23話 呪われた刀剣
誤字脱字があるかもしれません。
後半の部分で少し書き加えた箇所がございますが、物語に変わりはございません。
「提案しといてなんだが…、坊主が扱えそうな魔剣はもう残ってなくてな…」
思いもよらなかった一言に俺の昂ぶった心は沈んでいった。
「えっと…、それはどういう…」
「もうすぐ戦争があるだろ?それで騎士や傭兵団の連中、冒険者まで買いに来たんだよ」
要は在庫切れというやつなんだろう。せっかくのチャンスが空振りに終わった。項垂れていた俺にオーガムさんは、
「だけど、だッ。"モノ"はあるんだよ…一応な」
その一言を聞いて俺の項垂れていた顔が上がる。
「…本当ですか?」
「ああ、ちょいと待ってな」
オーガムさんは店の奥に引っ込むと数分で戻ってくる。
布に巻かれた細長い形状のモノをカウンターの上に置くと、おれの前でその布を取った。
「こいつは俺が鍛えたものの中でも一級品の業物だが、駄作になっちまったやつだ」
それはとても日本に所縁のあるもの。俺の目の前にあるのは持ち手が紫色の刺繍が施されており、黒い艶のある鞘に納まった"刀"だった。
「刀…ですか?」
「おうよ!昔東方の国で修業をしていた時に打ったことがあってな。こないだ作ったんだよ」
オーガムさんは手袋をはめて刀を手に取ると、ゆっくりと鞘から刀身を抜く。
光に反射して僅かに湾曲する刃、銀色に輝く刀身はとても美しかった。
「綺麗ね…」
「流石は名匠」
ルリナとティナが思わず口から言葉が漏れる。
「これが駄作ですか?」
そうとは思えないほどの出来栄えだと思うんだが…
「いや、これほど見事なものは中々ないぞ」
ナチュラルに入ってきた現役騎士のゼイド教官の目から見てもやはり相当な業物みたいだ。
「実はだな……」
そしてオーガムさんは話を切り出した。
話によると、鍛治師オーガムさんは色々な場所で修行を積み様々な剣を打ってきた。
そんな彼は東方の国で打ったことのある刀を最近作ったらしい。自身でも太鼓判を押すほどの見事な出来栄えで心底満足したそうだ。
オーガムさんは魔女の国の生まれで彼の姉は魔女として日々研究に明け暮れているらしく、その内容が呪法と呼ばれる呪いの研究。それして刀には魔力との親和性が高い金属"魔鉱石"を使ったため、実験という餌食になった。
彼の姉いわく、単にどうなるか興味が湧いたからという理由で彼の傑作は妖刀と成り果てた。
使い手を殺す武器など武器ではないと言い、かといって捨てることもできず蔵に仕舞っていた。
「こいつの銘は、"絶咸淙"。使い手の生命力を喰う文字通りの妖刀だ。魔力を通さないこの手袋をしなくちゃ触ることもできねぇ。こんなものを人様に売れるわけがねぇよ」
確かに生命力って命を削るみたいな感じだろうし、普通に使えばそりゃあ死ぬよな。
だが妖刀であっても元はオーガムさんが鍛えた刀。それを不運にも実験の対象にされてしまった。
オーガムさんが話していた時、とても哀愁の漂う雰囲気があったから相当気に入っていたんだろうな。
「それ、カナタなら使えるんじゃない?」
そう言ったのは俺の横にいたルリナだった。
「えっと…なんで?」
「なんでって…、あんたなら死んでも生き返るし何も問題ないんじゃない?」
「ああ、そういうことか」
俺も今普通に納得してるけどこいつ俺に死ねって言ってるようなものなんだよな。
最近俺もよく死ぬからそこらへんの無茶振りというか感覚が麻痺してるかもしれん。
「ぼ、坊主ッ!それは本当か⁈」
さっきまでの哀愁はどこへやら…。オーガムさんは前のめりの姿勢で懇願してきた。
「た、頼むッ!こいつを使ってやってくれないか!武器じゃねぇとか言ったがそれは妖刀として最悪の機能を身につけちまったからだ!本音を言えば使ってやって欲しいんだよッ!」
「ま、まあいいですけど…」
余りの圧に押し負けて俺は妖刀 "絶咸淙"を受け取った。
そしてその感触を確かめべく、ゼイド教官と軽い模擬戦をすることになった。
鞘に納めている間は生命力を奪うような機能は発動しないということらしい。俺は腰に刀を差してオーガムさんの店の裏庭でゼイド教官と向かい合っていた。
「俺の魔剣とどこまで打ち合えるか楽しみだよ」
教官は己の愛刀である魔剣を持ち出した。
「魔剣は流石に…やり過ぎじゃないですか?」
「そっちも魔剣みたいなもんだろ?ならこうでもしないとな。普通の剣だと折れちまうよ」
そして教官も腰に納めた鞘から一本の片手剣を抜く。
その名を、魔剣"アポロン"。太陽のような灼熱の剣らしい。その性能の高さは名匠オーガムの折り紙付きだ。
そして俺も"絶咸淙"を腰から抜く。すると瞬間、刀身から何かを持っていかれたような感じが俺を襲う。
予想を上回るその脱力感に俺は膝をついてしまう。
「おい大丈夫か⁈」
「ちょ、ちょっとカナタくんッ!」
教官とティナが慌てるが俺はもう一度足に力を入れてなんとか立ち上がる。
「…大丈夫、です。さあ、やりましょう」
そして俺はゼイド教官に向かって勢いよく駆け出した。
教官に叩き込まれた基礎的な動き、まずは上段から振り下ろす。
教官はそれを剣の腹で受け止めてそのまま流れるように受け流すと教官は俺の腹に横蹴りをする。
「ぐっ!!」
2メートルくらい吹き飛ぶがすぐに立ち上がりもう一度距離を詰めようとしたが、その足が止まる。
ゼイド教官は俺を吹っ飛ばしたあの僅かな時間で準備を済ませていた。
魔剣"アポロン"が赤く光り、刀身から炎が漏れ出る。
高密度な魔力が刀身を覆うと螺旋状に炎が剣に纏う。
「螺旋の太陽」
そのまま教官は俺へと駆け出す。俺も咄嗟に魔力を妖刀に流すが何も反応がなかった。
(クソッ!)
