42.陰キャ男子と球技大会②
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試合が始まって早々に、僕と哲也の1on1。と言っても、僕には細やかな技術も知識もない。そのことを知ってる哲也に簡単に抜かれてしまう。
そのまま華麗なレイアップシュートを決められ、先制されてしまう。
「ドンマイドンマイ!まだ試合は始まったばっかだ、切り替えてこーぜ!」
「うん。でも僕じゃ哲也は止められないよ?」
「心配すんな、ちゃんと考えてあるからよ」
頼りになる笑顔で、栗田くんが敵陣に切り込んでいく。そして僕もそれをサポートするように動く。これがここまでの僕らの必勝パターン。長身を活かしてリバウンドを取りまくれ、と栗田くんがアドバイスしてくれたおかげだ。
だけどこれも万能マンには通用しない。哲也がシュートを止めに行き、他のメンバーで僕たちを抑えに来る。相手の位置取りが上手く、リバウンドを取ろうとしても中に入ることすらできない。
結局シュートは外れ、ボールを相手に奪われてしまった。
「わりぃ、決めらんなかった!」
「気にしないで。それで、哲也を止める方法って?」
「1on1じゃなくて、2on1だ!向こうの得点源は哲也だからな!あいつさえ止めちまえばどうにでもなる!」
その言葉に従って、哲也にボールが渡らないように二人でマークする。その分フリーの人が増えるけど、哲也を自由にさせるよりは遥かにマシだ。
そのまま膠着状態は続き、互いに点数が動かないまま前半が終了。僕らが6点差で負けている展開だ。
「一桁差ならまだまだ逆転できるぞ!ここで優勝して、女子に良いところ見せるぞ!」
「…なんか安心したよ。思ったより不純な動機で」
「いつもは哲也ばっかモテてっからな!今日くらいは俺たちがおいしい思いしたってバチは当たんねえだろ!」
「哲也にぎゃふんと言わせてやりたいのは同感。あいつに吠え面かかせてやろう」
「…山倉、お前なかなかいい性格してんのな」
だってゲーセンでも、『今日も告白されちまったぜ』的な自慢をされるからちょっとムカついてたんだよね。このことみんなにバラしてやろうかな。
こっちのチームは哲也を倒すという一点のみで結束が強固なものになった。それに僕には。
「真琴くーん!哲也くんなんかに負けるなー!」
「おいおい…嫌われすぎじゃないか?俺が何したっていうんだよ」
「うるさい黙れ!てっちゃんには懺悔しなきゃいけないことが山ほどあるんだよー!やっちゃえ真琴くん!」
「もうやだあいつら……」
哲也の心が折れかかっている。いつもなら助けないこともないけど、今日だけは追撃のターンだ。
「哲也」
「真琴…せめてお前だけは」
「叩き潰すから覚悟しといてね」
「……………………俺に味方はいないみたいだな…」
「よく言ったぞ山倉!たまには痛い目見とけよバーカ!」
よってたかって哲也をいじめているのに、誰一人として哲也の味方をしない。あの島乃井くんでさえ苦笑いしながら見つめている。
クラスメイトにも見放された哲也は、一人覚悟を決める。
「上等だ、やってやろうじゃねえか!これで俺一人に負けたら言い訳できねえなぁ!」
「そっちこそ、負けても言い訳しないでね」
その言葉に反応するように後半が始まる。前半で最後にラインを割ったのは僕たちなので、哲也のボールからゲームが動く。
一人で切り込もうとする哲也を、前半と同じように二人で止めようとする。しかしそれを読んでいた哲也が、囲まれる前にディフェンスを突破する。
そのまま華麗なボール捌きでシュートへと持ち込む。もちろんそれを止めることはできない。
「おいおいどうしたそんなもんかよ!本当に勝てんのかぁ?」
「栗田くん」
「おう、どうした」
「僕もシュート撃っていい?」
「それはいいが…。こう言っちゃ悪いけどよ、入るのか?」
確かに僕は球技は苦手だ。普通にシュートを撃ったってまともに入りやしない。
だけどあるじゃないか。バスケには長身を活かす最高に盛り上がるアレが。
「ゴール下でボールちょうだい。絶対決めるからさ」
「…分かった、お前に任せるぞ。俺もそろそろ外から撃ちづらくて困ってたんだ」
「作戦会議は終わったかぁ?知ってんだぜ、真琴の運動神経が良いことくらい。でも球技はてんでダメだってこともな!」
「言ってなよ。最後にトロフィーを持ってるのは僕らだからさ。トロフィーなんて無いけどね」
ボールは栗田くんに任せて、僕は真っ先にゴール下へ。ここまではさっきまでもやってたこと。だから哲也はこっちに意識を向けない。
僕がポイントに入った瞬間振り向いて、栗田くんにパスを要求する。
予想外のパスコースに哲也も反応できず、僕の元にボールが届く。
突然だけど、僕は走り高跳びが得意だ。正確には助走をつけて跳ぶのが、だけど。だからハードル走とかも結構自信がある。
だけどどっちかというよりは高く跳ぶ方が上手い。それをバスケに活かしたらどうなるか。
「ふっ、はあっ!!」
ガシャン!!と大きな音を立ててゴールが揺れる。両手でゴールにぶら下がった僕も、下に何もないことを確認して降りる。
まあ、俗に言うダンクシュートだ。出来る気がしたからやってみたら結構ギリギリでちょっと焦ったけど、決めることができて良かった。
でももっと盛り上がると思ったのに体育館は静まり返っている。美波だけは興奮したように手を叩いていたけど。
やがてコート内から驚愕の声が上がる。
「いやいや…やべえわコイツ…」
「俺より真琴の方がよっぽどだろ!顔良し頭良し性格良しで、さらには運動神経までバケモンだぁ?こんなんガー不からの即死コンじゃねえかこの野郎!」
「だったら哲也は使わなきゃ負けるレベルのTier1キャラでしょ。人のこと言えないって」
「戦ってるだけてるだけマシだ!勝てるかこんなもん!」
その言葉に賛同するように周りもうんうんと頷き、たった一度のプレーで試合が決まってしまった。
結局哲也はやる気を無くし、大差をつけて真琴が勝利したのだった。
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