52.逆転デート
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デート当日。真琴はやけに気合いの入った格好のせいで、待ち合わせ場所でも常に注目を集めていた。しかしいい加減に学習し、ここ以外で使わないであろう人を寄せ付けないオーラを習得していた。
目立つのは致し方なし。それが反対にいい目印になったようで、彼の姿は一瞬で月奈の視界に入った。
真琴もすぐに気付き、二人はは迷うことなく合流した。
「おはよ。あたしから誘ったのに早いねぇ」
「楽しみで眠れなかっただけだよ。それと…その服、すごく似合ってる」
「へへ、ありがと。真琴くんは今日もかっこいーね。ほら、時間がもったいないし早く行こ?」
「う、うん」
なんか、今日の月奈には違和感がある。いつもなら褒めたらすぐ照れるのに、今日は照れるどころか褒め返してくるなんて。
そういう日もあるか。むしろ僕の方こそ動揺するなんてらしくないな。大丈夫、深呼吸して落ち着こう。
「どしたの?深呼吸なんかして」
「何でもないよ。今日は天気が良いなーって」
「せっかくのデートだし、晴れてよかったよねー。あ、見えてきた」
デート…やっぱりそうなんだ。月奈のことだから僕をからかっているだけだと思うけど、どうしても意識してしまう。
いつもと何も変わらないはず。だけど2人きりでっていうこの状況。嬉しい気持ちと緊張とが半々で心臓はずっとバクバクだ。
それに僕のためにおしゃれしてきてくれたのかなとか、月奈も楽しみにしてたのかなとか。誘われた時は全然なんてことなかったのに、いざ来てみたら月奈がいつもより可愛く見えてくるし。恋は盲目ってこういうことを言うのかな。
さすがに自意識過剰すぎるかも。遊園地に入ったら全力で楽しむ方に切り替えよう。せっかくの遊園地なんだしデートだなんだって気にしてたら楽しめないからね。
「遊園地なんて久々だなぁ。小学生の時以来かも」
「そうなの?じゃあ今日は思っきし楽しまなきゃじゃん」
「でも結構混んでるね。月奈は行きたいアトラクションとかあるの?」
「ジェットコースター!…と言いたいところだけど、視界に入れたらやっぱムリ。真琴くんは?」
「あれ?月奈は僕が好きな映画、知ってるよね」
「ま、まさか………」
時すでに遅し。震える月奈の眼前には真琴の好きなホラー、すなわちお化け屋敷がそびえ立っていた。
いかにもな雰囲気を醸し出すそれに、月奈は逃げの一手を取ろうとする。だが自分から誘った手前、真琴にも楽しんでもらわなければならない。笑顔で促す真琴を見て、諦めるほか道は無かった。
そしてその様子を見つめる怪しげな男女。言わずとも気付いたと思うが、哲也と美波である。当事者の預かり知らぬところで作戦を立案し、さらにバレずに2人の仲をアシストするのが彼女たちに課せられた任務。
それを遂行するために、帽子にサングラス、牛乳にあんぱんなどと、警察なのか探偵なのかよく分からない真似事をしているのだった。
「いやー哲也さん、あれどう思いますか?」
「そうだな…。どうやら真琴のやつ、デートって単語を意識から除外して、自分が楽しむことを優先したようだぞ」
「なんですってぇ!?…たぶん月奈も同じようなことやってるよね」
「んー…ありゃちょいと違うな。むしろ逆かもしれねえ。今日は主導権を握ってるみてえだし、デートを意識しすぎて無敵モードに入ってやがる」
つまりはヤケクソだな。あの無自覚イケメンムーブかましてくる野郎には抜群に効くと思うが。しっかしあれじゃいつまで経っても仲は縮まらねえわ。もっと直接的な何かが…あ。
「美波、行くぞ!」
「ええっ!?急にどうしたの?」
「ハッハハ、ちょっとだけ良いこと思いついてな。お前もあいつら見てやきもきしてたんだろ?」
「それはそうだけど」
そうして哲也と美波は二人の後を追ってお化け屋敷へと入っていった。
一方の真琴たちはお化け屋敷の中で想定外の事態に直面していた。
「ゔあぁぁぁ…」
「ひゃっ!?ね、ねえ真琴くん…出口まだ…?」
「まだまだじゃないかな。でも拍子抜けだなぁ。これならまだB級スプラッタの方がマシかも」
「どこがぁ!?めっちゃ怖いってぇ……」
それはこのお化け屋敷が真琴のお眼鏡にかなわなかったことである。普段から平気で血や臓物が溢れる映画を見ている真琴からすれば、この程度のゾンビもどきなど苦にもしない。
しかし月奈はもちろん違う。静かな空間に微風が吹き抜け、時折呻き声が聞こえてくる。それだけでも月奈が恐怖を感じるのには十分。有り体に言ってしまえばビビり散らかしていた。
せっかくデートの主導権を握ったと思えばこのザマである。とはいえ今の真琴からすればそれすらも魅力。普段見ない怯える月奈の姿に心臓はさらに高鳴る。
「大丈夫、怖くないよ。僕が隣にいるでしょ?」
「じゃあ…手、繋いでてくれる…?それなら安心だから……」
「うん、分かった」
柔らか…じゃない、どうしてこうなった。いや、うん、役得だとは思うけどね。ただ月奈は本気で怖がっているみたいだから滅多なことも言えないんだけど。やっぱり月奈の手って小さ…じゃなくて、微妙に震えてる。ここに連れてきたのは僕のわがままだし、安心させるように手を優しく握る。
何かあっても僕が守るからって。
その様子を後ろから見ていた探偵もどきは呆れ返っていた。
「なあ、やっぱアシストとかいらねえだろ」
「もう帰ろうよ。私見てられないよぉ…」
「なんか悪りぃな…。お詫びに昼飯でも」
「ほんと!?じゃあオムライスにパフェにケーキでしょ?それから…」
「………限度は弁えてくれよ?」
哲也はどこまで行っても不憫であることに変わりはないようだ。




