とめと虎之助
敏姫が帰った後に続いたのはとめと虎之助だった。
虎之助はとめの背後にずっと隠れていたが……
壬生屯所の近藤の部屋にてーー
「お邪魔するよー」
敏姫とは違う、明るくよく通る声が響いた。
「おとめさん!もう体調は良くなったんですかい!」
永倉が声で気付いたようで、襖を慌てて開ける。
そこには全快したとめと、とめの後ろで小さくなっている虎之助の姿があった。
「はっはっは!あの程度の酒で潰れてたまるかっての!」
とめの高い笑い声が屯所に響き渡る。
沖田は何故か気配を消し、息を潜めた。
「沖田、姫様から聞いたかい?」
気配を感じられないので、とめは近藤の部屋の周りを探すようにして口を開いた。
「今日は珍しく千客万来だな。しかもカタギの女子とは。どうぞどうぞ、むさ苦しいところですが」
近藤だけが的外れなことを言いながらとめと虎之助を部屋に案内する。
「言いたいことを言ったらすぐに帰りますよ」
とめはそう言って、用意された座布団に座る。
すでに出来上がった永倉がスッと茶を差し出す。
永倉にしては気がきくじゃないかととめは思ったが……
「これは酒じゃないか!悪いけど今日は飲みに来たんじゃないよ」
「えー、つまらん……」
「新八、いくら姐さんが強いと言っても病み上がりだぞ」
斉藤が永倉の暴走を止める。
「ゴホン、今日は沖田に礼と詫びをしに来たんだ。沖田、もう姫様から聞いただろうけどあの時咄嗟に殺気を逸らしてくれてありがとう」
鍛えている剣客の殺気をまともに浴びて、一般人が正気でいられるわけがない。
「おかしなことを言ったのはこっちだってのに。ほら、虎之助!」
とめの後ろに隠れるように座っていた虎之助が頭を畳に擦り付けて土下座した。
「おおおお沖田さん!!あの時は失礼なことを言ってしまい、申し訳ありませんでした!!」
しばらく静まり返る部屋。
流石の永倉も黙り、土方が腕を組んで沖田のいる方を見つめ、斉藤は元から黙っている。
近藤だけが何一つわからない顔をしていたが……
「総司、お前ひょっとしてこのお方に向けたのか?……殺気を?」
怒りか、はたまた他の感情からか、近藤の手がぶるぶると震えている。
「馬鹿モン!!女子に殺気を向けるとは何事か!!新撰組の風上にも置けぬ奴だ!」
先程まで沖田のことを褒めちぎっていたその口で今度は罵倒をし始めた。
近藤局長結構好きです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。




