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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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39.陰キャ男子と初詣

閲覧感謝です

 



 ここまで正月二日間を過ごしてきた真琴と月奈。しかし、今のところ正月らしいことを何ひとつしていないことに気付く。

 そして二人は、何をするかの話し合いをしていた。




「というわけで緊急会議ー。いぇーい」


「緊急さが一切感じられないなぁ」


「じゃあ初詣行きますか」


「会議ってなんだっけ………」




 会議という名の会話のドッジボールはさておき、あれやこれやで今がお正月であることを忘れそうになっていた。月奈が言ってくれなかったら、今年はこのまま冬休みを過ごしていたと思う。


 なんでこんなことになったかというと、会話の中の何気ない一幕が発端だ。


 僕は、月奈から毎年お正月に何をしているか聞かれた。地元だったら近くの神社にお参りに行ってたけど、生憎こっちには近所にそういったものがまるでない。

 まあ行かなきゃ気が済まないとかそういうことでもないし、別にいいかなぁと考えていた。


 ただ、どうやら月奈の家の近所に神社があるらしい。確かに昨日行った時、人通りが多かったような気もする。普段行かない場所だからこんなものかと思っていたけど、そういう理由だったみたいだ。


 というわけで電車で一駅。大勢の参拝客と思わしき人たちと共に下車する。電車を使ったのはすごく寒いから。今朝、この冬で一番の寒さだというニュースをネットで見たけど、本当に尋常じゃなく寒かった。


 神社に到着すると、入り口までずらっと行列ができていた。これは中々かかりそうだね。




「うわ〜…思ったより並んでるぅ〜……」


「お昼前だからそりゃこうなるよ。今日から開くお店も多いから、お出かけついでじゃないかな」


「それもそっか。あたしたちは家に居てもやることないし、どっちにしろ出掛ける予定だったからいいけどね。てかマジで寒っ」


「同感。あ、カイロいる?一個しかないけどあげるよ」


「二人で使えばいいじゃん」



 そう言って月奈はカイロが入った僕の上着のポケットに手を入れる。冷た…柔らか……じゃなくて、そんなことしたら目立っちゃうでしょうが。

 と思ったけど全然だった。そもそもここは学校じゃないんだし、僕たちに注目する人もいないか。


 最近月奈が色々してくるせいで、敏感になりすぎてたのかもしれない。反省だね。



「うーん、あったかいねぇ」


「月奈の手、すごい冷えてる。ごめん、もっと早く気づいてれば…」


「謝ることじゃないっしょ。あたしが手袋忘れてきたのがいけないの。真琴くんが持ってきてくれたおかげで、あたしもあったまれてるんだし」


「…なら良かったよ。それはそうと、なんで僕の手をずっとにぎにぎしてるんだい?」


「触り心地がいいから。手入れ頑張ってるのが伝わってくるわぁ…。すんごいモチモチだもん」



 頑張ってるというか、モデル時代の癖が抜けきらなくて。特に直す必要性も感じないし、量が多いわけでもないから苦になってるわけでもないからね。



「頑張りが分かるくらい、月奈も美容には気を遣ってるんでしょ?」


「まあ、花のJKですから。このくらいは当然ですよ。それに………やっぱなんでもない」


「その言い方は余計気になっちゃうよ?」


「絶対言わないよーだ。ほら、そろそろ順番来るよ。お願いごと決めた?」



 初詣といえばだよね。お願いごとかぁ…正直思いつかないかも。平穏に過ごすはまず無理だろうし、勉強を神様にお願いするのは違うよね。


 一つだけ思いついたけど、ちょっと恥ずかしい。でもお願いごとなんて深く考えても仕方ないか。



「決めたよ。月奈も決まった?」


「とっくに決まってるよ。ほら、あたしたちの番だよ」



 石段を上り、用意しておいた五円玉を投げ入れる。


 二礼、二拍手、一礼。手順どおりにお参りをして、最後に心の中で願いごとを呟く。




(月奈が笑顔でいられますように)




 真琴の願いは、他者の幸福。隣で手を合わせている少女が、その笑顔を絶やさないことであった。

 自らのことを顧みない真琴らしいといえばらしい願いだが、月奈が聞けば、もう少しくらい自分勝手になれ、と怒っているところが容易に想像できる。


 だがそれ以上に、()()()笑顔でいることを願っていることが重要なのだ。


 自らでも美波でもなく、月奈を指定した意味。そこに気付いていないあたり、事あるごとに月奈に呆れられているのも仕方のないことなのだろう。




「何お願いしたの〜?」


「内緒。そういう月奈こそ前もって決めてたみたいだったけど」


「真琴くんが教えてくれないならあたしも教えなーい。あ、おみくじ引く?」


「引く。せっかく来たんだし、引かずには帰れないでしょ」


「わお。ゲーマーの血が騒いでるみたいだね。運も実力の内ってやつ?」


「ゲームに限った話じゃないけど、いくら腕が良くても1%の運に恵まれないやつは淘汰されていくからね。要するに世の中運ゲーってことだよ」


「絶対違うと思うよ…?」



 あれ、結構良いこと言ったつもりだったんだけど。どうやら月奈さんにはあまり刺さらなかったみたいです。


 それは置いておくとして、僕たちはおみくじを引く。ガラガラと箱を振って、出てきた数字のおみくじを受け取る仕組みだ。

 さて、僕の今年の運勢はどうだろう?



「…中吉かぁ。可もなく不可もなくって感じだね。月奈はどうだった?」


「にひっ、大吉〜!よーし、今年はやったるぞー!」


「一体何をやらかす気なんだい?そこはかとなく不安なんだけど」


「なんでやらかす前提なのさ。あたしだってやる時はやるんだからちゃんと見とけよー?」


「大丈夫、しっかり見守ってるから。骨は拾ってあげるから安心して」


「やらかすどころか玉砕確定なの!?あたしにどんなイメージ持ってんの…」




 いつものように上辺だけの言葉で会話する二人。しかし“恋愛”の項目には、二人とも『苦労する』という文言が入っていたことを、互いに口にすることはなかった。




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