21話 魔女の力と仕上げ
誤字脱字があるかもしれません。
その際は教えていただけると嬉しいです。
一箇所ステータスのスキルで主人公のスキルが一つ抜けていたため、修正いてしました。誠に申し訳ありませんでした。
魔の樹海、深域から俺とルリナが帰って二日が過ぎた。
ティナと出会ったあの後、慈愛の泉の場所まで案内をしてくれた。なんでも「借りを作っておくのに越したことはない!」らしい。
聞くところによるとティナの家、カリス家は慈愛の魔女と呼ばれており、そこの先祖が昔作った慈愛の泉を管理してきたらしい。魔獣が近くいたら討伐して汚染されてそうなら浄化してと色々とやることがある仕事だ。
慈愛の泉がもたらす効果は癒し。貴重な薬草と混ぜれば不治の病も完治できるとか…
慈愛の泉から作られた"慈愛の魔薬"、一般的にはエリクサーと呼ばれ、金貨百枚はくだらないという値段だ。
金貨百枚となると屋敷は建てられるし、そこまで贅沢をしなければ働かなくていい額だ。
そんな癒しの原液、慈愛の泉は一見するとただの泉にしか見えないが、そこにある水は透き通るように清らかで美しいものだった。魔の樹海の中にあるとは思えないほどキラキラと輝いていた。
そこで空の小瓶七本分を入れた。そこからティナが持っていた転移石という特定の場所へ転移できる魔道具を使って国へ戻った。
そして無事条件を達成した俺とルリナはエイナさんから少しの休暇をもらったのだ。
そして俺は今屋敷の一室を借りてだらだらと過ごしていた。
そう、ついさっきまでは…
「おらッ!!まだまだ動けるだろッ!立たんかッ!!」
俺は今、木刀を手に目の前にいる筋骨隆々の頰に傷がある大男と打ち合っていた。
「イ、イエッサーッ!!!」
泥だらけになりながら俺は何とか立ち上がる。
なぜこうなっかというと、理由はルリナだ。
ルリナはくつろいでいた俺の部屋へやって来た。
ノックをされて俺は扉を開ける。
「どうしたんだ?」
「ねぇ、今から私と模擬戦をしない?」
「急にどうしたんだよ」
ルリナの唐突な話に俺は軽く困惑した。魔の樹海で俺はルリナの魔法を何度も目の当たりにしてきた。俺はまだこの世界の強さの基準を冒険者のランクくらいしか知らない。
一般的な強さの基準は冒険者ギルドが定めたランクらしいが、そのランクの強さというのを俺はまだよく知らない。BランクとかAランクいわれてもそれがどの程度かよく分からんのが本音だ。
たがらルリナの強さがイマイチ分からない。それでも樹海の深域までルリナはほぼ無双してたようなものだったしやはり強いのだろう。
「魔の樹海であんたの戦いを見てたけど、やっぱり正確に把握しときたいのよね」
確かに仲間の強さというのは把握しておかなければ実際の戦争にも大きく関わってきそうだな。
それに魔獣たちとの戦闘で俺のステータスも上がったし、対人戦でどこまで通用するのかも知りたい。
「よし、いいぞ」
俺は闘志を燃やす。自分の実力を試すというのはなんだかワクワクする。スポーツで初心者だった自分が成長して上級者に挑むような気持ちに似てる。
「じゃあ庭まで来てね。あと銀の魔薬も忘れずに」
「ん?俺も成長したし、大丈夫だよ」
「あれがないとあんたなんて話しにならないわ」
優雅に立ち去り俺の部屋の隣にあるルリナの自室、その部屋に戻って準備を始めた。
「俺って、そんなに弱いのか…」
忘れがちだが銀の魔薬はそのまま飲んでしまえば毒と一緒だ。だから俺はあれを飲むたび毎回死んでるのだ。喉が焼けて体の血管が拡張し、内側から何かが噴き出しそうな気持ち悪い感覚。正直俺の心は病み始めていると思う。
帝国の王宮で飲んだ毒は全然大したことなかったのに。
そして俺は机の上に置いてある小瓶を一つだけ手に持ち部屋を出た。
今の俺のステータスはこんな感じだ。
名前:カナタ
種族:勇者
階級:銀の家臣
状態:契約(従)
耐久力:530 攻撃力:280. 敏捷:290 魔力:152
スキル:不死者、縄抜け
耐久力はこの世界に来たときから300ほどあがり、攻撃力と敏捷はもう少しで300に差し掛かる。しかし魔力がほとんど上がってない。帝国で見た時から2しか上がってない。これには俺も疑問でしかなかった。
そして昨日エイナさんに聞いてみたが、エイナさんも分からないと言ったのだ。
庭に出るととんがり帽子を被ったルリナが既に待っていた。
ちなみにこれがルリナのステータスだ。
名前:ルリナ・インヴィディア
種族:魔女
階級:七紋家、銀の魔女
状態:契約(主)
耐久力:2800 攻撃力:840 敏捷:460 魔力:6780
スキル:魔法威力上昇、魔力効率化、全属性耐性、 銀の魔法、魔法耐性上昇、反転魔法
状態のところにある(主)と(従)は主従関係のことを指している。俺の主人という扱いのルリナには(主)、その従者である俺は(従)となっている。
