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銀の魔女の勇者  作者: 星川ぽるか
一章 帝国の勇者と魔女の勇者
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幕間 騎士団長

 

 これはカナタが王宮の窓から逃走した直後の話だ。



「クソッ!!」


 勇者ショウキは自身の苛立ちを壁にぶつけて握られたい拳の跡が壁にくっきりと出来た。

 普段は冷静で情に熱い男というのが周囲の認識だったため、カナタを追いかけていた周りにいる数人の兵士達は驚く。


 逃げた男は確かにスキル持ちの勇者だが自分達よりも弱い男が逃げたというだけの話だ。だからショウキのあからさまな憤りを見て動揺せずにはいられなかった。

 カナタが飛び降りた部屋に静寂が満ちる。あまり装飾はなく、少し埃っぽい王宮の一室とは思えない部屋。その部屋に満ちた雰囲気をすぐに壊したのは騎士団長のガルダだった。


「今すぐ落ちた場所を確認しろ!やつはこの程度では死なん。騎士団も集めて捜索するんだ!」


 ガルダの力のこもった声で発せられた命令に兵士達は応えて部屋を勢いよく出て行った。


 部屋に残ったのはショウキとガルダの二人だけ。

 拳を握りしめ、俯いたままのショウキにガルダはそっと近づき手を肩に置いた。

 命令を下したときとは違い優しく声かけた。


「ショウキ…お前はひとまず他の勇者に報告を頼む」


 顔は上げないままショウキは悔しさと苛立ち、焦りを感じる。それでも話かけてくれたガルダにショウキは口を開く。


「すいませんっ…。これから慌ただしくなるこんな時に」


「気にする事はない、こちらの落ち度だ。お前たちは強くなるために最短の道を選んで私も支持した。確かに人道的とは言い難いが、足を引っ張るやつを切り捨てることは何も悪というわけではない」


 騎士団長ガルダは勇者の指導に当たっていた。その高い手腕とカリスマ性はすぐに勇者達の心を掴んだ。

 ガルダ自身勇者という金の卵を育てるのはとても胸踊るものだった。

 どんどん伸びていく若者は見ていて気持ちが良かった。


「捜索はこちらで進めておく。お前は少し休むといい」


「…分かりました。代わりにレイカを呼びます。あいつは探知系のスキルも持っていますから」


 レイカ…カナタから“魔力防御上昇”を奪った少女。

 彼女のスキル“奪取”は本当に厄介極まる。あれを使われては我々もたまったものではない。他人から才能も努力も理不尽にあっさりと奪っていくからだ。

 勇者達を敵に回してまともにやり合えるのはごく一部のみだろう。そのくらいに勇者達は鍛えて強くなったとガルダは確信を持っていた。彼らの成長は異様なほどに速いのだ。


「ああ、頼んだ」


 ショウキはガルダに一礼してから部屋を出ていく。この場にいるのはガルダのみになった。


 そして静寂が再び訪れると、この日カナタが逃げ出した前日の出来事を思い出す。


 ―――――――――――――――――――――


「それは本当ですか陛下っ!?」


 広々とした空間にガルダの声が壁に反響する。ここは謁見の間と呼ばれ、扉から続く赤い絨毯が真っ直ぐとのびており、その先には煌びやかな装飾が施された豪華な椅子が置かれていた。来る者を俯瞰するようにしてその椅子はいくつかの段差の上、少し高い位置にある。そこに腰を据えているのがこのフォルネ帝国の皇帝アルドラ・フォルネ。


 彼は騎士団長ガルダにあることを伝えていた。


「本当だ。我々はサルナ王国の同盟国である魔女の国を叩く。あそこを潰さねばサルナ王国には辿り着けない」


 ガルダは慌てた。魔女と戦争なんてして無事で済むわけがない。勇者達がいるからといっても勝てる見込みがないのだ。ガルダは必死に皇帝を説き伏せようとした。


「今”魔の樹海”では魔獣が活性化しております!ラーグナー王国、魔女を攻めるにしても時期ではありません!陛下もそれはお分かりのはずです!」


 愚かな王ではない。それは騎士団長であるガルダがその姿をずっと近くで見ていたからこそ分かる。だからこそ分からない。なぜ今なのか?そして魔女の国の戦力は流通する魔道具の性能からみても巨大だ。

 相手にはしても、戦っていい国ではない。


 しかし皇帝は必死に申し立てる臣下に泰然としたその姿勢を崩さない。


「ガルダよ…、むしろ今なのだ。森が()()()している今だからこそだ」


 その言葉の意味をガルダは理解出来ず「なぜですか?」と聞き返した。


 皇帝は丁寧にガルダへ説明をした。


「勇者の中には魔獣を操ることの出来る者がおろう。そやつの力を使い、騎士団と魔獣を使い攻めるのだ」


 その作戦に耳を疑うのは当然だった。

 魔獣を使役できるのは魔女とそういったスキル持ちの者しか出来ず、いくら魔女でも使役出来るのは精々が二体。


「勇者の中に"傀儡士"というスキルを持っている者と、一定時間スキルをコピーできる"模倣士"がおろう。可能なはずだ」


「ですがっ!いくら勇者といえど…」


 苦悶の表情を浮かべるガルダは言葉に詰まる。

 魔獣を操ることの出来る勇者、島田とスキルをコピー出来る勇者、竹田の二人の少女。

 彼女たちは魔獣を使役出来る数を把握しており、聞いた限りその数は島田だけで40、コピーをした竹田は32の合計で72もの魔獣を使役出来ることをガルダは知っていたからだ。


「ガルダよ…、我々の代でこの戦争を終わらせねばならん。それも我々の勝利でだ。お前にも息子がおろう、その代の者達までも戦争に参加さけるのはお前の望むところではないはずだ」


「陛下…」


 瞳を数秒閉じて、決意を固める。ガルダは己の主人が勝算あっての行動だと理解した。未来のため、生きるために…


 何より勇者は戦争で勝つために呼んだのだ。


 もちろんこちらの勝手な都合だ。彼らには悪いことをしたと思う。だが、それでもだ。


「分かりました。こちらでも準備を進めます」


「ああ、頼んだ」


 顔や雰囲気には出さず、しかし皇帝は内心安堵した。反対されることは分かっていたため何とかガルダを納得させた。

 皇帝に背を向け、ガルダは謁見の間を後にした。


 ーーーーーーー―――――――――――――


 そして今日先ほど何人かの勇者に戦争の話をした。そうすれば必然と他の者に話す。勇者達はすぐに情報を共有する。共有させてある程度の心構えはすると考えた。

 そして全員を集めて話をするのは明日辺りにしようと思っていたその矢先に思わぬ事態、つまり勇者の欠落。カナタの脱走だ。


「どうしたものか…」


 幸いにも冷遇したカナタに対して他の勇者達は情、もしくは罪悪感を抱くとは思えないが、不安がないとガルダは言い切れなかった。





遅い時間になってしまい申し訳ありまへん!

次回も二日後更新しますがもう少し早い時間にいたします!


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