幕間2 彼女の本性
今回も勇者サイドの話になります!
1日に二回の投稿という初めてのことですが
誤字脱字などあればご指摘いただけると嬉しいです。
カナタについての新しい情報も入ってきたガルダの作戦会議。
「それじゃあ会議は終わりだ。前線部隊になったものは明日の昼、第一訓練場に集まってくれ。後衛部隊は第二訓練場だ。もう夜も遅い、早く休むといい」
そう言って会議は終わりを告げた。
しかしガルダが先に部屋を出てもこの日の夜はまだ終わらなかった。
作戦が分からなかった訳ではない。この場でまだ扉に手をかける者がいないのは、逃げ出した同郷の情報が出てきたからだ。
「もしかしてカナタは俺たちのこと、恨んでる…のかな…」
そう言ったのは槍を武器にするケイタだった。
「まっ、良くは思ってねぇだろうな」
それに軽く答えるのはダイキだった。そしてそう答えるダイキに皆共感を覚える。日本では確実にいじめに当たることをしてしまったのだから。クラスメイトたちは少なからずの罪悪感があったのだ。
「あ、あの…カナタくんをまたこっちに戻すことってできないのかな……」
この場の誰もが思いもしなかった発言に周囲が一斉にそれを口にした人物の方を向く。会議でもカナタの安否を確認したリカだった。
「リカ…、何言ってるんだ?あいつが戻ってこれるわけがないだろ。魔女の国に行ったってガルダさんも言ってたじゃないか?その時点であいつは"敵"になったんだから」
ショウキは呆れ半分、疑念半分といった感じでリカに現実を言った。
「そ、そうだけど…。で、でもやっぱり助けた方がいい!もしかしたら牢屋に入れられてるかもしれない!私たちのクラスメイトだよ?なら私たちしか助けられないよ!!」
声を張ってリカはクラスメイトに呼びかける。その姿はまさに聖女と呼んでもいいかもしれないほどに、彼女の優しさが生んだ必死さに見えた。
リカが"癒す者"というスキルを手に入れたのにも納得だ。
「ま、まあ確かにクラスメイトのやつが困ってるなら…」
ダイキがそう言いかけたとき、
「いい加減にしてリカ」
そこに冷たい刃が突き刺す。
「今私たちでの立場はこの国を救う勇者なの。もう高校生ではなくなってしまったの。それはもう少なくとも大人として生きていくしかない。分かる?我儘はもうお終いなのよ」
泰然とした態度で真っ向からカナタ救出作戦を破いたのはスズコ。天桜寺という苗字の日本では名家の生まれの少女だ。
「我儘ってッ……、でも彼が今本当に苦しんでるならッ!!」
「違うッ。あれは自分で決めてここから出て行ったのよ。ショウキくんが追いかけて止めようとしたのにもかかわらずにね」
スズコはカナタが例え今苦しんでいたとしてもそれは自己責任だと言外にそう言った。
そして筋が通ったものでもあった。
「……ッ」
これにはリカも黙ることしかできなかった。
「…それじゃ私はもう戻るわ。勇者部隊の指揮官として色々と考えたいしね」
スズコは今日ガルダから勇者に対する指揮官としての任を受けたのだ。
スズコに限らず他の勇者達も補助スキルや能力アップのスキルをいくつか所持していたが、スズコは戦闘系はおろか、目ぼしいサポート系のスキルも持っていなかった。そのため彼女は後方にある本陣にて指揮官をすることになったのだ。元々成績も良く、彼女の家は名のある武将の家柄でよく戦について書かれた本を好きで読んでいた。それもあって指揮官として適任だったのだ。
スズコが部屋を出たのを皮切りに、皆ぞろぞろと部屋を出て行った。
そして最後に部屋を出たのは…リカだった。
リカが部屋を出るとすぐ横にある少女が待ち構えていた。
「本当…リカって顔がぶ厚いよね〜。仮面にしてもやり過ぎじゃない?」
そんなおちゃらけた雰囲気で話かけてきたのはレイカだった。
「いたの?」
「だってあんな演技見せられたらね〜」
