40.陰キャ男子と新たな友人
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色々あった冬季休暇も終わりを告げ、三学期の始業の日がやってきた。
月奈も二日ほど前に家に帰り、少し寂しさを感じていたのも束の間、今度は自らのことを考えなければならなくなった真琴。
真琴はクリスマスパーティーの際、哲也のうっかりミスにより名前が知られてしまった。クラスには同じ名前の人間は居らず、どうしたものかと頭を悩ませていた。
その結果、いつぞやのように教室に人だかりが出来ることとなってしまった。
「あの人が山倉くん?」
「身長たかっ!まつ毛ながっ!」
「マジでイケメンじゃん。今まで知られてなかったのが不思議で仕方ないわ」
他クラスや他学年の女子からは絶賛の嵐。マスクと眼鏡を外しただけだというのに、この有り様である。
そう、真琴は諦めた。どれだけ考えても解決策は思い浮かばず、頼みの綱の月奈と哲也も諦めろの一点張り。
結局、二人の助言どおりになってしまったのだ。
「山倉くん、なんで今まで隠してたの?」
「もったいないよねー!」
「彼女とかいるの!?」
「え、いや、あの」
「はいはいストップー。真琴くん困ってるでしょー?質問するなら1つずつねー」
身近な人以外との関わりに慣れていない真琴は、突然の状況に戸惑ってしまう。
そこに月奈が割って入り、混沌とし始めた教室を落ち着かせていく。
どさくさに紛れて真琴に近付いた哲也は謝罪の言葉を口にする。
「わりぃ、俺があの時注意してれば…」
「気にしなくていいよ。これでコソコソ隠れて会う必要もなくなったしね」
「それもそうだな。んじゃ頑張れよー」
「ちょっと待て。哲也にはこの状況をなんとかする義務があるでしょ?」
「今気にしなくていいって言ったよなぁ!?めちゃくちゃ根に持ってんじゃねーか!」
「それはそれ、これはこれだよ」
去ろうとする哲也の肩を掴み、どうにかしろ、と圧を掛ける真琴。
負い目を感じている哲也は、もちろん断れるはずが無かった。
「疲れた…………」
「お疲れさん。コーラで良かったよな?」
「ありがとう。哲也はこうなること分かってたの?」
「まあな。高校生なんか噂好きばっかだからな。あんだけ広まりゃ、嫌でも気になるだろうよ」
渡されたコーラの缶をあおりながら、さっきのことを思い出す。あの感じ、久しぶりだったけどやっぱり苦手だ。時間が解決してくれるなんて言う人もいるけど、全くそうは思えない。
苦手を克服するのは一筋縄じゃいかないな。
一瞬で飲み干したコーラの空き缶をゴミ箱に投げ入れて、哲也と一緒に教室に戻る。始業式は終わったし、二学期の時はそれで下校だったはずなんだけど、何やらお知らせがあるとかで。
「何だろーな、お知らせって」
「あれじゃない?マラソン大会」
「あー…なんか聞いた覚えあるな…。去年までもずっとマラソン大会やってたんだっけか」
「らしいね。僕も誰かが話してるのが聞こえただけだから、詳しいことは何も知らないけど」
マラソン大会か…。走るのは嫌いじゃないけど、だからと言って好きってわけでもない。健康と体型維持のために必要だから走ってるだけで、走らなくていいなら正直やりたくない。
クラスの違う哲也とは別れ、いつもより人の多い自分のクラスに戻る。危うくまた囲まれそうになったけど、タイミングよくチャイムが鳴ったので回避した。いつもと違う時程のおかげで助かった。
全員が着席したところで担任の先生から話を切り出される。
「あー、突然だがお前たち、毎年この時期に何をやっているかは知っているな?」
「マラソン大会っすよねー。今年もやるんすかー?」
「嫌そうな口調だな。まあ私も面倒だから嫌いだが。喜べ、そのマラソン大会だが、今年から球技大会に変更になることが決まったぞ」
その言葉を聞いた瞬間、教室中がワッと沸き立つ。普段から走っている人はともかく、多くの人は走ることが嫌いだからね。お祭り騒ぎになるのも理解できる。
他の教室でも同じような反応になっているようで、学校全体が揺れたかのような錯覚に陥る。先生が止めるまでその状態は続いていた。
「落ち着けお前ら。肝心の種目なんだが、男子はバスケかサッカー、女子はバレーボールかバドミントンだ。出たい方に出てくれ」
「寒い中サッカーはやりたくないなぁ…」
というのはあくまでも僕の意見。クラス内での雰囲気は半々って感じかな。バスケは5人、サッカーは11人だからどうしても偏ってしまうけど、クラスの男子は20人に満たないくらいだから意外と丁度いいのかもしれない。
「こんな寒いのに外でサッカーは無理だよぉ………」
近くからそんな呟きが聞こえてくる。どうやら僕の前の席に座る彼も、同じ意見の持ち主らしい。
「分かるよ、その気持ち。本当に東京なのか疑うくらいだよね。あ、自己紹介がまだだったよね。僕は――」
「山倉くん、で合ってるよね。僕は島乃井 仁人。さっきは大変だったのに、助けてあげられなくてごめんね」
「そんな。むしろそう思ってくれてるだけで嬉しいよ。島乃井くんもバスケに出るの?」
「そうしようかなって。僕、寒いの苦手だし、サッカーもあんまり得意じゃないんだ。スポーツ全般苦手だけど、まだバスケの方がマシかな」
真琴の前に座る小柄な少年、島乃井 仁人。似たような感性を持った二人は互いに話しやすさを感じ、すぐに意気投合。
こうして真琴に、新たな友人が出来たのだった。




