺は腰から絶咸淙(たつみなそう)を抜き取り、その騎士の剣に迎い打つ。


「裏切りもなにも、帝国は俺に何をしたか…。忘れたわけじゃないだろ?」


 鍔迫り合いになり俺は帝国の騎士に話しかける。


「貴様は勇者ではあったが()()ではなかった!弱肉強食は自然の摂理だ!」


「その自然の中に人の()()というものがあるんじゃないのか?それじゃあ獣と同じだ!」


「貴様が語るなッ!」


 帝国の騎士が力を込め鍔迫り合いの状態から剣を振り切り、俺はその力に負けて仰け反る。


「もらったぁぁーッ!!」


 騎士の剣は俺の胴体を深々と斬り裂いた。

 そのまま俺は力なく倒れる。


「よし!やったぞ!このカーネル・ナシタルが裏切りの勇者を討ち取ったぞぉーッ!!」


 戦乱の中、彼の声は響くがそれに耳を傾ける者はほとんどいなかった。


「はっはっはぁー!さて、私も仲間の援護に…」


「どこに行くんだ?」


「なっ⁈」


 立ち上がったカナタは騎士の男の足を切りつけた。


「ぐああああッ!」


 痛みに叫ぶ男は無様にも膝をついてしまう。


「な、なぜ…?」


「俺のスキルを忘れたのか?」


思い出したようにわなわなと震えだす帝国兵。


「ふ、不死…者…」


 斬り裂かれた服はそのままだが、その傷はすっかり治っており、ピンピンとしていた。


 この足じゃもう激しく動くことはできないだろうな。

 出来るなら殺したくないし、俺はまだ人を殺せるような玉じゃない。

 生き返った瞬間この刀は俺からガンガン生命力を奪っていく。

 まるでミルクを欲しがる赤ん坊のようだ。


 食いしん坊なこの妖刀に呆れていると、


「カナタ…だな」


 振り向くとそこにはかつての旧友がいた。


「ショウキ…」


 それは帝国の切り札である勇者だった。

カナタの使っている妖刀 絶咸淙(タツミナソウ)

ですが、タツミナソウという花からイメージしました!気になる方はタツミナソウと調べてください!

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