27.正ヒロインと願い事
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出かけると言っても、もちろん買い物に行く訳ではない。月奈を元気づけるために、僕に何が出来るのか考えた。
やってきたのは最寄りの駅前。道中に会話はなかったけど、都会の煌びやかな喧騒に、月奈も思わず顔を上げる。
その視線の先にある景色こそが、僕が月奈に見せたかったものだ。
「綺麗でしょ?クリスマス限定のイルミネーションなんだって」
「…すごい………」
「月奈ってさ、意外とロマンチストだよね」
「…キミこそ」
駅前のイルミネーション。バイトの帰りに広告が張ってあったのを見かけて、これだと思って連れてきた。
月奈も目を奪われているようで、連れてきた甲斐があったというもの。
大きなクリスマスツリーがいくつも並んでいて、飾り付けも気合いの入ったものだと感じる。
そして一番大きなツリーには、子どもが書いたと見られるサンタクロースへの願い事が吊るされていた。
「見てよこれ、子どもたちが書いたのかなぁ。おもちゃが欲しいとかサッカーボールが欲しいとか。懐かしいね。僕も昔書いたなあ」
「…なに書いたの?」
「確か…一万円欲しいって書いた気がする。思い返してみるととんでもないクソガキじゃん…」
「…ぷっ…あはは…!」
「……やっと笑ってくれた。やっぱり月奈は笑ってる時が一番可愛いよ」
「はえっ!?いやあたしなんか全然だしどうしてキミはそんな歯の浮くようなセリフを平然と言えるのかなあ!?」
あーもう、恥ずかしい…!つい早口になっちゃったし、ここにはあたしたち以外にも人がたくさんいるのに…!
…さっきまで沈んでた気持ちが嘘のよう。やっぱりキミに助けられてばかりだよ。
美波にとっては王子様かもしれないけど、あたしにとっては魔法使いだよ。人を笑顔にさせる魔法が使えるんだもん。
でも、そっかぁ……可愛いって言ってくれた…。えへへ…めっちゃ嬉しいんですけど。どうしよ、あたしの顔絶対ゆるゆるになってる。ゆるゆるどころか変な顔になってるかも。
……って、ダメなんだって。美波のためになるべく関わらないって決めたのに。
…やっぱ無理だよ。抑えきれない。美波には恋愛マスターだなんて言ったけど、あたしだってこれが初恋なんだから。
あたしは真琴くんのことが好き。
この気持ちは誰にも負けない。負けたくない。
真琴くんが女子を苦手なのは分かってる。それなのにあたしと一緒に居てくれるってことは、脈無しじゃない、はず。
「月奈?やっぱりまだ調子悪い?」
「へっ!?あ、いや、もうだいじょぶ。そうだ、あの願い事、書いていってもいい?」
「良いけど…何書くの?欲しいものとか?」
「へへ、なーいしょ」
真琴くんに見られたらおしまいだなぁ。ま、名前書かなきゃいっか。
これは願い事っていうより、あたしの覚悟を形にしたかっただけ。こうすれば、あたしももう後に引けなくなるからね。
未来のあたし、逃げんなよ。
その紙には、クリスマスの趣旨とは少し違う、されども明確に欲しているものが書かれていた。
『キミの恋人の枠をあたしにください』
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真琴は月奈と別れ、しっかり覚えていた買い物に向かう。その後ろ姿を見つめている者がいた。
真琴もよく知る人物、アルバイト先の先輩の蒼井 秋華であった。
「真琴くん、彼女いたのね…」
分かってた。彼女なんて居ないって言ってたけど、君のような人が放っておかれる訳がないもの。…受験前に、あまり見たくないものを見てしまったわね。
今日も予備校帰りで、バイトにもしばらく行けないと伝えてあるから、その分真琴くんにも会っていなかった。
まさかその間に?受験が終わったら告白しようと思っていたのに、先を越されてしまったのね。
これでやっと受験に集中出来るわ。
そう思った時にはもう、彼に声をかけてしまっていた。
「あれ、秋華先輩じゃないですか。奇遇ですね。今日も予備校に?」
「え、ええ。もう受験間近だし、クリスマスで浮かれている人たちが羨ましいわ。君もその1人なのでしょう?」
「え、違いますよ。僕は友人が落ち込んでいたので、励まそうとイルミネーションを見に来たんです」
「……友人?彼女ではなくて?」
「だから違いますって。何度も言ってるじゃないですか、僕に彼女なんかいないって。カツ先輩もいい加減しつこいですし、秋華先輩はカツ先輩とは違いますよね?」
なんだ、彼女じゃなかったのね…。それなら私にもまだチャンスがあるってことかしら。
でも、受験を疎かにする訳にはいかないわ。その時まで真琴くんは待って…いえ、フリーで居られるのかしら。
これで駄目なら、私の運命の人は君ではなかったと思うしか無いわね。
「当たり前よ。でもクリスマスに女の子と二人きりでイルミネーションなんて、勘違いされても仕方ないわよね?」
「そういうものですかね。僕、恋愛ドラマとか恋愛映画とか見ないので、そっち方面には疎いんですよね」
「なら受験が終わったら、私とデートしない?女性の扱い方をみっちり教えてあげるわ」
「えっ、なんか怖い」
そうおどけてみせる真琴に、秋華も思わず笑みがこぼれるのだった。




