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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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8.陰キャ男子と核心

閲覧感謝です

 



 すっかりゲームに夢中になってしまった二人。戦績は地の利がある真琴の勝ち越しで終わった。

 哲也も悔しがっていたが、ふと我に返ってここに来た理由を思い出す。




「あー…完っ全に忘れてた…。あのな真琴、俺がわざわざお前ん家まで来た理由なんだが。どうにも月奈がお前を文化祭で表に出したいらしい」


「……その件か。実は僕も姉さんから珍しく連絡が来たんだよ。今度文化祭に行くからーって」


「ほーん。それが月奈となんか関係あんのか?」


「姉さんの口から柳沢さんの名前が出たんだ。姉さんの友達の妹らしくて」


「お前そりゃあ…詰んだな」


「ちょっ!?見捨てないでよ哲也!僕たち親友でしょ!?」



 いくら親友でも無理なものは無理……とすげなく断られてしまった。まずい、少しずつ外堀が埋められていってる。頼みの綱の哲也がこれなら、俺にはもうなす術がない。


 でも大人しく言うことを聞くっていうのも割に合わない。だったらいっそ、交換条件を突きつけてみようかな。


 よし、それで行こう。



「悪りぃな真琴、力になってやれなくて」


「大丈夫。僕たちの関係が明るみになって、一番困るのは哲也だろうしね」


「いやお前の方が大変になるだろ。自分で言うのもあれだが、俺も学校じゃそこそこ顔は広いからな。そういうことがあっても誰も気にしねえよ。でもお前は今が一番マズいだろうが」


「神木さんのことなら心配しなくていいよ。きつく念押ししてるからさ」


「あの美波がそれだけで黙るかは運次第だな」



 いや、まあ…うん。それはそうなんだけど。神木さんは良くも悪くもマイペースだからね。素直というか、自分を曲げないって言えばいいのかな。

 とにかく、彼女に理論はあまり通用しないということはよく理解している。


 その上僕は感情に訴えかけるようなやり方をとってるんだけど、哲也にこう言われると、もう何やってもあんまり意味ない気がしてきた。


 後のことは後で考えよう。今は柳沢さんに何を要求するかだね。一番欲しいのは平穏。でもそれはたぶん無理。次に欲しいのは安定。それもたぶん無理。理由は両方、神木さんっていうムードメーカーに捕まってしまったから。

 というか、神木さんと柳沢さんに絡まれた時点でもう逃げられないんじゃ………。



「ようやく気付いたかバカめ。現に俺は月奈のパシリにされてるだろう?」


「なんでちょっと上からなのさ。すごく情けないことを言ってるのに気付いてるのかなぁ…」


「あいつに弱みを握られたら終わりだ。たった半年の付き合いだが、嫌というほど思い知らされた」


「それは、なんというか…ドンマイ?」


「お前も今からこうなるんだぞ?分かってんのか、ああ?」


「だからなんで偉そうなの?」




 どうにかして文化祭を乗り切らないと……。










 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———










 哲也と話した翌日。僕はHINEを使って、文化祭のことで話があると柳沢さんを屋上に呼び出した。

 昨日一晩中考えて、どうにか案を絞り出した。だけどこの条件を柳沢さんが飲むかは怪しいところだ。


 柳沢さんはすぐにやってきた。昼休みの時間も短いので、早速用件を伝える。




「ごめんね、急に呼び出したりして」


「全然いーよー。てか屋上に呼び出しって、なーんか告白みたいじゃない?いくらあたしが美少女だからって困っちゃうなあ。あ、知ってる?昔はこの屋上が告白の定番スポットだったとか…」


「ちゃんと用件伝えたでしょ。哲也から話は聞いたよ」


「もうちょっと冗談に付き合ってくれてもいいんじゃなーい?」


「そんな時間があったなら乗ってたかもしれないね」



 本当にこの人は自由だね……。



「文化祭、素顔を出してもいいけど、一つだけ条件がある」


「…ふーん、言ってみ」


「文化祭が終わった後、僕にはあまり関わらないようにみんなに言い含めておいてほしいんだ」


「………のっぴきならない事情があるみたいだね。でもそれ、あんま意味ないと思うよー?」


「どうしてそう言い切れるの?」


「高校生の好奇心舐めない方がいいよ。確かに一過性のものかもしれないけど、学生っていうのは空気に流されやすい生き物だからね。あたしがどれだけ言ったところで破るやつは出てくる。それに便乗してくるやつも少なからずいると思うよ」



 柳沢さんの言うことにも一理ある。こう言ったら悪いけど、学生なんて勢いだけで生きてるようなものだ。あまり深く考えずに行動してる人は一定数いる。

 柳沢さんが言いたいのは、そういう人たちまで抑えつけるのは無理だって話だよね。


 でも僕も、はいそうですかって引き下がるわけにはいかない。ここまで半年、静かだけど充実した生活を送ってきたんだ。こんなところでぶち壊されてたまるか。



「僕は中学の頃、この見た目のせいで結構苦労したんだ。自慢じゃないけど、告白だって何回もされた。全部断ったけど、一回一回断るのも心苦しかった。そうならないためにここまで素顔を隠してきたんだ」


「………大変だったんだねえ。って言うのは簡単だけどさ。それが山倉くんにとってどれほどのものだったのかはあたしには分からない」



 でもさ、と彼女は続ける。



「一度きりの高校生活だよ?少しくらい楽しんだって、罰は当たんないっしょ。そうなるようにあたしも協力するからさ」


「柳沢さん………。そう言って、本当は僕が表に出てくるのを面白がってるだけでしょ」


「あ、バレた?………けど、あたしは全員にこの文化祭を楽しんで欲しいからさ。そこにキミがいないのは寂しいじゃん?」


「…分かった。やるからには全力でやる。ただでさえ僕は信用がないんだ、行動で示さないとね」



 どうせやるなら中途半端にやる訳にはいかないからね。それが逆効果にならないことを祈るけど。


 話はまとまったので、柳沢さんは教室に戻ろうとする。が、扉に手をかけた瞬間になぜか立ち止まる。

 そして一度ドアノブから手を離し、こちらに振り向く。



「……思い出した。ずっと引っかかってたんだ。どこかで見たことある顔だなーって」


「急にどうしたの?早く戻らないと授業が……」


「キミ、大人気中学生モデルの“KuRaM(クラマ)“でしょ」




 その名前は僕のもう一つの正体。


 よりにもよって、一番バレたくない人にバレてしまった。




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