64.ブーメラン
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このショッピングモールには初めて来たけど、歩いているだけでも興味をそそられる店がたくさんある。今日のお目当てはあくまでも水着だけど月奈と一緒に買い物をするって約束もあるから、水着を買った後に色々見て回るために今のうちに目星を付けておく。
そうしてやって来たのはスポーツウェアなどを取り扱う有名メーカーの店舗。機能性重視のお店って訳じゃなくて、ちゃんとカジュアルな物も多く取り扱っている。
「はえー、初めて来たけどすっごいねぇ」
「結構印象と違うね。もっとスポーツ用具とか扱ってるのかと思ってたよ」
「あれ、知らない?最近のこういうメーカーってファッションブランドもあったりするんだけど」
「そうなんだ。普段はどうしても見た目重視になっちゃうからあんまり調べたことなかったかも。確かに最近の流行りはスポーティー系が多かった気もするな」
興味が出てきたので水着そっちのけでインナーなどを見てしまう。気になったら身体が動いちゃうのはモデル時代からの悪い癖で、これが原因で遅刻したことがあったりもした。
幸い、月奈が引き戻してくれたおかげですぐに止められたけど。今日の目的は水着だって何度も自分に言い聞かせる。こうでもしないと無限に寄り道してしまいそうだ。
シーズンだからか、水着やサーフィンなどのマリングッズのコーナーは広く展開されていた。これなら選び放題だね。
「豊富な種類、最強の着せ替え人形……腕の見せどころですな」
「期待してるけど、程々にね?」
「分かってますってぇ。あたしだって偶には良いカッコ見せたいの。それじゃまずこれと、それからこれ、あとこれもかな」
そんなことしなくても月奈は十分かっこいいと思ってるけどなぁ。口には出さないけど、普段からみんなをまとめている月奈のことはちゃんと信頼しているし、そういう部分も好きになった一因…なのかもしれない。
表情に出さないように気を付けながら月奈セレクトの水着を受け取って試着室で着替える。当日はメイクをしても意味がないだろうからあんまり参考にならないかもしれないけど、月奈は僕のすっぴんを知ってるから大丈夫だと思う。
1着目に着替えて試着室のカーテンを開ける。あ、今さらだけど上半身出すのちょっと恥ずかしいな。
「どう?」
「なるほど…オーソドックスはありだね。素材が活きてる感じがする。後ろも見せてー」
「はい。これいいね、僕的にも結構気に入ったかも」
「こりゃ1着目にして勝負あったかなー。まあ一応他のも見せてほしいな」
1着目は黒無地のシンプルなタイプ。シンプルイズベスト。それ以上言う事がない。
2着目は…これは似合わないかもなぁ。
「あー…うん、もういいよ」
「判断が速すぎないかな?」
「だってこれじゃない感が半端ないんだもん。ほら、真琴くんってお肌が綺麗で全く焼けてないから、こういうアロハな派手系はまるでダメだね」
「まさかこんなところで弊害が出るとは…」
別に困りはしないけど。それに最後のコレに比べたらまだまだマシな部類だ。だってこれ、どう考えてもレジャー施設に着ていくものじゃないし。
「ねえ…これ本当に見せるの?哲也もいないんだし意味なくない?」
「まあまあ。一応、一応ね?」
「えぇ…。まあいいけど…」
最後の水着はまさかのブーメランパンツ。いや流石にこれはないでしょ。僕は別にムキムキマッチョメンじゃないし、泳ぎが得意でもない。ましてやレジャー施設だと確実に目立つし浮く。プールだから浮くのは当たり前とかそういうボケじゃないからね。
「ぶっふぉ」
「月奈さん?何を吹き出しているんですかね?」
「い、いやだって…!ひぃっ、似合わないとかいう次元の話じゃないし…!」
「もう終わり!最初のやつ買うからね!」
やっぱりただの悪ふざけだった。だってこれがどう考えても似合うわけがないって、哲也ならともかく月奈が分からないはずがないからね。
さて、お会計も済ませたし後は自由に買い物を楽しむ時間だ。そう思って店を出ようとすると、月奈の足が止まっていることに気づく。
「月奈、どうかしたの?何か気になる物でもあった?」
「ううん、何でもない。さ、行こ行こ」
「なら良いんだけど。特に何も決めてないしどこに行こうか。僕としては気になるところが幾つかあるからそこに行きたいんだけど…」
「じゃあそれ全部行こ?ここちょっと遠いからあんま気軽に来れないし、あたしも真琴くんの好みとかおすすめとか気になるしねー」
体調が悪いとかそういう感じじゃ無さそうなので、気にせず僕も楽しむことにした。
それから色々見て回っている最中、僕らは少々厄介な事態に巻き込まれる。
「あれっ、山倉くんに月奈ちゃんじゃん!二人はお買い物?」
学校から距離があるはずのこの場所で、ついこの間まで教室で顔を合わせていたクラスメイトの一団と鉢合わせてしまった。




