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73.あたしに出来ること

閲覧感謝です

 


「じゃあセンパイ、また連絡するから!今度はママも一緒に連れてくるから!」


「うん、楽しみにしてるよ」


「ルナも、頑張ってね?」


「もぅ、エミリーちゃんまで…」


「本当に送らなくて良かったのかい?先に二人の家まで行くから一緒に乗っていけば良いのに」


「そこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ。食事代も払ってもらっちゃいましたし、駅からも遠くありませんから。お気持ちだけいただいておきます」




 謙遜でも何でもなく、真琴は本心からそう言う。小次郎もあまり引き留めることはせず、再会の約束をしてエミリーと信乃を車に乗せ去っていった。


 二人も駅に向けて歩く。まるで知らない街ではあるが、比較的大きい街だったため迷うことなく駅に到着した。

 最寄りの駅で共に降車し、二人の他には誰もいないことを確認した月奈は今日の出来事を興奮したように話し始めた。




「エミリーちゃん可愛かったなぁ〜…!お顔ちっちゃくて日本語も上手だし!ポージングも表情作りもプロって感じだったし!」


「エミリーは流石だったね。元々お母さんの影響で演技は上手い子だったけど、本人は結構人見知りだったんだ。久しぶりに会ったら全然そうは思えないくらい社交的になってたけど。僕とは正反対だよ」



 真琴くん、ようやくいつも通りに戻ったみたい。撮影の時は別人のように緊張してて、途中から少しずつ良くなっていったけど少し無理してるように見えてた。今はそれが終わったから完全にいつもの真琴くんだけど、やっぱりまだ………。


 ううん、あたしは踏み込まない方がいい。真琴くんはきっと今のままで幸せなんだと思う。あたしに出来ることは今まで通り秘密を守り続けること。

 潮谷さんにもお願いされたんだからしっかりしなきゃ。



「あ、さっき潮谷さんと何話してたの?どうせ昔話なんだろうけど」


「まーねー。絶対言わないけど」


「はぁ…これからは僕の過去がダダ漏れになるのか…。それで、楽しんでくれた?」


「もっちろん!メイクとか色々参考になるのもあったけど、普段の生活でするようなメイクとお仕事でするメイクはやっぱ違うんだなぁーって」


「…よかった。ただ居心地悪くさせただけだったらどうしようかと思ってたから」



 最初はちょっと居心地も悪かったけど、途中からはそんなこと考えてられないくらい夢中で見学してた。

 もちろん、真琴くんに。


 貰ってばかりのあたしは真琴くんに何を返せるんだろうと、何度も考えて来たのに思い浮かばない。あたしはどうすれば…。



「あ、着いちゃった。わざわざ送ってくれてありがとね」


「このくらい当然だよ。じゃあ、今度はプールで」


「そだね。ほんと、今日はありがと。楽しかった」



 小さく手を振って真琴くんとは玄関で別れる。お父さんはしばらく出張だって言ってたから家にはいない。


 あたしは軽くシャワーを浴びてベッドに転がり込む。あー…肌ケア忘れた…。後でやろ。


 プール…普通ならあたしたちがナンパされるのを心配しなきゃなんだけどねー…。絶対真琴くんの方がモテるし、てっちゃんも十分イケメンの部類だからなー。



「自信なくすわぁ〜……」



 いや、別に良いんだけどさ。ナンパされたって迷惑なだけだし。それでもこう、思うところはあるわけで。


 なんもないのが一番。うん、やることやってさっさと寝よ。







 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———







 数日後。



「水着は持った、日焼け止めも塗ったし持った。メイクは濡れても大丈夫…だよね?」



 迎えたプール当日。ここ何日かで一気に陽射しが強くなって、日焼けにも一層気を使うようになった。長袖ばかり着ているからそこまで影響は無いけど、顔や首はどうしても防げない。日焼け止めをベッタベタに塗って、僕はセミが元気に鳴いている外へ出る。



「真琴くんおっはよー!」


「おはよう美波。元気そうで何よりだよ」


「もっちろん!でも暑いしちょっと日焼けもしちゃったんだよー」


「うわ、結構焼けたね。それプール入る時痛いでしょ」



 僕の部屋の前で待っていた美波。露出度がまあまあ高い白のワンピースを着て、いつもの笑顔で挨拶される。本人が言う通りに真っ白な肌は小麦色までいかないくらいに焼けていて、腕にもくっきりと半袖の跡が残っていた。


 世間話も程々に、集合場所であるいつもの駅前に向かう。既に哲也も月奈も待っていて、日陰で涼んでいるようだった。



「おはー……ちょ、美波焼けすぎじゃない?ちゃんと日焼け止め塗ってんのー?」


「塗ってるよ!おばあちゃん家の方がずっと暑かったんだって!」


「おいす。真琴は長袖羽織ってんのかよ、暑くねーの?」


「これ、通気性が良いから全然暑くないんだよ。というかその為に買ったんだし」



 最初に話すことがこれなんて、きっとみんな夏の暑さに参ってるからなんだろうな。


 そんな陽射しに見守られながら、僕らはレジャー施設へ出発した。



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