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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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25.陰キャ男子と鍍金の先輩

閲覧感謝です

 



 クリスマスパーティー当日。学校に行く直前、真琴は昨日の月奈との会話を思い返し、本当にあれでよかったのかと考える。




 去り際の彼女の表情、怒ってはいなかった…と思う。最初は怒らせてしまったかなと焦ったけど、そうは見えなかった。

 実際はどうか分からないし、僕の感覚の話でしかない。後で会ったら謝ろう。




「そろそろ行かなきゃ」




 髪を整え、顔の輪郭を誤魔化せるくらいのメイクをする。コンタクトレンズを着けて、ピアス…はさすがに目立ちすぎるからやめよう。

 いつもはしっかり着ている制服も、今日は哲也と遊ぶ時と同じように崩す。やっぱりネクタイが緩いと楽だね。


 なんて、誰も居ないのにちょっと強がってみたり。実は昨日から緊張しっぱなしだ。月奈とのこともそうだけど、今回は文化祭の時と違って短時間しか会話できない訳じゃない。パーティー自体も長くはないけど、文化祭と比べれば会話に自由度は増すし、踏み入った話もするかもしれない。


 もしそうなったらボロを出さないように気をつけなきゃいけないし、先輩との関わりがなさすぎたせいでどんな人が居るのかも全然知らないんだ。そのあたりがとても不安だ。


 いや、あくまでも僕の主目的は二人を守ること。というかそう思わないと緊張でどうにかなりそう。




「まずい、遅刻して目立つのは勘弁だ。しょうもない奴が来たと思われる」




 時計を見たらもう家を出なきゃいけない時間だった。そろそろ行こうって思ってから結構経っちゃったし、ギリギリになるって二人に連絡しとかないと。










 その頃、先に会場に着いていた月奈は、美波と談笑しては近寄ってくる男子生徒から逃げる、というのを繰り返していた。




「はぁ〜……もうさっきからなんなの?マジでおかしくなりそう…」


「月奈、どうしたの?さっきからずっと動いてる気がするんだけど」


「真琴くんが来るのが楽しみでソワソワしてるだけだって」


「ほんと?月奈ってそんな性格だったっけ」


「なんでもいいでしょ。で、なんの話だったっけ―――」




 もうやだ。会場に着いてからこんなんばっか。みんな美波目当てなのは分かりきってるし、この子は純粋だからすぐに騙されそうでほっとけない。

 てかこいつらもケダモノだよ。美波の胸ばっか見てるし。けっ、あたしはどーせまな板ですよーだ。


 着くのギリギリになりそうって連絡はあったけど…………あーあ、早く真琴くん来てくれないかなー………。




 月奈がそう思った次の瞬間、入り口の方が騒がしくなる。真琴が来たのかと月奈は期待するも、そうではなかった。




「皆、今日はよろしくね」


「キャー!八乙女(やおとめ)先輩かっこいいー!」


「モデルもやってるんだって!あっ、今こっち向いた!サインとかもらえないかな……」




 月奈は思った。なんだコイツは、と。それも仕方ないだろう。彼女の友人の方が、よほど凄いモデルだったのだから。


 月奈の思った通り、真琴と八乙女と呼ばれた男とは隔絶した差がある。八乙女は時々雑誌の端の方に掲載されるくらいだが、真琴…もといKuRaMならば、彼だけで雑誌の表紙から丸々一冊を作ったとしても発売前重版が確定するほど。

 なお、これは彼のモデル時代に、編集者の悪ふざけで雑誌をKuRaMの写真集化してしまったという、実際に起きた出来事である。その編集者は後に編集長まで上り詰めるのだが、それはまた別のお話。


 そんな可哀想な八乙女は、真っ直ぐに月奈と美波に向かって歩いてくる。月奈は逃げようとしたが、この状況で逃げるのは色々まずいと感じ、美波を守るような立ち位置で八乙女と対峙する。




「やあ、こんにちは。神木 美波ちゃんに…柳沢 月奈ちゃん、だったよね。俺は八乙女 (こうき)。どうかな、せっかくのクリスマスパーティーだし、俺と少しお話でもしないかい?」


「間に合ってますから。ほら、行くよ美波」


「そう言わずにさ。ほら、みんなでこっそり抜け出して楽しいことでも………」




 そう言って月奈と美波に向かって手を伸ばす八乙女。周りからぞろぞろと観衆も集まってきて逃げるに逃げれない状況。彼女たちの味方が居ないわけではなかったが、上級生の圧力に全員腰が引けてしまっていた。


 ただ一人を除いては。




「何やってるんですか先輩、僕も混ぜてくださいよ」


「…………あ?誰だオマエ」


「名乗るほどの者じゃありませんけど……強いて言うなら彼女たちのナイト、ってところですかね」


「…ぷっ、クク。アッハハハ!よくそんな恥ずかしいセリフ言えるなぁ!おいお前、名前教えろよ」


「え、嫌ですけど。あとそろそろその手、引っ込めてくれません?少しばかり力加減が苦手なものでして、もしかしたら腕が折れてしまうかもしれませんが、先に手を出したのはそっちなので文句は言わないでくださいね?」




 二人のピンチに現れたのは、優男風の青年。見慣れないその姿と傍若無人な言動に周りの生徒たちは困惑するが、彼をよく知り、信じていた者の目からは自然と涙が溢れ出していた。




「……もうっ…おそいよ…………!」


「お待たせ、お姫様。哲也、二人は任せたよ」


「お前、人使い荒すぎんだろ……………5クレで許してやる」


「だから多いんだって。…………じゃあ先輩、このまま折ら…折れてしまうのを待つか、彼女たちに二度と手を出さないと誓うか、二つに一つですよ?」


「そっちこそ、暴力沙汰になったらまずいんじゃないのかい?これでも僕はある程度メディアには顔が利くんだ。この程度の事件どうとでも…」




 八乙女の力などたかが知れているため、勿論そんなこと出来はしない。真琴もそのことには気付いているが、敢えて指摘する必要もないので、力を緩めず八乙女の腕を握り続ける。


 一切怯まない真琴に、八乙女はかなり焦っていた。皆の前で真琴を煽り、名乗れと言ったことも拒否され、既に彼の面子は丸潰れである。


 そしてここで引いてしまえば、“後輩に手を出そうとした挙げ句、返り討ちに遭った恥ずかしい奴”だと思われるだろう。

 当然引く訳にはいかないのだが、このままでは本当に折られかねない。それくらい真琴の目は据わっており、八乙女に恐怖を与えるには十分であった。




「女の子泣かせといてそれは無いでしょう。ギリギリで止めるつもりでしたけど、反省の色が見えないようなのでこのままポキっといかせてもらいますね」


「ま、待ってくれ!…いくらだ、いくら欲しい?」


「……呆れました。この期に及んで金で解決しようとは。たかだか腕一本のためにいくらまで出せるのか気になりますが、こちらも友人が怖い思いをしているので。徹底的にやらせてもらいますね」


「ヒィッ!?!?」


「あなたは間違えたんですよ。二度と彼女たちに近付かないって、その一言で腕が犠牲にならなかったというのに。……腕だけで済んだらいいですね」




 真琴がそう言うと、八乙女の心は完全に折れたのか、一目散に逃げ出していった。


 真琴は周りの生徒に向かって一つだけ忠告をする。




「皆さんも気をつけてくださいね?」




 その魔性の笑みに、周りの生徒は頷くほかなかった。




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