44.新たな日々
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球技大会を終え、真琴は仁人とも仲が深まってきた頃。カレンダーには2月13日の文字。翌日に控えるイベントを意識して、多くの生徒は授業に集中できていなかった。
その事を教師陣も理解しているので、この日に限ってはあまり注意することもなかった。しかし真琴だけは明らかに様子がおかしかった。
理由は単純明快、月奈のことを好きなのだと自覚してしまったから。恋は盲目とはよく言ったもの。彼女の一挙手一投足に目が奪われてしまう。
当然、前の席に座る仁人が気付かないはずもなく。
「どうしたの山倉くん?まさか君もバレンタインでそわそわしてるとか?」
「ぜ、全然?そんなことないけど?」
「誤魔化すの下手だね…。でも意外だなぁ、山倉くんにも好きな人がいたなんて。神木さんと柳沢さんもただの友達って言ってたし、あの二人以上に好きになる人がいるとは思わなかったよ」
「……………………………」
「………嘘でしょ。まさか…」
そのまさかだなんて、教室内で言えるわけない。それに僕も初めての経験で困惑してるんだ。
あれだけ女子を遠ざけてきた僕が、誰かを好きになるなんて。
月奈の隣にいたい、もっと彼女のことを知りたい。その想いが日に日に大きくなっていくんだ。
だけど月奈だって一軍女子。素顔をさらけ出した今だって、僕は元々の立ち位置を変えた訳じゃない。これはあくまでも僕自身の性格によるものだから。
教室で話しかけようにも、月奈も美波も人気者でいつも囲まれているから中々話しかけづらい。
それに僕は僕で噂や球技大会でのことを聞いた人が興味本位で近付いてくるから、身動きが取れないことも多い。
だから最近も月奈とあまり話せていない。HINEでやり取りすることはあっても、直接言葉を交わせるのは下校の時だけ。それだって月奈の家は逆方向だから校門までしか一緒にいられないし。
その事を知っている島乃井くんにも同情の視線を向けられる。
「山倉くんも大変だね。君自身もだけど、人気者を好きになると距離を縮めるのも難しいよね」
「僕のはどうせ一過性のものだから、そこまで気にしてないんだけどね。というか島乃井くんももしかして…」
「幼馴染みだからね。今さら好きになるなって方が難しいよ。小さい頃からずっと一緒だったし、家も近所だしね」
「お互い、頑張ろう」
「うん、応援してるよ。それで結局どっちなの?」
月奈たちが教室を出たタイミングで島乃井くんは聞いてくる。こんなにも穏やかそうな外見で、中身がかなり悪魔なのは詐欺だと思うんです。
わざわざ隠すこともないので、小声で他の人に聞こえないように伝える。すると島乃井くんは納得といった表情をしていた。
「やっぱりそっちなんだ」
「やっぱり?まさかずっと気づいてたとか…?」
「あはは、そうじゃないよ。ただ、どっちの方がお似合いというか、山倉くんが話しているところを見たら、なんとなくそうかなーって」
「僕ってそんなに分かりやすいかなぁ…」
「露骨とまでは言わないけど、灰崎くんもたぶん気づいてるんじゃないかな」
マジか…。とりあえず哲也は後でシメる。最悪誰かにバレても月奈にさえバレなければ問題ない。
それよりも今気にしなきゃいけないのは、月奈だって美波に劣らず人気があるということ。うかうかしていたら誰かの彼女になってしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌だ。
でも今のままじゃ脈があるかなんて分からない。だからこそ明日のバレンタイン、そこでチョコが貰えるかどうかが大事なんだ。
もしこれで貰えないようなことがあれば………考えたくもない。
今日がバイトのない日でよかった。こんなところ大将やカツ先輩に見られたらいいおもちゃにされてしまう。それに秋華先輩にもあまり見られたくないな。カツ先輩の悪ふざけが飛び火しかねない。
帰宅してからも、正直落ち着かなかった。ふとした瞬間に月奈の顔が思い浮かんでしまうからだ。
気を紛らわそうとゲームをしても全然集中できない。今までこんなことはほとんど無かったのに…。
PCの電源を切って、スマホをボーッと眺める。するとHINEに1件のメッセージが。何も考えず開くと、それは月奈からの連絡だった。
何事かと急いで内容を確認する。
『明日、楽しみにしててね』
それは待ち望んでいた言葉。これはつまり、そういうことでいいんだよね?だったら、わざわざ確かめるような野暮はしない。
これで僕の勘違いだったらものすごく恥ずかしいけど。
真琴は落ち着きを取り戻し、来る明日を心待ちにするのだった。
タイトルを少し簡潔にしました。真琴が陰キャとは思えないほどアグレッシブになったので。




