23.陰キャ男子と謎の不調
閲覧感謝です
12月中旬。生徒たちがあれだけ頭の中を支配されていたテストも終わり、後は返却を待つだけ。クラスメイトもどこかそわそわしているようだ。
かく言う僕もその一人……のはずなんだけど、僕よりもそわそわしている人がいるのであまり緊張していない。
もちろんその人は。
「大丈夫かなぁ!?大丈夫かなぁ!?」
「だいじょーぶだって。いい加減落ち着きなよ」
「だよね!?私頑張ったもん!それに……」
「それに?」
「…やっぱりなんでもない!あー、緊張するー!」
その言葉とともに月奈がこちらに一瞬視線を向ける。今の話、僕は関係なかったと思うけど。まさか、ちゃんと教えたのか疑われてるとか?いや、それは無いか。だったら昨日電話かけてこないよね。
そう考えていると、教室に担任の先生が入ってきて着席を促す。その手に持っているものから、大多数の生徒が全てを察した。
「よーしお前ら、テスト返すぞー。教科ごとに出席番号順で取りに来てくれー」
「真琴くん、自信の程は?」
「まあまあ。そういう月奈こそどうなのさ」
「キミよりは確実に低いかな。初めて自分の勉強に集中できたし、前回より点数上がってるかも?」
「どうだろうね。少なくとも僕は美波に教えたことで、自分の復習にもなったよ」
「そういうもんかねぇ」
ガヤガヤと教室が騒がしくなってきたところで順番がきたので、僕たちはそこで会話を打ち切ってテストを受け取りに行く。
この学校は絶対評価制を採用しているので、赤点のラインが変わることはない。しかしそれは教科担任の裁量次第なので、結局誰が赤点で誰がそうじゃないのかは、発表されるまで分からない。
さっきから美波が妙に静かなのはそのせいだろう。
そしてついに、運命の瞬間が訪れる。
「あと今回の赤点補習者だが―――該当者無しだ!特に神木、先生方が頑張ったなってお前のこと褒めてたぞー?」
「い…やったあぁぁぁぁぁ!!!!やったよ月奈、真琴くん!!」
「はいはい、お疲れさま」
「よかったね、クリスマスパーティーに出られそうで」
「うんっ!!!」
テストを乗り越えた美波の表情は、それはそれは満面の笑みだった。月奈もなんだかんだと言っていたけど、優しい目で美波の頭を撫でているし、内心結構嬉しいんじゃないかな。
僕もこれでひと安心だ。自分でも気付かなかったけど、意外と僕も緊張していたみたい。ちなみに僕の順位は6位だった。無事に一桁を維持できてよかったよ。
今日の学校はこれで終わりだ。美波の赤点回避も見届けたし、哲也とゲーセンに行く約束をしてるからさっさと帰ろうかな。
そう思っていたところに思わぬお誘いが。
「真琴くん!真琴くんも一緒にクリスマスパーティー行こうよ!」
「……誘う相手、僕で合ってる?」
「もちろん!色んなゲームをやったり、美味しいケーキも出るんだって!クリスマスの日に学校でやるから、予定がなかったらどうかなって!」
「ちなみにあたしも行くけど、上級生から言い寄られるかもしれないし、ボディガードが欲しいなーって」
「考えておくよ。それじゃ、またね二人とも」
「ばいばーい!」
大きく手を振る美波と、小さく手を振る月奈。………たぶん僕は、月奈の言葉が無かったら考えるまでもなく断っていたと思う。考えるそぶりはするだろうけど、バイトがあるとか理由を付けてこの場から逃げ出していたはずだ。
なんで考えておく、なんて言っちゃったんだろう。美波と月奈を守るため?それとも………。
「………ゲーセン行こう」
その言葉の続きは、考えない方が良いような気がした。
ゲームセンターに着くなり、待ってたんだぞ、と哲也に促されてすぐに対面の台に座る。
やっぱり家でやるのとは違うね。ボタンとレバーの感覚が最高だ。
そして数試合対戦した後、反対側の台から不満を含んだ声音で話しかけられる。
「おい真琴、お前今日全然集中してねえな。コンボミスが多いし、いつもより択も雑だ。テストでなんかあったか?」
「いや、そういう訳じゃないけど……」
「じゃあなんだってんだよ。隠し事はいつものことだけどよ、俺にまで煮え切らない返事をするのはらしくねーぞ」
「ごめん……」
「謝んなよ、俺らダチだろ?それで、何があったのか教えてくれよ」
何があったか…っていうと説明するのは難しい。なぜなら、僕にも不調の原因は分からないからだ。いつも通りプレイしているはずなのになぜか集中できない。
そのことを哲也に伝えるも、返ってきた答えにさらに頭を悩ませる。
「あー…そりゃあなんつーか………頑張れよ」
「え、どういうこと?全然何言ってるか分かんないんだけど?」
「よーし今日は真琴を好き放題カモれる日だな!」
「頼むから話を聞いてくれないかなぁ!?」
結局、真琴は最後まで勝つことはなかったとか。




