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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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6.陰キャ男子と不運の連続

閲覧感謝です

 



 秋といったら何を思い浮かべるだろうか。一般的には、食欲の秋や芸術の秋、読書の秋といったキャッチコピーが有名だが、こと高校生に於いてはどうだろうか。


 恐らく二分されることが多いだろう。一方は修学旅行などの課外活動。高校生活屈指のビッグイベントである。


 そしてもう一方は――。




「山倉くん、文化祭があります」


「知ってる。何やるか決まったの?」


「なんで他人事なの。山倉くんも参加するんだよ?」


「僕は裏方でいいよ。表に出るような性格じゃないしさ」




 神木さんとの帰り道。あれから近くの交差点で待ち伏せされるようになって、それがかれこれ一週間以上。今ではすっかり日常になっていた。


 そんな中、神木さんから提供された話題は、月末に迫った文化祭についてだった。今が十月中旬だから、あと二週間くらいしかない。

 偶にHR(ホームルーム)で話し合ってたみたいだけど、僕は興味がなかったから適当に返事したような記憶がある。


 確か、そろそろ決まるみたいなことを言ってた人がいたな。




「それで、結局何やるの?」


「ふふーん、聞いて驚け!なんと、第一希望のメイド喫茶が通りましたっ!」


「へぇー。じゃあ僕は裏方確定かな。良かった良かった」


「男子は執事の格好して接客するんだよ?」


「へあっっ!?!?」




 ちょっと待って!?なんじゃそりゃ!?そんな話全く聞いて………聞いた気がする。

 あれは(たぶん)最終投票の時………。




『そんなこと言っても、女子だけが恥ずかしい格好するのは不公平じゃなーい?』


『じゃあどうしろってんだよ』


『雰囲気を合わせて…燕尾服着るとか?』


『それいいじゃん!女子はメイドさんで男子は執事!面白くなりそー!』




 一部の生徒が面白がってそんなこと言ってたな…。どうでもいいから聞き流してた…。

 今さらだけど真面目に参加すればよかった。




「変な声出してどしたの?あ、ちなみに裏方だけはダメだってー。二日間のうちどっちかは接客出ろって月奈が言ってたよー」


「嘘でしょ………」




 それ、提案したのも柳沢さんだろ。僕には分かる、あの人は思い付きでろくでもないことをする人だ。


 観念して、どうにか目立たない方法を考えるしかないかな。




「衣装見たけど、いっぱいフリフリが付いてて可愛かったなぁ。スカートの丈は短すぎないようにしてくれたみたいだから、そっちの心配は要らないってさー」


「…でしょうね。トラブルの元になりかねないから」


「月奈はやっぱりしっかりしてるなぁ。私とは大違いだよ。ちなみに、男子の執事衣装もすっごく良かったんだよ!山倉くんは身長高いからよく似合うと思う!」


「そうだといいね」




 と言いつつ、実は前に企画で着たことがあったり。あの時は着慣れない服装とシチュエーションで結構苦労した。

 今は制服でブレザーを着てるから、それほど違和感は感じないと思う。いや、着ないのが一番なんだけどね。


 神木さんからもたらされた情報によって、月末がとんでもなく憂鬱になってきた…。




「じゃ、またね山倉くん」


「うん、また」




 いつものようにエレベーターで別れて、住んでいる部屋に帰る。


 うちの部屋はそこまで広くないんだけど、一人で住むには少し持て余すくらいだ。来客用と言いつつ、全く使っていない部屋があるくらいには。そろそろ物置きに改造しようかと考えてる。


 冷蔵庫の中身を見て、食材が充分あることを確認する。時間はあるので部屋の掃除でもするかと思ったけど、スマホが震える音が聞こえたので足を止める。


 誰かから電話みたいだ。スマホに表示された名前は、『姉さん』。今年の春から東京(こっち)の大学に通う、3歳年上の姉だ。




「もしもし?姉さんからかけてくるなんて珍しいね」


『大学が休講になったの。それで真琴、あんたの学校、文化祭とかやんないの?』


「今月末だけど……それがどうかした?」


『それ、私も行くから』


「勘弁してよ………」




 家族に執事服姿を見られるとか、本当に避けたい案件だ。いくらモデル時代のことを知ってるって言っても写真で見ただけだ。実際に見られたわけじゃないから、恥ずかしさが段違いなんだよ…。


 しかもうちの姉、一緒に上京してきたのに違うところに住んでるから、今の僕の見た目を知らないんだよね。つまり、陰キャモードでも執事服でもイジられることが確定している。




『別に私が行きたくて行くわけじゃないわよ。友達の妹があんたと同じ高校通ってるんだと。しかも一年生なんだってさ』


「僕はたぶん知らないけど、一応名前だけ聞いても?」


『柳沢 月奈って子。知ってる?』


「……ノーコメントで」




 もう知ってるって言ってるようなものだけど、形だけでも否定したかった。よりにもよって一番駄目な人じゃないか。

 ああ、これ…逃げられないんだな。




『じゃ、そういうことで』


「………あんま期待しないでよ」


『そりゃあもう。存分に期待させてもらうわね〜』




 無情にも部屋に響く通話の切断音。今度厄除け行こうかな………。




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