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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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29/54

29.正ヒロインは押しかける

閲覧感謝です

 



 なぜ自分の家に来ているのか理解できなかった真琴は、モニターの前で呆然と立ち尽くしていた。


 なかなか出てこないことを不思議に思った月奈がインターホンをもう一度押したことで、ようやく我に返る。


 そのまま立たせているのも悪いので、真琴は一旦扉を開けることにした。




「あ、真琴くん。その…来ちゃった?」


「なんで疑問系なのさ。どうしてここに?というかオートロックは?」


「美波に開けてもらった。向こうの親とも知り合いだから、年末の挨拶に行ってきたんだよね。で、真琴くんにはお願いがあるの」


「その荷物が関わってたりする?」


「もち。男子にこんなこと頼むのもあれなんだけど……しばらく泊めてくんない?」


「…………………………はっ?」




 聞き間違いかな。今泊めてくんないって言った?いや言ったな。絶対そうだ。


 …無理じゃない?いくら空き部屋があるって言っても、異性を、しかも同級生を泊めるとか色々アウトだと思うんだけど。

 月奈がその事に気付いてないとは考えにくいんだけど…。




「えっと、月奈。自分が何言ってるか分かってる?」


「分かってなきゃこんなこと言わないっしょ。お願い!もう頼れる人がキミしかいないの!」


「それこそ美波とかは?断られたの?」


「そういう訳じゃないけど、美波これからおばあちゃんのとこ行くって言ってたんだよね。あたしの事情を説明できるほど仲良い子もいないし、残ったのが真琴くんがてっちゃんなんだけど…」


「…そういえば哲也も田舎帰るって言ってた気がする」




 なるほど…確かに僕以外頼れない状況ではある。けど泊めるにしても結構大荷物だし、1日2日じゃなさそうだよね。そんなに長期間泊めるのはさすがに問題がある。

 月奈の保護者の方にも話を通さないといけないし………。




「とりあえず上がって。僕もまだ混乱してるけけど」


「お邪魔しまー………………ミニマリスト?」


「その反応をしたのは月奈で3人目だよ」




 そんなにおかしいのかな。でもそんなにお金はないからテレビは買えないしなぁ。安くておしゃれなインテリア探そうかな。




「ふーん。それで、なんで泊まりに来たかだよね。まあ大した理由でもないんだけど、あたしんち昔から家族仲悪いんだよね」


「そんなさらっと話していいことなの?僕には割と重い話に聞こえるんだけど」


「いいのいいの。うちのお父さん、とにかく自己中でさ、口を開けば外聞がどうたらーって。もううんざりなんだよねー。お姉ちゃんもあたしと離れたくないって言ってたけど、出ていかないとみんな不幸になるって行っちゃったんだよね」


「それは……………難しい問題だね」




 僕は家族仲も悪くないし、むしろ僕が迷惑をかけてきた側だから簡単に気持ちが分かるなんて言えないけど。それでも月奈が辛い思いをしてきたってことは分かる。


 だって、最近の月奈はどんどん暗くなってて、出会った頃の自由奔放ぶりが嘘のようだったから。

 別に責めてる訳じゃない。なんというか…哲也の言葉を借りるなら“らしくなかった”。


 同情だと思われるかもしれないけど、僕には始めから泊めないという選択肢はなかった。大丈夫、僕が少し理性を保てばいいだけだ。




「でも分かった。しばらく泊まっててもいいよ。ちょうど使ってない部屋もあったし、軽く掃除してからになるけど」


「あたしは別に真琴くんと同じところで寝ても良かったんだけどなー?」


「良いわけないでしょ。揶揄うのもその辺にして、荷物置いたら一緒に買い物行くよ。そうだ、何か食べたいものとかある?」


「なんでもいいよ。っていうかあたしは自分で買うよ。さすがにそこまではお世話になれないって」


「どうせ一人分も二人分も変わんないし。そもそも年越しそばの具材を買いに行くだけだったからね」


「真琴くんって結構風情とかそういうの大事にするよねぇ」




 別にそんなんじゃないんだけどね。毎年作ってるから自然と作っちゃうだけなんだ。なぜかうちの家族は揃いも揃って年末年始に怠惰になる傾向がある。たまーにやる気を出したと思ったらこたつに吸い込まれていくし。

 でも年越しそばはみんな喜んで食べるので、僕も毎年やりがいを感じながら作ってきた。今年もそばだけ作りに帰ってきてくれって連絡が来たけど、さすがに帰る気にはならなかったよ。


 という訳で荷物を放り投げた月奈と共に最寄りのスーパーへ。案の定商品はほとんど残ってなかったけど、かき揚げを作るくらいならなんとかなりそうだ。



「月奈ってアレルギー持ってたりする?」


「なんもないよー。苦手な食べ物はゴーヤくらいかな」


「山のように残ってるゴーヤを指差すのはやめなさい。美味しいでしょ、ゴーヤチャンプルーとか」


「無理ッ……!あの独特の苦味というか渋みというかがどうしても……」


「…まあ、好みは人それぞれだからね。僕も年末年始にゴーヤは食べないかなぁ。そばには合いそうだけど」


「入れないでよ?」




 今日はかき揚げの口になってるから買わないけどね。でも意外だな、月奈って好き嫌いとかなさそうなんだけど。今度好物を聞いて振る舞ってあげるのもいいかもしれない。


 それから材料を買ってスーパーを後にする。もう陽も暮れてきたし、年越すまでに完成させなきゃね。





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