41.陰キャ男子と球技大会①
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一週間後。球技大会の日がやってきた。練習期間はほとんどなく、ぶっつけ本番に近い状況。
さらにクラス対抗であるため、真琴や仁人も出場しなければ人数が足りない。特に賞品があるということでもないのだが、“大会”と名前に入っているだけでどこか負けられない空気を生み出すのだろう。
本番直前のクラス内でも熱気は高まっていた。
「絶対勝つぞぉー!!」
「「「おーーー!!!」」」
「「おー…」」
「やる気出そうよ二人とも…」
そんな中、真琴と月奈は雰囲気に乗り切れずにいた。これには仁人も苦笑いである。
この一週間で、真琴の交友関係は広がった。仁人と話しているところを月奈と美波に見られ、そこから二人の友人だという女子を紹介された。
「仁の言うとおり。琴くんもるーちゃんも盛り上がらなきゃ損だぞー」
「うるせー!凛は体育会系だからそんなこと言えるんだ!」
「そうだよ高槻さん。僕らは運動が苦手なんだから」
「嘘こけ張っ倒すぞ。あんたら体力テストの成績高かったでしょーが」
そう言って二人を引きずっていくポニーテールの少女、高槻 凛。親しげに仁人をあだ名で呼ぶ彼女は、仁人の幼なじみであるという。
学校ではあまり関わることのないそうだが、それは仁人が一軍女子たちの明るさに気後れしているだけであって、凛としてはもう少し話したいと思っているくらいである。
そんな彼女も球技大会に熱を燃やす1人。メイクやネックレスなど見た目は完全にギャルと言えるものの、爪を切りポニーテールも高い位置でまとめているあたり、月奈の言うとおり体育会系なのだろう。
体育館へ連れてこられた二人は、形だけの開会式に参加してそれぞれのチームに分かれる。
真琴もチームメイトの元へ向かうが、数回話しただけの仲では少々気まずく感じるのも無理はないだろう。
少しだけ躊躇しつつも、自分が出ないことには試合が成り立たないので、勇気を出して話しかけようとする。
しかし、先に口を開いたのはクラスメイトの方だった。
「おっ、山倉に島乃井。今までどこ行ってたんだよ」
「山倉くんたちがサボろうとしてたのを凛ちゃんに引きづられてきたんだよ」
「島乃井くん!?」
「おうコラ山倉ぁ…いい度胸じゃねえか…。ただでさえサッカーに人流れて6人しかいねえってのによぉ…」
「いやっ、僕は目立ちたくな」
「今さらだろ。哲也から聞いてるぜ、面白え奴だから仲良くしてやってくれって」
ぶっきらぼうな口調でそう話すのは、クラスの男子のまとめ役のような立ち位置の栗田くん。哲也とも仲が良いようで、いつの間にか僕のことを話していたようだ。
少し気恥ずかしくなったけど、栗田くんが馴染みやすい空気を作ってくれたおかげで自然に輪に入っていくことができた。
そして球技大会が始まる。僕らのクラスは一試合目なので、早速出番がやってくる。
「頑張ってね、山倉くん」
「島乃井くん!?」
「何やってんだ山倉ー。バスケは5人でやるスポーツだぞー。お前の背が高かったのが運の尽きだー」
「くっ、僕がもう少し小柄だったなら…」
「本当に何やってんだお前」
今だけは父さんの大きな背中が憎い。遺伝は恐ろしい…。
「よっしゃいくぞ!」
気合いを入れる栗田くん。やる気はそんなにないけど、真剣に向き合ってる人もいるんだ。足を引っ張るわけにはいかない。
審判がボールを高く投げて試合が開始する。先にボールを取ったのはこっちのクラス。というか僕がジャンプボールで競り勝った結果だ。
「ナイス山倉!ほいっ!」
「え、上手い。ナイッシュー!」
「やっぱスポーツは主導権握ってこそだろ!先手必勝だぜ!」
ボールを手にして栗田くんは、早速外からのスリーポイントシュート。これが見事に決まり、流れを一気に引き入れる。会場も大盛り上がりだ。
そこからはワンサイドゲーム…とはいかなかったものの、終始主導権を握っていた僕たちが勝利を収めた。
「良い仕事したじゃねえか山倉!」
「仕事した感じ全然ないんだけど…」
「なんつーか…威圧感?ほら、お前背高いじゃん」
「…まあ、役に立てたなら良かったよ」
さっきの試合、僕はほとんど何もしていない。ボールにも数えるほどしか触ってないし、得点に絡んだりしてるわけでもない。でもバスケは長身の方が有利なのはよく聞く話だし、どうあれ力になれたのなら何より。釈然としないけど。
そんなこんなで勝ち進み、気付けば決勝までやってきた。相手はもちろん哲也の率いるクラスだ。
「いやー、やっぱてっちゃんが相手かー」
「哲也は器用だからね。でもここまで来たら負けるつもりはないよ」
「うん、応援してる。その代わり、あとでこっちの応援も来てよね」
「真琴くんがんばれー!」
「二人ともありがとう。じゃあ行ってくるよ」
僕らより後の種目に参加する二人からのエールを受け取って、コートで待っている哲也の前に立つ。
言葉は交わさない。お互いが思ってることなんて分かるからね。
めんどくさいから、さっさと終わらせよう。




