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63.水辺のファッションマスター

閲覧感謝です

 



「「ありがとうございます真琴様………!」」


「それこの前も見たような気がするんだけど」




 無事に赤点を回避して平伏する美波と哲也。真琴はそれを見て苦笑いするばかり。ちなみに真琴も少しだけ成績が良くなっていたので、内心ホクホクである。


 ともかく、これで気にする事なく夏休みを満喫することができる。しかし真琴は厄介な用件がいくつかあるためその限りではない。先日の潮谷編集長から呼び出された一件に加え、両親から姉と共にいい加減実家に顔を見せろと催促されていることもあり―――当然二人とも乗り気ではない―――少しばかり憂鬱になるのも無理はない。


 しかし、その分楽しい予定も計画されているのが救いだった。




「えっへへ〜、みんなでプールだぁ〜」


「有名なところなんだっけ?なんとかサマーランドって」


「ああ、そういや真琴って上京してきたんだっけか。簡単に言えばプール版の遊園地だな。ほら、こないだ月奈行ったろ?」


「………それはそうだけど、どうしてその事を哲也が知ってるのかな?僕、話した覚えはないんだけど」


「落ち着け。あのチケットは俺がたまたま手に入れたやつなんだよ。でも俺って遊園地なんてガラじゃないだろ?だったら月奈に渡して美波とでも行くかと思ってたんだが…。後で聞いたら美波は行ってないって言うからよ。じゃあ真琴しか居ねえよなって寸法だ」


「嘘くさい。0点」


「エピソードトークの採点すんな。あと嘘くさいはお前の主観だろうが!」



 だって妙に口数多いし、誰だって怪しいって思うでしょ。月奈も微妙な表情してるし、なぜか美波も同じような感じだし。これはアイアンクローだね。


 痛がる哲也(あばばばば)は置いといて、美波が夏休みに遊びたがっていたのでどこが良いかと話し合ったんだけど、僕は当然その辺りはよく分からない。もうこっちに来てから一年半なのにこの間の遊園地でさえうっすら存在を知っていたくらいだ。

 なので候補は自然と他の三人の好みに合ったものになる。その中でもより夏らしいとなると、やはり海やプールは外せない。山やグランピングのような選択肢もあったけど、全員海派だったのと大人がいないと行けないので却下。


 その前に僕は潮谷さんのところに顔を出して、一発キツいのをお見舞いしないといけない。

 さらにその前に僕は水着を持っていない。哲也は先に気づいていたようだけど。



「真琴、どうせ水着なんか持ってないだろ?ここ水泳の授業ねえし」


「そういえばそうだね。今度買いに行かなきゃ」


「お前に言うのもアレだが、女子陣に選んでもらうのはどうだ?男の水着選びのセンスなんて酷いもんだからよ」


「そういうものかな。プールに行くの自体が初めてだから全然分かんないや。でも良かったらお願いしてもいいかな?」


「もち。水辺のファッションマスター月奈ちゃんにお任せあれ!」



 よく分からない称号と共にドヤ顔をする月奈。どこからその自信が来るのか、けど少なくとも僕よりは知識があるだろうからありがたく頼らせてもらおう。



「美波も来るっしょ?」


「うーん…ねえねえ月奈。ちょっと耳貸して」


「え?…………いやそうだけど………分かった分かった。ごめん真琴くん、美波がしばらく忙しいみたいで」


「全然大丈夫。お家の事情とかあるだろうし、そういうことなら3人でも…」


「何言ってんだ、俺も行かねえぞ?言っただろ、俺のセンスなんかアテになんねえし、俺もちょいちょい予定入ってんだわ。楽しみにしてるからな」


「なんで哲也が楽しみにするんだよ。いや、そもそも男子の水着なんか楽しみにしたってしょうがないんだけどさ」



 二人とも事情があるみたいだし、僕らだけで行くしか無さそうだ。本当に勝手が分からないから月奈のセンスに全てを委ねることになってしまうけど、月奈ならきっと良いものを選んでくれるはずだ。






 そして始まった夏休み、その最初の週末。僕らはいつものように待ち合わせをして、電車に乗って最寄りのショッピングモールへと向かう。

 なぜ普通の店ではなく大きな施設に向かっているのかというと、この間の遊園地デートの時に一緒に買い物に行こうと約束したのを覚えていたからだ。どうせ目的が買い物なら、これからやってくる猛暑に向けて色々買い揃えるのも良いなと思ったんだ。




「久々に来たけどでかいねー」


「こんな所があったなんて…どうして今まで気づかなかったんだろう」


「本当に真琴くんって近場で済ませるタイプなんだねぇ。ここ、何でも揃ってるから結構便利なんだよ?10月になったら修学旅行もあるんだし、その時になったらまた来よーね」


「修学旅行……そういえば行くの初めてかも。小学生の時はそもそも無かったし、中学の時は色々あったせいで行けなかったんだよね」


「………なんかごめん。でも今年はあたしたちがいるし、プールも修学旅行も思いっきり楽しんじゃおうぜ!」




 気遣ったようにも見えないその笑顔に、真琴はますます骨抜きにされていくのだった。




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