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56.ゆるっと体育祭①

閲覧感謝です

あとストックが尽きました

 



 新学期が始まって1ヶ月が経った。最初の方は慌ただしかったけど、僕ら2年生は去年と変わることなんてほとんどないからすぐに落ち着きを取り戻した。

 ゴールデンウィークの休みもそこそこに、僕らは新学期最初の行事を迎える。




「てなわけで体育祭なんだが………お前らもうちょいやる気出せ」


「「「だってぇ……」」」


「だってもヘチマもないわ。つーかまたこの3人かよ!球技大会の時もそんな感じだったじゃねえか!!」


「暑くなるの早すぎないかな?もう少し春の陽気を楽しませてくれたっていいじゃないか」


「そりゃあ地球温暖化がどうとかそういう話だろ。俺にゃ難しいことは分からん」




 体育祭。学校によって時期は違うが、真琴たちは春。秋にある文化祭と被らないようにするためだ。そして体育祭を前にぐでっとしているのは、真琴、月奈、仁人の3人。運動はできるのになるべく動きたくない、インドア派の彼らは憂鬱な気分になっていた。


 唯一の救いはこの体育祭、ほぼ真剣な要素がないので体育よりも祭りの側面が強くなっているところだろうか。と言っても体を動かすことに変わりはないのだが。


 この日、各々の出場種目の選択が行われたのだが、3人とも一つはハードな種目に出ることが決まってしまったため、こうしてぐでっている訳なのだ。




「しかも俺に比べたらマシだろ。俺なんか綱引きと短距離走、長距離走に騎馬戦。それから…」


「てっちゃん何個出るつもり?イカれてるんじゃないの?」


「お前らがやる気出さねーからだろうが!!…ったく、どうして今年のクラスにはやる気ない奴が固まっちまったかな…。おかげで体育委員を引き受けたのがとんだ貧乏くじになっちまったぜ」


「助かるよ。僕らは出る種目が減ったわけだしね」


「何奢らせるか考えとかなきゃな…」



 実際はそんな深刻な話でもないけどね。ただの悪ノリに哲也が乗っただけだし。でも来月、哲也が誕生日だからその時までに欲しそうな物探しとかなきゃ。

 哲也は体育祭の準備で忙しそうにしてるし、誕生日会とか計画するのもいいかもしれない。後で月奈と美波…はうっかり喋っちゃいそうだな。直前に伝えよう。


 ちなみに体育祭は二週間後。僕らも授業内で練習とかするらしい。先生が言うには、騎馬戦とかで怪我されたくないって。僕は騎馬戦には出ないけど、見てる分にも楽しい種目だからね。誰も怪我しないのが一番だ。


 そんなこんなで二週間なんてあっという間だった。5月下旬、異様な暑さの中で体育祭は幕を開けた。



「あっづ〜い……」


「インドア派の僕らには結構辛いね…」


「もー。みんな元気出してよ!そんなんじゃせっかくの体育祭なのに楽しめないよー?」


「美波は元気だねぇ…。あー…溶けてスライムになりそ………」



 月奈の言う通り、今日は尋常じゃなく暑い。冗談とか大げさなんかじゃなく、本気でそう言ってる。実際、気温は30度に迫るくらいだからね。やってられないよ。


 最初の種目は短距離走。出場するのは哲也と高槻さんだ。二人とも結構期待を受けてるみたいで、順番も最後の方の組に調整されてる。


 パァン!とスターターの小気味良い音が何度も鳴り響く。一回一回が短時間で終わるからか、出場者も多く設定されているこの種目。女子の最後の組で出てきた高槻さんは、周りの女子を寄せ付けずに1位でフィニッシュ。後から聞いた話だけど、その中には陸上部も混じっていたらしい。あれで高槻さんは帰宅部だというのだから恐ろしい。


 そして男子の最後の組で哲也の出番がやってくる。



「哲也ー!頑張れー!」


「がんばれてっちゃーん…あ、次あたしが出るやつだ。真琴くん、応援よろしくね」


「もちろん。哲也の応援の100倍気合いを入れるよ。頑張って」


「そりゃ心強いねぇ。ま、気楽に楽しんできますか」



 月奈を見送って再びグラウンドに目を向けると、既に哲也の出番は終わっていた。表情から察するに1位だったみたいだ。二人とも帰宅部なのにすごいなぁ。



「お疲れ、流石だね」


「まだまだ全力じゃねえよ。こっから山ほど動かなきゃなんねえし、少しでも体力は温存しとかなきゃな」


「ごめんね灰崎くん。大変でしょ?」


「そうでもねえよ。俺がやりたくてやってんだから、お前らが気にすることじゃねえっての。よっし、んじゃ行ってくるわ」


「あ、僕も同じ種目出るから行かなきゃ。凛緒ちゃんと柳沢さんにクーラーボックスの中身渡しておいてくれる?冷たいお茶とかスポーツドリンクとか入ってくるから」


「用意がいいね…。分かった、渡しておくよ」



 集合場所に向かう二人を見届けて、気付けば僕と美波の二人きり。仮設テントの下でどことなく気まずい空気が流れる。

 あれからもう3ヶ月。一緒に帰るのはやめたし、前ほど話すこともなくなった。だけど仲が悪くなるなんてことはないし、むしろ前より気兼ねなく話せてるような気さえする。


 だからかな。この状況は余計におかしいと思うんだ。



「さ、みんなも居なくなったことだし。作戦会議、しよっか♡」




 この日、美波のイメージが180度ぐらい変わることになる。




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