37.終焉
「_____ほらよ。飲みな」
「ありがとうございます」
一縷さんが、近くのコンビニで購入した缶コーヒーを投げて渡してくる。オレ達は並んで座り、白い息を吐きながら、さほど上手くもない苦い液体を啜る。
空気は酷く乾燥していて、風が吹く度にマフラーでは覆いきれない頬がピリピリと痛んだ。
空から降ってくる雪の結晶は地面に白い層を積み上げていく。
公園はいつにも増して静まり返っている。降り積もった雪が、音を吸収しているのだ。
「……ユキさん、最期はすごく幸せそうだった」
コーヒーの温かさにほっと息を吐き、オレは言葉を紡ぐ。
「これで良かった。小可さんもそう思うよな? オレのやってること、間違ってないよな?」
小可さんがオレの背中に手を回し、抱き寄せるみたいに頭を撫でられる。
「オレが外に出たいなんて言わなければ、母さんは事故に遭うこともなかった。オレのせいで、親父は家族と縁を切る羽目になった。オレのワガママでユキさんを巻き込んで、朝一さんにまで迷惑かけて……でも、今度こそ間違ってないよな? これが一番良かったんだよな?」
なあ、と一縷さんに何度も呼びかける。
「……もう良いだろ」
一縷さんはオレの頭を何度も撫でながら、ぽつりと呟く。
「お前は良くやったと思うよ。でも、下手に良い子ぶって全てを背負い込んだところで、辛いだけだ。クソガキはクソガキらしくしてたら良いんだよ。少しワガママを言ったくらいで怒る奴なんてお前の周りにはいない。今まで我慢してきた分、思う存分甘えてやれば良いんだ」
クソガキ。一縷さんはオレを何度もそうやって呼ぶけど、いつだって口調は優しかった。
「お前がどんなことをしようと、俺はお前の味方だって、そう誓うよ。だからお前もいい加減、自分のことを許してやれ」
冷めつつあるスチール缶を強く握りしめる。
「……もう良いんだ、希」
目頭の奥が熱くなる。ずっと堪えてきた感情が込み上げ、オレの体を支配する。
もう止めることはできなかった。止める必要もないのかもしれない。
ようやく「終わった」のだと、そう思うことができた。
「……っ、うぅ」
泣き顔を見られたくなくて、オレは一縷さんの肩に額を擦り付けた。一縷さんは何も言わず、オレの背中を撫で続けてくれた。