ルリナのステータスは初めて見たが魔力の高さに目玉が飛び出そうだった。魔力だけなら勇者を超えている。本人が言うにはAランク冒険者程度には強いらしい。
「さあ始めましょう!」
俺はルリナから木刀を受け取り、模擬戦が始まった。
俺は小瓶に入った銀の魔薬を一気に飲み干す。そして気力と力が込み上げてきた。内から漏れ出る魔力を体に纏い、髪は黒から銀に変わる。
「行くぞ!!」
俺は地面を踏みしめて一気に距離を詰める。
身体能力が高まり、通常の俺では出せない速度を出した。しかし上段から振り下ろした木刀をルリナはなんなく回避する。
「アクアアロー!」
右側に避けたルリナは俺の脇腹に向けて七本ほどの水の矢を放つ。俺はそれを回避することはできず、数本の水の矢が俺の脇腹に深々と突き刺さる。
強化状態の俺の痛覚は鈍くなっており、針で刺されたくらいの痛みだ。だがその痛みはすぐに引き、傷は塞がっていく。
俺はすぐさまルリナに対して攻撃をする。距離を開けたルリナに向けて木刀を勢いよく投げて、何百キロと出た速度の木刀はルリナの張った魔法障壁によって防がれてしまう。
木刀を投げたのは剣術素人の俺が木刀を持っても振り回すだけで当てられる気がしなかったからだ。しかしそれでも武器は武器。このあとの魔法で俺は木刀を投げたのを後悔した。
ルリナは中距離の位置で俺に攻撃を仕掛ける。やはり魔法使いは接近戦が苦手みたいだ。
「雷電球」
ルリナは頭上に雷を帯びた球、大きさはバランスボールほどで電気が迸る。簡単に丸焦げになってしまいそうなそれを俺に向けて射出した。
思いのほか速い"雷電球"という魔法を俺は避けられるないと判断し、拳を強く握り締めて向かい合った。ここで木刀があれば拳なんて使わずに済んだのにな。
そしてテレビで見たボクシングの試合を真似する。タオルを巻くように魔力を分厚く纏わせて、俺の渾身の右ストレートと"雷電球"が衝突し、爆発が起きた。
土煙りが立ち上がり視界を覆う。俺の右拳は当然焦げていた。魔力を分厚く纏わせたおかげかちゃんと腕は残っている。魔薬のせいか、それとも脳内麻薬のせいか、痛みをほとんど感じなかった。あるとすればちょっとヒリヒリするくらいだ。
土煙りが晴れるとそこにいたはずのルリナの姿がなかった。
急いで周囲を確認するがやはりいない。こういう場合、考えられる場所は一つ…
「上かッ!」
空を見上げるがそこにいたのは羽を羽ばたかせた小鳥だけ。
(マジでどこにいった⁈)
まさかの予想外れに慌てていると、優しく背中に触れた感覚が伝わった。
「残念、後ろよ」
「なっ⁈」
「銀の破弾ッ!」
ルリナの腕を通した形で銀色の大きめな三つの輪っかが出現する。
俺の位置から奥にある銀の輪っかに衝撃が起き、その輪っかは真ん中の輪っかに当たり、俺の背中側にある輪っかにへとぶつかる。重なった三つの輪っかは重々しい音と共に俺を襲った。
「ぐはッッ!!!」
超弩級大砲のそれは俺の背中を焼き、そして勢いのまま撃ち抜いた。計り知れないその威力をもろに受け、俺の体は数メートル吹っ飛び上半身の穴が空いた部分は蒸発して血も流れていない。
「"ミストカーテン"っていう魔法で光を屈折させて透明になる魔法よ。それで土煙りの中をこっそり歩いて近づいたんだけど…ってもう死んでるか」
模擬戦の勝敗はルリナの圧勝という形で幕を閉じた。
「なあ、最後のあの魔法なんだ?強化中じゃなかったら腰から上なくなってたぞ」
再生が終わり意識が覚醒した俺はルリナの最後の魔法について聞いていた。
「あれはあたしの家に伝わる銀の魔法よ。確かかあ様は無属性魔法の派生とかっていってたわ」
「威力がおかしいんだけど」
「そりゃあ威力を追求した魔法だからよ。あたしのスキルの効果も入ってるけど、銀の魔法はあたしたちの家系の魔女にしか使えないわ。それよりもあんた弱すぎない?」
呆れたようにルリナは言う。仕方ないだろう、俺はまともな戦闘をしたのが強化状態で魔の樹海の魔獣だけだったしな。
「俺はこんなもんだよ」
「じゃあ今から鍛えてきて」
「はい?」
という流れで俺はこの国の騎士団の訓練にまたしても放り込まれた。エイナさんもどこからか俺とルリナの模擬戦を観ていたらしく、許可が出た。
「そんな軟弱な剣で戦場に出る気か小僧?死にたくないならもっと打ち込めッ!」
「教官ッ!俺は死にませんッ!!」
「スキルがなかったらポンコツもいいところだぞッ!」
教官は真っ直ぐに木刀を腰の位置で構える。それは剣術の基本的な構えだ。
「小僧ッ!ど素人なテメェは基礎だけでもマシになりやがれッ!!」
「イエッサーッ!!」
こうして俺は教官に戦争一日前までみっちりと仕込まれたのだ。
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