43.本当の想い
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試合終了後、真琴はすぐに囲まれてしまう。そのルックス、噂の件、哲也が話した完璧ぶり。放っておかれるはずなど、当然ある訳も無かった。
幸い、教師陣も見に来ていたのが幸いして、大きな騒ぎにはならなかった。
しかしこれで注目を集めてしまったのは疑いようのない事実。とうとう真琴に逃げ場は無くなってしまった。
「…ま、諦めろよ。元々注目されてたくせに、さらに目立つようなことをしたお前が悪い」
「僕を本気にさせるように煽った哲也も悪いでしょ。何とかしてよ哲えもん」
「誰が哲えもんだよ!?まあフォローくらいはしてやるけどよ、クラスが違うんだ、あんま期待すんじゃねえぞ」
「もちろん。期待してるよ、哲也」
なんだかんだ言いつつ哲也が優しいのは知っているので、何かあれば手助けしてくれるはずだ。
それはそうと、僕も楽しくなってやりすぎてしまったのは事実。どうせ限界だと思ってたところだし潮時かな。
そんな覚悟を決めつつ、女子の試合を観戦するために哲也と一緒にギャラリーへ上がる。そこで待ってた栗田くんや島乃井くんと合流する。
「はーっはっはぁ!!見たか哲也、俺らの完全勝利だな!!」
「いや陽太なんもしてねぇじゃん。真琴がダンク決めただけだろ?」
「うるせぇ、勝ちは勝ちだ!だよな島乃井!」
「え?うーん…まあ灰崎くんのクラス以外の試合は頑張ってたよね」
「お前見かけによらず口悪いな!?その通りだよチクショー!!」
…なんか似てるねこの二人。そりゃ仲良くもなるよ。ちなみ陽太というのは栗田くんの下の名前だそうだ。
そんなどうでもいい事を考えていると、月奈と美波が手を振っていることに気づく。こっちも手を振り返して、応援していることを伝える。
すると、その様子を見ていた栗田くんから質問が。
「なぁ山倉よ」
「どうしたの?」
「あの二人と仲が良いことは置いとくが、ぶっちゃけどっち狙ってんのよ」
「どっちとかは無いよ。二人はただの友達で、たぶん向こうもそう思ってくれてるだろうから。そんなこと考えるのは二人に失礼だよ」
予想通りしょうもないことを聞いてきた栗田くんにそう答える。そう、二人はただの友達。美波を守るのだって月奈に頼まれたからだし、その月奈を家に泊めたのだって不可抗力だ。
「そうか?俺にゃそうは……」
「黙ってろ陽太。真琴も苦労してんだよ」
「……そうか。哲也、お前も大変だな………」
「二人とも何の話してるの?」
「いやいや、何でもねえよ?それよりほら、試合始まんぞ」
哲也が指差した先では、バレーボールにエントリーした月奈、美波、高槻さんの姿が。美波は脚があれだけ速かったから運動神経もいいだろうし、月奈も体力テストの結果が良かったって高槻さんが言っていた。運動部の高槻さんも言わずもがなだろう。
まあ想像通りというか。全試合完封で余裕の優勝。この時点で僕らの総合優勝は確定したようなものだけど、一応グラウンドでサッカーの試合を観に行く。
どうやら決勝戦をやっているようだったけど、僕たちのクラスは3点ビハインドで後半終盤。そのままホイッスルが鳴り試合終了。だけど準優勝だって立派な成績だ。
ということで最終種目のバドミントンは消化試合。どこかゆるい空気が漂っていたのは少し申し訳ない気もするけど。
「真琴くーん!優勝っ!ぶいっ!」
「お疲れ様、美波。月奈も頑張ってたね」
「ぜぇ、ぜぇ…。どうなってんの二人の体力……。あんだけジャンプして息切れしてないの意味分かんねー…」
「いやいや、るーちゃんだって十分すごいって。私たちの運動量に着いてくるんだから」
「ぜってーもうお前らとバレーやんねー……………」
月奈はぶつくさと文句を垂れているけど、言葉に反して表情は明るい。きっと彼女なりに楽しめたのだろう。僕も結構楽しめたし、これがマラソン大会だったと思うと正直ゾッとするよ。
最後に閉会式とトロフィーの贈呈が行われる。といっても大した物ではなく、外見だけのハリボテである。生徒もそんなことは百も承知だが、大事なのは楽しかったという事実。
高校生にとっては良い思い出になることだろう。
ただ、真琴だけは別の意味で記憶に残る日になった。先ほどの栗田の問い、『どっちを狙っている』、つまりどちらを好いているのか。真琴はそのことを今まで、無意識のうちに考えないようにしていた。
だがそれこそが大きな間違いだったのだ。目を逸らさず向き合うべきだった。彼の不調の原因は、まさにそこにあったのだから。
直接言葉として聞いてしまったことで、直視せざるを得なくなった。彼の中での月奈と美波の存在の大きさ。
そして、より大きな存在。すなわち想い人がどちらなのか。
始まりはあの時、美波を助けたこと。それ自体に大きな意味はない。ただクラスメイトが襲われてたから助けただけ。
それから色々なことがあった。月奈に絡まれたり、美波と同じマンションだったことが発覚したり。
文化祭でも、美波が大人に絡まれてるところを月奈が助けて、でも今度は月奈が危なくなったところを僕が止めた。あの時の月奈の涙は、たぶん一生忘れない。
キャンプファイヤーのダンスも踊って、花火も一緒に見た。綺麗だったなぁ。
クリスマスパーティーもそうだ。あの胡散臭い先輩に絡まれてるところにお邪魔して、少しだけお話ししたっけ。その後月奈の様子がおかしくなって、慰めようと思って一緒にイルミネーションを見に行ったんだよね。結局あの時、サンタクロースへのお願いって何書いたんだろう?
極め付けは年末年始。いきなり月奈が押しかけてきて、3学期が始まるまでの間泊まっていった。その間にも、同じベッドで寝たり、家族の問題に一緒に立ち向かったりした。
そして彼女の色んな表情や新たな一面を知ることもできた。
ああ、そうだよな。こんなにも一緒に居たいって思うのは君だけなんだ。
本当は分かってたんだ。好きでもない女子を絶対守りたいなんて思わないし、ましてや二人きりで泊めるなんて絶対にしない。
僕は生まれて初めて恋をした。太陽の陰に隠れた月に。
その優しい月の光に、僕はどうしようもなく惹かれてしまったんだ。
僕は、月奈が好きだ。




