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もう一度、あなたと。  作者: 杉野仁美
第十章 酒と祭りと不穏な影

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私と友達でいて下さい

夜の壬生の屯所で、近藤は沖田に詰め寄っていた。

沖田は顔を背けて黙っていたがーー

「総司、言ってみろ。何故黒谷でそんなことをしたんだ?」


「……抜刀はしていませんよ……」


「それは知ってる。歳三たちが止めたと言ってたからな」


 夜ーーここは壬生屯所の一室。新撰組局長近藤勇の部屋にて。


 沖田はむっつりとして固く口を結び、近藤から顔を背け、決して話そうとしなかった。


 そこへーー


「あ、あんたは……」


 部屋の外に出ていた土方の驚く声が聞こえて。


 しばらくの沈黙があった。


「なんだ?歳三」


「……近藤さん、お客人です」


「客ゥ?こんな夜に誰だ?」


 土方の言葉に身構える近藤。こんな時間に来る客人とは一体……


「主君松平容保公の御正室、敏姫様です」


「……ッ!!」


 部屋にいた沖田が明らかに動揺する。


「なっ、なななななにぃ!?」


 近藤もさらに動揺する。


「お一人ではないです。熊二人が護衛です」


「熊……二人……??」


 近藤が首を捻った。


 近藤は黒谷では斉藤、永倉が熊と呼ばれているのを知らなかった。


「敏姫です。いくらか話を聞いてもらいたいと思い、勝手ながら来させて頂きました」


 襖越しに聞こえる透明感のある声。めちゃくちゃ可愛い!いや、そんな場合ではない。


「敏姫様!ここは散らかってるんで、すぐに別の部屋をーー」


「その必要はありません」


 今度は力強い声ではっきりと。


「私が松平容保の正室である限り、どこにいても敏姫は敏姫です」


 そのひと言で、空気が変わる。


 これが会津藩主の御正室の言葉……


 ゴクリ、と誰かが喉を鳴らす音だけが場に響き。


 しばらく静寂が続いた。


「……沖田さん、そこにいますね」


「……ッ!!」


 その言葉に、沖田は思わず身を隠そうとする。


「そのままで聞いてください。皆さんも」


 永倉が姿勢を正し、斉藤も固唾を飲んだ。土方も着物の襟を正した。


「とめに聞きました。あの時、無意識に沖田さんは殺気を逸らしてくれたとーー」


「……は?総司お前ェ……」


 永倉が思わず声を漏らす。


「……そこでお願いがあります」


 敏姫は少しだけ息を整えたあと。


「私は沖田さんを信じています。どうか、敏の友のままでいてくださいませ」


 襖越しでは見えないが、敏姫が頭を下げている。

 近藤も思わず頭を下げた。


「……ッ……」


 また孤独に戻らないで。

 ここにいて。

 あなたが安心できる居場所を。


 いつでも用意しています。


 それは容保様(殿)も同じです。


「……以上です。聞いてくれてありがとうございました」


「必ず……必ず総司に伝えておきます!!」


 沖田がここにいるのは敏姫にはわかっているのに。


「ふふ、お願いしますね」


 まるで沖田の保護者のように近藤は頭を下げ続けた。

今まで守られてばっかりだった敏姫様が、容保公の正室として立ち振る舞うシーンが書けてよかったです。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

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