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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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49.私の王子様

閲覧感謝です

 



 美波はすぐにやってきた。こう言っちゃ悪いけど、間の抜けている美波でも今回ばかりは用件を理解しているみたいだ。


 彼女の姿を見た瞬間、なぜか出会ってからの出来事がフラッシュバックする。それはそうか。感謝を伝える機会は意外と初めてだったりするし。


 最初は路地裏だったね。変な男たちに絡まれてる美波を見て、無視すればよかったのに首を突っ込んでしまった。そして君に素顔がバレた。

 それから僕の生活は一変した。それまで隠れて哲也とゲームするだけだった高校生活は、こんなことをするようにまでなってしまった。




「真琴くん?」


「ああ、ごめん。今日はホワイトデーだから、バレンタインデーのお返しをと思って。はいどうぞ」


「………ううん、これは受け取れないよ」




 なぜか美波にお返しを拒絶されてしまう。まだ中身も見ていないのに、一体どういうことなんだ?




「それはどういう――」


「ねえ、私たちが出会ったときのこと、覚えてる?」




 突然の問いに、思わず固まってしまう。覚えてるも何も、ついさっき思い返してたところだ。そんな偶然があるのか?


 考えたところで分かるはずがないので、とりあえず答えを返す。




「それは…もちろん」


「私ね、ずっと漫画の白馬の王子様に憧れてたの。いつかあんな運命的な出会いをしてみたいって。でもあの日、私は本当にバカなことをした」



「…………………………」



 紡がれる言葉を、僕はただ聞いていることしかできない。今、美波が何の話をしているのか理解できていないからだ。

 側から聞けば美波が自分の話をしているだけだろう。でもなんとなく、黙っていた方がいいような気がした。意味は理解できずとも、そこに意義があると感じた。


 美波はさらに続ける。




「正直、もう終わりだと思った。今まで現実を見てこなかった罰が当たったんだって。でも、本当に王子様はいた」


「…………………」




 感じていた予感はきっとこのことだったんだ。逃げ場なんてない。逃げるつもりもない。彼女の目を見て、その言葉を受け止める。




「大好きだよ…私の王子様。出会ってからも、それからも。私は山倉 真琴くんが大好きです」


「美波………………じゃあなんでホワイトデーのお返しを…」


「だってもう気づいちゃったもん。真琴くんは私には振り向かないって」




 こんなに真剣な表情の美波は初めて見た。だから今の言葉にもきっと嘘偽りはない。


 そして、僕はそれを断らなくちゃいけない。とても心苦しいし、胸の奥が絞まるような感覚に襲われる。




「美波…僕は………」


「言わなくても大丈夫だよ。フラれるって分かってて告白したんだから。……月奈のことが好きなんだよね」


「………………ごめん」


「なんで真琴くんが謝るの。むしろ謝らなきゃいけないのは私の方なのに。真琴くんが困るって分かってるのに、それでも告白したのはただのわがままなんだから」




 違う。それだけは違う。わがままなんて言わないでよ。これは美波にとって必要なことだったはずだ。だからこそ気持ちに気づいてるのに告白してくれたんじゃないの?


 だけどこの言葉を伝えることはできない。きっと彼女を困らせて、縛り付けてしまうから。


 それでも何か、何か言わなくちゃ。




「………僕は月奈のことが好きだ。その想いに嘘を吐くことはできない。だから…ごめん。美波とは付き合えない」


「…わざわざ言わなくてよかったのに。もう、諦めはついてるし、二人のことを応援するって決めてた…のに…………」


「美波…」


「あれ、なんで…涙が………。止まって…止まってよぉ……。真琴くんにこんな恥ずかしい姿、見られたくなかったのにぃ………………」




 ぼろぼろと涙が溢れ、泣き出してしまう美波。それだけ彼女は本気だったのだ。

 今まで恋愛を経験してこなかった美波にとって、初恋がこれほど大きなものになるとは彼女自身も思っていなかった。


 ましてや恋敵が親友で、しかも二人は両片想いという状況。美波はそのことに気付いた時、スッと諦めがついた…はずだった。

 何も言わずに終わるより、全て曝け出して綺麗に初恋を終わらせよう。最初はただそれだけだったのだ。だが真琴の言葉を聞き、想いは…涙は止まらなくなっていた。




「真琴くん…もう行って…?」


「でも1人にさせる訳には…」


「私なら、大丈夫だから」


「…………分かった。気持ちを素直に伝えてくれたこと、すごく嬉しかった」




 最後まで…。どうしてそんなにも優しいの?すっぱり諦められたはずだったのに、それじゃ未練が残っちゃうよ。最初の会話だけで終わってればよかったのに、真琴くんのなんでも気になっちゃう性格はマイナスポイントになることもある、って哲也くんが言ってたけどその通りじゃん…。


 でも、もう大丈夫。涙も落ち着いた。これからは胸を張って失恋した女子として生きていくんだ。


 …やっぱり気持ちの整理にはもう少しかかるかも。半年って長いようであっという間だけど、今日だけはすごく長く感じたんだ。これくらいのわがままはいいよね。


 あーあ…終わっちゃったなぁ…。





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