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66.カップルモード

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昼食を済ませた二人はさっき話した通り、真琴が目を付けていた店舗を巡る。洋服や化粧品など二人の共通の趣味に限らず、真琴のミニマリストの疑いを良い加減晴らそうとインテリアを見たり。果てには海外の置物を取り扱っている謎の店にまで足を踏み入れたり。


気付けば、空が赤く染まる時間になっていた。




「いやー、面白かったねぇ〜。真琴くんのおすすめの化粧水、早速今日から使ってみよっかな」


「僕も色々試したけどそれが一番肌に合ってたんだ。人によって合う合わないはあるけど、月奈の言う感じだと僕と同じ肌質みたいだから心配しなくて大丈夫だと思うよ」


「やっぱ詳しいねぇ。でもさっきのマトリョーシカは笑ったなぁ。まさか中から藁人形が出てくるとは」


「あれは傑作だったね。誰かがイタズラで仕込んだのかな」



何かいいものはないかと探していた時、海外のお土産屋さんで見つけたマトリョーシカが目に付いた。

マトリョーシカといえば中からさらに同じ人形が出てくることで有名だけど、まさか人形は人形でも釘が刺さった藁人形だとは思わないでしょ。今夜の夢に出てきそうで怖い。


他にも服とか色々買っちゃったけど、結構衝動買いに近かったかもしれない。ただでさえバイト生活で、家賃も払わなきゃいけなくてお金も使っちゃったからしばらく節約しないとなぁ。


そろそろ帰ろうかという雰囲気になった時、ゲームセンターの前を通りかかる。やっぱり街のゲーセンとは違ってキラキラしてるなぁ、などと思っていると、珍しく月奈が興味を持っている様子だった。



「ねね、プリ撮らない?」


「プ…?」


「プリクラのこと!もー、真琴くんってこういうの全然興味ないよねー。モデルやってたわりには」


「プリクラって恋人同士で撮るものじゃないの?これって偏見かな?」


「さすがに偏見かも。別に友だちでも撮るし、あたしだって美波とか凛ちゃんと撮ることもあるし。じゃあ行こっか」



なんだか気恥ずかしいけれど、月奈の頼みとあれば断れない。僕の頼みも聞いてもらった訳だしね。

でもプリクラ機に辿り着くまでかなりの数の視線が向けられてる。嫌な感じはしないけどすっごい見られてる気がする。


どこか居心地の悪い思いをしながらカーテンを上げて機械の中へ。



「な~に~?緊張してんのぉ~?」


「ちが………わないけど。…その、初めてだから加工した写真を撮るぐらいの知識しかないんだ。なんかポーズと指定とかあるんだっけ?」


「ぜーんぶあたしが教えますよ。まー、真琴くんなら加工は必要ないと思うけどねぇ。ささ、どうぞこちらに」



結局何も教えてもらえないまま、月奈が機械にお金を入れてしまった。手慣れた様子で機械を操作する月奈を横目に、僕は緊張でガチガチになっていた。

月奈とあまり広くはない室内で二人きり。今日も可愛いなとか、僕のためにわざわざ来てくれたんだとか、この気持ちを自覚してから余計に意識するようになってしまった。


月奈が機械を操作し終えると、未だに緊張している僕を見て爆笑している。だいじょーぶ、といつもの軽い口調で緊張を和らげてもらったが、目の前の機械から何やら妙なワードが聞こえてきた。



『カップルモード〜〜!!』


「……………………はい?」


「えへへっ、やっぱ男女二人揃ったらこれしかないっしょ!」



えへへじゃないんですよ月奈さん。可愛いけど。可愛いから許してしまう自分が憎い…。


カップルモード…って何やるんだろう。意外と普通のと変わらなかったりして。そうだといいなぁ。たぶん違うんだろうなぁ…。



『まずは二人で抱きしめ合ってー!5――!」


「こうやって指示されるから、その通りのポーズをするの!ほら早く!」


「えぇっ!?急には無理だって!」


「ああもうっ!かくなる上は!」


『はいチーズ!』


「えいっ!!」




シャッターが切られる瞬間固まったままの真琴に、月奈は覚悟を決めて抱きついた。その状況に真琴の混乱は加速する。写真を撮られた、月奈に抱きつかれた、これが現物として残る。


その時真琴は気付いてしまった。プリクラという装置の恐ろしさに。

しかし逃げようとしてももう遅い。入り口は月奈に押さえられているし、ここで逃げては男が廃る。思い人が望んでいるのなら、それに応えなければならないのが惚れた弱み。


自分よりも遥かに小柄な少女に抱きしめられている今、諦念と共に男を見せる覚悟を決めたのだった。




『次は彼氏さんが彼女さんの肩を抱き寄せてー!5――!』


「今度は真琴くんの番ですよー?一回やったんだから次はいけるっしょ?」


「そうだね、もう大丈夫。じゃあちょっと失礼して」


「えっ?躊躇なさすぎない?あわわわ…。真琴くんの目が据わってる…」


「余所見したらダメじゃないか。ちゃんとこっち見て」


「ひゃうっ!?耳元はだめぇ……!?」


『はいチーズ!』




フラッシュに写し出されたのはリンゴよりも真っ赤になった月奈と、いつもとは正反対の積極的な真琴の姿だった。



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