レイカはカナタから"魔法防御力上昇"を奪ったギャルっぽい少女だ。ショウキにアプローチをかけており、スキル"奪取"の力でカナタから奪ったスキルをショウキにあげていたクラスメイト。
リカは先ほどの優しさが溢れた慈悲の心を持った印象とは反対的で、氷のように冷たく棘のある雰囲気だった。
「あんなのダメ元で言ってただけよ。まあダイキくん辺りは結構乗り気な感じだったけど」
これは余談だが、ダイキはリカにベタ惚れしているのだ。
「アハハハッ!そこまで欲しいの?カナタの野郎が?」
可笑しいという感じで笑いながらレイカは言う。
「私が欲しいのはあいつのスキルよ」
「そうだった!アハハハッ!でも、誰も分かんないだろうね〜。リカがこんなに真っ黒なやつだなんて。なんせステータスが分かってすぐに私とスキルを交換したもんね〜〜!」
そう、リカの本当のスキルは"奪取"なのだ。
リカは最初、ステータスが分かると同時に悩んでいた。とても有力なスキルなのは間違いない。それを手に入れた自分を褒めてあげたいほどに。
しかしリカは学校の中では愛想が良く、美しい容姿に男達はメロメロ。性格も良く、とにかく優しいというのが私、リカというキャラだ。だからこそクラスでも高い地位にいたのだ。
そんな女神のような私がスキルを持つ者からそのスキルをランダムで奪うことのできる能力なんて、許容できない。
恐らく私の立ち位置が揺らぐことはない。スキルなんて人それぞれで分からないのだから。しかしその人物からイメージされるものはある。
心優しい人が治癒系統のスキルを持っていると思ったり、剣道をしていた人が"剣術"というスキルを持てたりと、固定観念のようなものが確かにあるのだ。
女神イメージで通してた私が"奪取"なんてスキルを持っていたら幻滅とまではいかなくても意外と感じてしまうヤツは必ずいる。その上、もしかしたらスキルを奪われるかもしれないと考えないヤツがいないとも言えない。私が最も注意するもの…。それは不安だ。不安から起こす行動というのは決して甘く見てはいけない。それが私の今までに生きてきた経験から分かったことだ。
スキル"奪取"をかざして恐怖支配をしようものなら妙に正義感のあるショウキは必ず抵抗する。そして群がるように女子の連中も反抗するだろう。
そんなリスクは侵さない。
そこで私は本当のスキル"癒す者"を持つレイカに相談を持ちかけた。
ショウキのことが好きなのは分かっていたからその恋を手伝うことを餌にして、スキルの交換を提案した。
まず私がレイカから"癒す者"を奪い、そのあとこの国に召喚された直後、私たちに精神系の魔法をかけて心を落ち着かせてくれたあの魔術士に協力をお願いした。そしてレイカに"奪取"を渡すことに成功した。
方法は単純で、スキルの力を一時的に込めることが出来る魔道具があるのだ。それに"奪取"の力を込めて私自身に向けて発動、"奪取"による"奪取"を行いその魔道具を使ってレイカに譲渡した。
魔術士には口止め料として私の体を売った。そしてもし言いふらせば皇帝に犯されたと言って脅しもかけた。
スキル"模倣士"を持つユキナがいたが、彼女は女の子で体を売るなんて方法は使えないし、弱みになるネタもない。だから頼めなかった。同じクラスメイトに秘密を知られるのは最小限にしたかったから。
そして私はこんな王宮からおさらばし、縛られた日本では味わえない未知の世界を味わうために強くなる必要がある。強いに越したことはない。だからカナタの持つ"不死者"はなんとしても手に入れたいのだ。
「それじゃあ、私も寝るから」
「は〜い、ショウキのことは忘れてないわよね?」
「もちろんよ」
王宮の豪華な廊下を歩く少女の纏う色は純白とは程遠い。夜空のように漆黒に染まっていた。
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