57.ゆるっと体育祭②
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作戦会議とは一体なんなのか。美波の笑顔になぜか嫌な予感しかしないんだけど、気のせいだって信じてる。聞かないわけにはいかないからとりあえず聞いてみるけども。
「えーっと、美波さん?作戦会議っていうのは…」
「月奈がいない今のうちに話しちゃおうと思って。真琴くん、ほんとに月奈のこと好きなんだよね?」
「もちろん。まさかとは思うけど疑ってるわけじゃないよね」
「あっはは、違うよ〜。だって真琴くん、いつまで経っても告白する気配がないからさ〜」
ニヤニヤと笑っている美波。なんだろうこの感じ。誰かと似ているような…。
「今、月奈に似てるって思ったでしょ?」
「それだ…。いつの間にか入れ替わってたんだね…」
「真琴くんってときどきおかしくなるよね」
心外だなぁ。実際に二人の性格は入れ替わってるじゃないか。どう入れ替わってるか説明するのは難しいけど。
「で、告白する気はあるの?ないの?」
「ある…けど、正直言うと自信がないんだ。僕には家事くらいしか取り柄がないから…」
「それは違うよ。真琴くんを好きになった私が言うんだから間違いないって。一つずつ良いところ言ってあげるね。誰にでも優しいところでしょ?しっかり者だしー、あと聞き上手!で合ってるかな?それにね―――」
「ストップストップ!それ以上はいいから!」
びっくりした。急に褒められると照れを通り越して寒気を感じるんだね。
それに好きになった人って堂々と言えるのがすごいと思う。僕はその想いを断ったっていうのに。
「こんなに良いところがあるのに、それでも自信がないって言うの?大丈夫だよ、私が今言ったことはぜーんぶ月奈も思ってることだから」
「はは、それはどうだろうね…」
「まだ疑うのー?そんなに疑ってばっかりだと月奈に嫌われちゃうよー?」
それは全力で勘弁してもらいたい。だけど月奈とは“仲の良い友達”って感じだし、その関係が壊れるのが怖い。そうなるくらいなら何もしない方が良いんじゃないかって。
僕がビビってるだけっていう自覚はある。だけど具体的にどうするべきなのかが分からない。
それも全部引っくるめて、自分を信じられないんだ。
「そんなに怖がることないのに。私は絶対成功すると思うけどなー」
「美波が言うならそうなのかもしれないけど、僕は……」
「あー、もう!ウジウジしないの!そんなんじゃ誰かに取られちゃうよ!」
「分かってる…分かってるんだ。月奈はたぶん、僕が思ってる以上に人気があるんだよね」
美波は深く頷いて、真剣な眼差しで僕のことを見据えている。そうだよな、このままじゃダメなんだ。もっと堂々としていないと、月奈は振り向いてくれない。
目の色の変わった真琴に、美波は思わず拍子抜けしてしまう。真琴の意識を変えるにはもう少し手こずるかと考えていたのだが、こうも簡単に出来てしまうとは思いもしなかったためである。
なんとも微妙な表情をしている美波。一方の真琴は不思議そうにしているため、内心で少しばかりイラッとしたのはここだけの話だ。
「なんか心配して損したかも」
「え?何の話?」
「どーでもいい話。もうだいじょぶそうだし、月奈を絶対に落とす作戦、考えよっか」
二人の気持ちを知っている美波が何食わぬ顔でそう言うのは、彼女に悪女の素質があるからなのかもしれない。
そんな事に気付きもしない純粋な真琴は、体育祭そっちのけで美波と会議を行う。この間に月奈の秘密が幾つか明るみになり、後にそれを知った月奈が激怒するのだがそれはまた別のお話。
やがて怪訝そうな顔で月奈が戻って来ると、美波と真琴は息の合ったコンビネーションで話していた事を誤魔化す。月奈は若干疑っていたものの、まだまだ時間が経っていない中でどうこうなるとは思えないために意外と簡単に信じたのだった。
真琴はクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出し、それを汗だくの月奈と凛緒に手渡す。冷えに冷えた水分は疲れた身体をリラックスさせていく。
「ふぅー…染みるねぇ……」
「おばさんみたいなコメントしないの。るーちゃん、なんか老けて見えるよ?」
「やかましいわ。でも島乃井くんには感謝だねぇ。まさかあたしたちの分まで用意してくれてるなんて」
「すごいっしょ、私の幼なじみ。実は良いとこのお坊ちゃんだったり」
「え?マジで?」
「したら嬉しかったんだけどね。仁の親がすごい優しいってだけですわ。結構似た者親子なんだよねー」
そんな話をしていれば、今度は真琴の出番がやって来る。女性陣に別れを告げて集合場所へ向かう真琴。なお哲也は連続で参加しなければならない。あまりにも不憫な彼は泣いていい。
さて、この場から真琴が消えて月奈が戻って来た。それが意味するところはもちろん。
「じゃあ月奈、作戦会議、しよっか♡」
やはり美波には悪女の素質があった。




