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クラスの一軍女子を助けた。隣の君に恋をした。  作者: 山田 太郎丸


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18.陰キャ男子と想定外

閲覧感謝です

 



 文化祭2日目。前日とやる事は大きく変わらず、変わったことといえば真琴と月奈の距離感くらいのもの。

 全員が気付いているわけではなく、うっすらと勘づいているような者が数人、前夜のキャンプファイヤーで共に踊っていた姿を見た者が数人というほどだ。


 だがそれを知らない者の方が当然多い。そのため、クラスメイトでさえ話したことのない真琴に興味が移るのは仕方なかった。




「ねえ、山倉くんって本当にあの山倉くん?マスクとメガネの?」


「そうだよ。僕もクラスの空気を悪くしたいわけじゃないから、気は進まないけど仕方なく、ね」


「そっちの方がカッコいいじゃん!なんでいつもは隠してるの?」


「目立ちたくないからかな。人から注目されるのが得意じゃなくて。ほら、ピアスとか身長とかでどうしても視線が向いちゃうと思うから」


「ウチの高校だったらそのくらい普通だよー。もっと出していけばいいのに」


「あはは………………」



 助けて月奈……と言いたいところだけど、生憎と今は野暮用とのことで教室にはいない。昨日、月奈と踊ったことについて聞いてきた人はいないけど、確実に見られてるだろうから聞かれるのも時間の問題だと思う。


 ちなみに今は休憩時間なんだけど、昨日一通り見て回ったからやる事がなくなってしまった。なのでクラスのみんなからこうして質問責めに遭っている、という訳だ。


 昨日は呆気に取られていたのか、単に信じられなかっただけなのかは分からないけど、今日は気にせず話しかけてくれる。

 それが嬉しい反面、手のひらの返しように少し戸惑っていたりもする。そういう人たちは気まずそうに目を逸らしているから分かりやすいけど。


 ひとつ安心したのは、先生が各階を巡回するようになったことかな。昨日の一件は校長先生の耳にも入ったみたいで、再発を防止するために手の空いている先生をこっちに回してくれたそうだ。

 特にうちのクラスの周りは重点的に見てくれているそうなので、さっきからちらほら先生の姿が見えていたりする。


 この分なら僕がシフトを増やす必要もないかな、と思った矢先にこの状況だ。質問責めに遭うのが分かっていたならもっと表に出ているべきだったかもしれない。それはそれで女性たちの相手をしなければならないので、どちらも大きく変わらないかもしれないけど。


 と、女子たちの質問に答えていれば、いつの間にかシフト交代の時間。軽く襟を正してから再びお客さんの元へ向かう。




「お帰りなさいませ、お嬢さ…」


「よっ、来てやったわよ真琴」


「お帰りくださいませ、お嬢様」


「やかましいわ。にしても、中々サマになってるじゃなーい。その服も懐かしいわねぇ〜、えっと確か…」


「分かったからそれ以上余計なことを喋らないでくれる?そういうとこ本当に変わらないね、()()()


「……へぇ。弟のくせに姉に口答えたぁ、いい度胸じゃない。で、月奈ちゃんはどこにいるの?さっきからこの子が煩くて」




 僕が休憩を終えた、この完璧なタイミングで来るとは思ってなかった。物珍しそうに教室を見回すこの女性が、僕の姉である山倉 奏音(かのん)だ。僕の三つ年上で、今年から東京の大学に通う現役の大学一年生。


 そして隣にいる女性が月奈のお姉さんなのだろう。ずっとキョロキョロしているが、今は休憩中で教室にはいないのでその事を伝えなくちゃ。



「月奈ちゃん、いないわねぇ。もしかして休憩中なのかしら」


「そうですね、もうじき戻ってくるとは思いますが………」


「ん〜!おいしい〜!」


「ちょっと美波、衣装にこぼさないでよ〜?あっ真琴くん、ただい………げっ、お姉ちゃん…」


「る〜な〜ちゃーん!そのジャージにミニスカ、ダウナーメイドさんね!?すっごい似合ってるわ、うちで雇いたいくらい!」


「ちょっ、こっち来んな!なんか怖いから息をハァハァさせながら近づかないでってば!」



 後で聞いたんだけど、お姉さんの名前は陽奈(ひな)さんというそうだ。月奈の事を溺愛していて、行事の度にこうしてやってくるらしい。なるほど、月奈がメイドをやりたがらなかったのは陽奈さんが原因だったのか………。


 陽奈さんはスマホを構えて、月奈の写真を撮るのに夢中になっている。これにはさすがの神木さんも若干引いている様子で、姉さんも『やれやれ』って感じの表情をしている。

 まあ…神木さんの気持ちも分かる。引くレベルっていうか、ちょっと怖いくらいだからね。ほら、お客さんの視線もこっちに集中しちゃってるし……。


 これ以上の撮影は止めないと。他の人も撮っていいのか、と思ってしまうからね。



「あの…それ以上の写真撮影はお控えいただけると…」


「あ?あんた誰?私の月奈ちゃんに何か用?」


「やめてお姉ちゃん。ここ、一応撮影禁止だから。それ以上やるなら学校側に突き出す」


「はっ、ご、ごめんね月奈ちゃん!?ルールを破るつもりはなかったの!ただ、月奈ちゃんが可愛くてつい……」



 陽奈さんも月奈と同じように中々の美人なんだけど、そんな人が妹に土下座しているのを見ると少しばかりシュールだ。こういうのを残念美人と言うのかな。



「つい、で許されるとでも?あと真琴くんに暴言吐いたこと謝って。じゃないとあたし、二度と口利かないから」


()()()()?男の子はあだ名で呼ぶ月奈ちゃんが名前呼び…?あんた、月奈ちゃんの何なのよ!」


「へぇ〜、そういう事言っちゃうんだぁ。お姉ちゃんはあたしと口利けなくなってもいいってことね。よ〜く分かったよ」


「あ、陽奈、ついでにそいつが私の弟ね。真琴っていうんだけど」


「ギャー!ごめんなさい真琴様!どうしたら許してもらえますか!?靴でも舐めれば宜しいでしょうか!?」


「やらなくていいです!月奈が嫌がってることだけやめていただければ…」



 陽奈さんは神でも崇めるかのような目でこちらを見つめてくる。なんというか、月奈とは正反対の人だ。


 月奈は嫌がっていたけど、あくまでもお客さんなので席へと案内する。

 こっそりスマホを構えて盗撮しようとしていたけど、それは姉さんに止められていた。全然反省してないなこの人。


 結局、月奈は二人が席を立つまでスタッフルームから出てこなかった。




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