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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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34.陰キャ男子と映画鑑賞

閲覧感謝です

 



 突然だけど、僕の家にはテレビがない。暇を潰せるものといえば僕の部屋にあるPCぐらい。普段はそこに入ってるゲームや加入している動画配信のサブスクで映画やアニメを観たりしている。


 なんで元旦からこんな話をしてるかというと、元旦ならでは(?)の困ったことが起きたからだ。




「ねえ月奈」


「どしたん?」


「暇じゃない?」


「むっちゃ暇だけど。SNS見るくらいしかやることないし、普段だったらテレビつけてるからねぇ」


「月奈ってテレビ見るんだ。最近は見ない人も多いって聞いたことあったから意外かも」


「見るって言っても垂れ流しだけどねー。やることないなら外出る?開いてんのはコンビニぐらいだと思うけど」




 そう、ただひたすらに暇なのだ。今までネットサーフィンをしていたけど、それもいい加減飽きてきた。こういう時はバーテンのランクマッチに潜ったりするけど、そうなると月奈が一人で暇を持て余してしまう。

 外出することも考えたけど、今日だけはどこへ行ってもシャッターが降りているので、こうして家に籠る以外出来ることがない。


 でもどうせなら何かしたいよね。




「やめとく。うちにあるのはゲームか動画サブスクくらいだけど、僕が持ってるのはソロゲーばっかりだからなぁ……。映画とかなら観れるんだけど」


「あり。せっかくだし真琴くんが好きなやつ観てみたいかな」


「いやいや、月奈が観たいやつ決めてよ。僕の趣味はちょっと…ね」


「いいじゃーん、そこまで言われたら気になるし」


「本当に大丈夫?僕の再生リストホラーとかスプラッタばっかりだけど」


「前言撤回。ラブコメにしよ」




 …月奈って怖いの苦手なんだな。僕の趣向を聞いた瞬間に手のひら返したよ。僕としても月奈が観たいものを選んで欲しかったから、むしろ言ってくれて助かったよ。


 しかしラブコメか…。アニメでも漫画でもあまり触れてこなかったジャンルだからいい機会かもしれない。


 そうして月奈が選んだのは少し前に話題になっていた、大人気漫画を実写化したものだった。学生と教師の禁断の愛を描いた作品で、確か演技力がすごいって言われてたような気がする。




「真琴くんはこれでいいの?」


「うん。でもなかなかアブノーマルなやつにしたね。こういうのが好きなの?」


「人を異常者呼ばわりするのはやめてくれないかなぁ!?結局こういうのが女性ウケがいいってことなんでしょ。…別にあたしが年上好きとかそういうことでもないからね!」


「分かってるよ、冗談だって。それじゃあ再生するよ」


「ちょっと待って、座るとこないわ。真琴くんの膝の上でもいい?」




 この人はまた平気でそういうこと言う。こっちの気も知らないで。

 堂々巡りだけど、こっちだって分からせないと気が済まない。




「それでもいいよ。ほら、おいで?」


「いや冗談だって。そんな猫撫で声で騙そうたってそうはいかな…………え、本気?」


「僕はどっちでもいいけど。身長差があるから僕は月奈の後ろからでも見えるから」


「………じゃあ、その…失礼します」




 うん、やらかした。ほんのいたずら心だったのに、まさか乗ってくるとは思わなんだ。映画の時間は約一時間半。その間、この体勢を維持しなきゃならないのはかなり良くない。


 そっと僕の上に座る月奈。その身体はまるで羽根のように軽く、昨夜あれだけ食べたそばがどこに消えたのかと疑うほど。


 少しの間モゾモゾしていたが、ちょうどいいポイントを見つけたのか、力を抜いて寄りかかってきた。




「辛くない?大丈夫?」


「それはこっちのセリフ。真琴くんこそ重くない?これでも体型には気を遣ってるんだけど」


「むしろ軽すぎて驚いてるくらいだよ。本当にちゃんとご飯食べてる?」


「だいじょぶだいじょぶ。お腹いっぱいまで食べてるし、その度に運動してるから。女の子はそーゆーとこもちゃんと気にしてんだから」




 そういうものか。いや確かに、姉さんも似たようなことを言っていた気がする。『私はお前と違って太りやすいんだよ!その体質寄越せ!』…って。口調のせいで全然違う気がしてきた。




 それはさておき、準備も整ったので動画の再生ボタンをクリックする。そこからはお互い映画に集中して一言も発さなかった。だって面白いんだよ、この映画。人気が出るのも頷ける。


 ただ問題は、この後に待ち構えているであろうキスシーンだ。ちょっと今は刺激が強すぎるというか、昨日の夜のことを思い出してしまうから正直気まずい。


 月奈もその事に気付いたようで。




「考えてることは同じみたいだね。飛ばそうか」


「や、このまま観よ。この作品はキスシーンが有名なんだから」


「そうなの?まあ、そういうことなら…」




 そして問題のシーンがやってくる。今のところは普通だな………………いや長いな。だいぶ濃密なキスシーンだけど有名になったのってそういうこと?

 一応月奈の表情を覗き込んでみると、案の定口元に手を当ててあわあわしていた。月奈も初めて観たためか、信じられないといったような顔だった。




「…やっぱり飛ばそうか」


「………お願いします」




 ようやく気まずさから抜け出したと思ったら、そこでエンドロールが流れる。これで終わりで良かったのか…?全体的に見れば確かに面白くはあったけど、最後のシーンのインパクトがすごくて内容が飛んでしまいそうだった。


 月奈が僕の膝から降りたので、僕も昼食の準備をしようと椅子から離れる。しかし長時間人を乗せていたせいか、脚に力が入らずバランスを崩してしまう。


 その先には立ち上がって伸びをしている月奈。なんとか躱そうとしたけど間に合わなかった。




「危ない!」


「へっ?…きゃっ!?」




 間の抜けた声と共に、僕が月奈を押し倒してしまう形になった。すぐ離れようとしたが、まだ上手く立ち上がれない。

 せめて謝ろうと月奈の方を見た瞬間、想像以上に顔が近く、先ほどのキスシーンが脳裏によぎってしまう。


 お互い無言のまま見つめ合う。やがて月奈が目を閉じ、何かを待つような顔をしている。ここまでされて分からないほど、僕も馬鹿じゃない。


 僕も姿勢を低くし、そして二人の影は重なり合う。




「ひゃっ!?なになに!?」


「ごめん、痛かったでしょ。お昼の準備してくるからそこでゆっくり休んでて」


「………………そうじゃねえだろぉぉっ!!」




 その日の間、真琴は鋭い眼差しを向けられていたのだった。




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