そう思いながらも俺はなんの強化もしていない刀身で迎い打つ。
鍔迫り合いになり力の押し合いが始まる。間近で魔剣"アポロン"から発せられる熱はとても浴びていいようなものではなかった。
熱い、熱過ぎる。
肌が焼けて、まさにその剣は太陽のような熱を帯びていた。
そしてこうしている間にもこの妖刀は俺から生命力を奪っていた。
(このままじゃまずい!)
そう焦るが打開策がない俺はただこの炎の剣と押し合いをするだけだった。
「どうしたっ!カナタッ!妖刀の力はこんなものか!」
ゼイド教官が叫んだ直後、絶咸淙の刀身から黒い影が出てきた。
俺も教官も互いにそれを見る。俺たちの模擬戦を見ている他の三人もそれに注目した。
急に現れたそれは俺の刀身を覆うと魔剣"アポロン"が纏っていた炎は俺の黒い刀身に飲み込まれるように段々とその強さを失ったいった。
その光景にその場にいた俺を含めみんなは驚愕した。
その後、俺は激しい眠気に襲われてその場で意識を失った。
―――――――――――――――――――――
時刻は夕方になりもうすぐ夜がやってくる時間、俺とルリナは屋敷に向かって帰路についていた。
あの後俺の生命力が尽きて、模擬戦は終わった。
ティナの治療のおかげで夜までにはなんとか復活することができた。
「本当にそれで良かったの?」
「ああ、なんかこいつがいい気がしてな」
結局俺は妖刀 絶咸淙を受け取った。その時オーガムさんは泣いてお礼を言ってくれたんだが…
お姉さんに酷い目に遭わされてたしな。お気の毒に…
模擬戦中に出てきたあの黒い影のようなもの。妖刀"絶咸淙"の特徴をオーガムさんが調べたところによると、どうやらあの刀には所有者の生命力を奪いそれを魔力に変換することができるらしい。その際所有者の適性属性である属性の能力が使えるとのこと。
属性の能力とは具体的にいうと魔法だ。
俺自身も忘れかけていたが俺の適性属性は"闇属性"だ。そして模擬戦中にあったあれはブラックホールという中級魔法だ。魔力を持つものを吸い込む、防御魔法のようなものらしい。
俺は詠唱やら魔法陣など無視して魔法を使うことができる。といっても刀がなくちゃいけないし、闇属性だけしか使えない上に、刀を使えば恐らくまた死ぬんだよな。しかも俺自身まだまだ全然強くない。
「薦めたのはあたしだけど…、でもまさか本当に使うなんて思ってもみなかったわ」
「なんだろうな…、俺もなんかこれを使ってやりたい気持ちが出来たんだよ。」
「変なの…」
そんな感じで話していると、とても鼻をくすぶる香ばしい匂いが漂った。
その匂いの元へ目を向けると小さな屋台があった。そこではバーベキューのような串に肉を刺して焼いているお店があった。
俺が立ち止まってその屋台を見ていると、
「あれが欲しいの?」
「まあ、腹減ってたしな」
「ふーん」
そしてルリナはトタトタと走っていき屋台へ行った。
戻ってくるとその手には二つの肉の刺さった串を持っていた。それを一本俺の前に差し出した。
「はい」
「いいのか?」
「まああんた今日まで頑張ってたし、妖刀なんて普通は手に入らないものまで手に入れたしで…。その、なに?労いってやつよ」
頰を僅かに赤く染めて、ルリナは俺にその串焼きを押し付けるように渡す。
「あ、ありがとう」
俺のとルリナはそのままゆっくりと二人で串焼きを食べながら、朱色の空の下を歩いた。夕日に照らされたルリナの横顔はとても綺麗でつい見惚れてしまう。
「ん?何?」
「いや、何でもないよ」
見惚れていたなんて小っ恥ずかしいこと言えるわけがないよな。
その後の一日、戦争前日を過ごしていよいよ勇者達のいるフォルネ帝国との戦争がやって来た…
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